14 選択
『人為的に変異種・特異種を発生・量産させる手順』
ゼルキシモさんの研究成果は、最悪のめちゃヤバ案件でしたよ。
普通の魔物をアレしてコレして意図的に突然変異させる手段が、ご丁寧な図解入りで微に入り細に入り。
そりゃあフェリシルスさんも真っ青ですわ。
確かに今の研究テーマに沿ってはいるけど、
こんなのちょっとでも漏れたら世界がヤバいっての。
イチバンヤバいのは、簡単に量産出来ちゃうってとこ。
ほら、みんなご存知"スタンピード"みたいな大惨事もサクッとヤレちゃうってことだよね、コレって。
「これほどの重要な研究成果を破棄したいと願う私は、研究者失格なのでしょうか……」
えーと、人として間違っていないフェリシルスさんは、素敵だと思いますよ。
それに、将来コレを元にして、逆に魔物被害を減らせる可能性があるのなら、
無理して今すぐ廃棄しなくても、利用できそうなタイミングが来るまで秘匿してもいいんじゃないですかね。
「イイこと言ってる感と、しっかり口説いてる感の絶妙なバランス」
「流石はアマツ家の家長」
「ということで私は、"秘匿"に賛成」
ありがとね、イオちゃん。
俺のこと心底分かってくれてるところは、さすが俺の嫁。
「元ギルド職員としては、然るべきところで管理すべきかと思います」
「でも、アマツさんの妻としての私は、"秘匿"に賛成です」
ありがとうございます、ナナさん。
ナナさんの夫として、めっちゃ誇らしいです。
「これほどの重要案件を握りつぶすのは、明らかに監視員失格」
「"秘匿"には賛成するけど、責任とってよね、一家のあるじ」
ありがと、メリシェラちゃん。
お仕事クビになったら、うちに永久就職しに来てね。
「……ありがとうございます」
「皆さんに選択を委ねるなんて、やはり研究者失格ですね、私」
「研究所を放り出されたら、その時はよろしくお願いしますね」
おっと、棚からぼたもちどころかウェディングケーキがっ。
「本気にするからそれくらいにしておくべき」
「そもそもフェリシルスさんはフォリスさんにほの字」
「流石の凄腕ルート開拓者アマツさんでも、今からの割り込みは無粋」
マジッすかっ、イオちゃん、
ってか、フェリシルスさんって、フォリスさんの恋人さんだったのね。
「あら、アマツさんも?」
いえいえ、俺は恋人さんじゃなくて、ただの友人キャラですよ。
あー、袖擦り合う前に終わっちゃったよ。
後ですりすり慰めてね、嫁さんたち。




