10 来客
ふぃー、疲れたっと。
最近、鍛えるために朝イチで木刀なんか振ってるんですよ。
早朝鍛錬ってヤツですかね。
似合わないってのは分かってるけど、ヨワヨワなりにヤルことヤッとこうかなって。
たまにイオちゃんに俺のステータスを確認してもらうと、
それなりに鍛えている成果も出てるらしくて。
まあ、この先もこんなペースでやらせてもらいますよ。
「……」
イヤン、見られたっ、
って、ここ俺んちの庭だし、ハアハアしてるのは鍛錬だし、
やましいところは何も無し、と。
「すみません、お忙しいところを」
いえいえ、お見苦しいところを。
「私、フェリシルスという者ですが、こちらはゼルキシモさんという学者さんのお住まいでは」
いえ、アマツという冒険者の家ですよ。
ってか、俺んちです。
「お引越しされたのかしら」
「失礼ですが、ゼルキシモさんの転居先とかご存知では」
いえ、皆目。
おっと、そうだった、
もしかして前にここに住んでたお爺さんのことかも。
先日亡くなられたそうですが。
「まあ……」
えーと、よろしかったら、中でお話しでも。
速攻で汗を流してきて、
ナナさんがお相手してくれてたフェリシルスさんに、
詳しいお話しを聞くことに。
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アルセリア王立総合自然環境研究所ってとこで研究員しているフェリシルスさん。
最近の研究テーマは、"変異種・特異種の成り立ち"
この世界の生き物は、生きていく上で魔法の素"魔素"と密接な繋がりを持っているのはご存知の通り。
で、周囲や体内の魔素のバランスが崩れると、
変異種とか特異種とかっていうのに突然変異しちゃう。
普通は滅多に起こらないことらしいけど、
もし魔物がそうなっちゃうと、かなり厄介なことに。
で、フェリシルスさんの研究所では魔物被害を減らすべく、そうなる仕組みやら環境要因やらを研究しているそうです。
「ゼルキシモさんは、魔物研究の大家ですので、是非お話を伺いたかったのですが……」
なるほど、でも俺らが引っ越して来た時は、その手のモノどころか、家の中はすっからかんでしたよ。
「研究一筋の方だったそうですし、何がしかは残されていたと思うのですが」
おっとそういえば、ここってリフォームされたんでしたっけ。
もしかしたら、リフォーム前にあったアレコレがどこかにまとめて残されているかも。
ってなわけで、ゼルキシモさんの遺品を探すことに。
俺とイオちゃんで、フェリシルスさんを連れて、
まずはこの物件を紹介してくれた町長さんのところへ。




