四等
「せ、聖女様!! 俺は? 俺は何が貰えるんです!?」
続けてボーラスが問いかける。
「えーと、ボーラスさんは赤で二等ですね。では……」
フェルトが木箱から両手で抱えてとても重そうにして取り出したのは、頑丈な革袋に詰められた何かだ。
机にドン、と置かれたそれはジャラジャラと重量感たっぷりの音をたてる。
「待ってくださいね、もう一袋ありますから。ふうふう……よいしょっ! はい、どうぞ! 現金2億ディナールです!!」
フェルトが革袋の紐を緩めると、ぎゅうぎゅうに詰め込まれた金貨の山が顔を覗かせたのだ。
「うおっ!!! うおおおおおおおおおおおおおおおおっーーーー!?!?!? な、なんだこれ!!!! なんだこれ!?!? ゆ、夢じゃねえのか!? お、おい、おいおいマジか!?!?」
ボーラスは目をこれ以上ないほど見開き、両腕いっぱいの金貨を抱え上げて歓喜の雄叫びを上げた。
溢れた金貨が流れ出て、まるで黄金の滝のようだ。
ボーラスは感涙にむせび泣く。
無理もないだろう。
2億ディナールと言えば平均的な冒険者の生涯収入に匹敵するのだ。それを一本のダーツで手に入れたのだから。
どうやら今回のイベントは桁が違うらしい。
これは俺の景品も期待ができそうだ……!!
「うふふっ、喜んでくれたみたいで何よりです。さて、次。ミカヤさんは青で三等でしたね」
フェルトが取り出したのは、美しい装飾の小さな箱だ。
それをカパッと開けると中から虹色に輝く石が現れた。
「ミカヤさん手に取ってみてください。SSR召喚石【堕天使ルシファー】レベル150です!!」
ミカヤがその石に触れると、まばゆい光が辺りを包み込んだ。
煌めく後光をまといながら現れたのは12枚の翼をもつ、背の高い男だった。
銀色に輝く流れるような髪、均整の取れた身体。
中性的なその顔は恐ろしいほどに美しい。
光の中から現れた男は、ミカヤの前に恭しく跪いた。
そしてミカヤの手を取り、手の甲に口づけをしたのだ。
「初めまして、素敵なレディ。僕はルシファー。あなたが新しいご主人様だね? これからよろしく、僕は君の忠実なしもべさ。どんなことでも命令しておくれ、君の言う事ならなんでも叶えるよ」
ミカヤはルシファーに見つめられて気が抜けたようになっていたが、どうやら自分を取り戻したらしく声をあげた。
「きゃああああっ!?!? す、素敵いいいいいい!!!! はあはあ、うっ……!! ふう……。危ない危ない、イケメンすぎて魂が抜けたかと思ったわ。じゅるり……私がご主人様、悪くない気分だわぁ」
ミカヤは舌なめずりをしながら足をもじもじさせてニヤニヤが止まらない様子。
ミカヤがこれだけの反応なのも当然だ。
ルシファーと言えば現在ガチャで排出される中でも最高クラスの性能をもつ超強力な召喚石だ。
それが、最大強化のレベル150で貰えるとは……まったく驚きだ。魔法使いとしてこれ以上の戦力はないだろう。
強力な装備を手に入れられてさぞ嬉しいのだろう。
ミカヤはルシファーに両手で抱きかかえられながら顔を真っ赤にしていた。
「さて……では最後にナガトさんは緑で四等ですね。ではこちらにどうぞ!」
いよいよ俺の番だ!
俺は緊張しながらフェルトのもとに招かれる。
仲間たちも注目して後ろから俺に視線が集まる。
フェルトが机の下から取り出したのは、なにやら折りたたまれた紙の束だ。
白色のそれが机の上に二つ置かれた。
見た目は一見すると鼻をかむ紙のようにも見えるが、きっと驚くような代物に違いないだろう。
「さあ、どうぞ。お手に取ってみてください」
聖女が笑顔で語りかける。
心臓の音が高鳴る。
手に持った感じは、軽いな。すこしザラザラしている。
「ありがとうございます。光栄です、聖女様! ところで、これはいったい何ですか?」
「ああ、これはティッシュですが何か?」
聖女の言葉に俺はおもわず我が耳を疑った。
俺はたまらずフェルトに問いただす。
「あ、あの……何か凄い効果があるとかそういうのは無いんですか!? 実は特別な使い道があるとかは?」
「……??? 効果ですか? 鼻水が出たときとかに使えばいいと思いますよ。はい! じゃあこれで以上になりますので皆さん退出をお願いしますね。次のパーティーの方、どうぞー!」
フェルトは俺の会話を断ち切ると、無慈悲にも終了の宣言をしたのだった。
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