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上限解放



 俺の名前はナガト・ハイルーク。

 教会でガチャを引くのは後回しにした俺たちは、アクトゥスの街の武具屋を訪れていた。


 ひげ面の武具屋の親父が今日も槌を振るって汗を流している。


「こんにちは。親父さん」


「おっと、ナガトじゃねえか。今日はどうした? 鍛冶の依頼か」


「ええ。いい素材が手に入ったので」


 俺は武具屋のカウンターに【アダマンタイト鉱石】をごとりと置いた。

 ――すると瞬時に親父の目つきが変わった。


「おおっと……こりゃあ、アダマンタイト鉱石じゃないか! どこでこいつを?」


「アダマンシザーとたまたま戦う機会があってそこで入手したんです」


「ほお、そりゃあすごいな。こんな素材は滅多に見られねえ。俺も腕がなるぜ!」


 武具屋の親父はアダマンタイト鉱石を見て興奮した様子だった。



「ナガトは知ってると思うが説明しておくぜ。こういう鉱石を使ってできることは二つだ。既存の装備の【レベルの上限】を開放するか、鉱石を素材にして【新しい装備】をオーダーメイドで作るかだな」


「ああ。どちらがいいかな……」


「あと普通は鉱石一つで一回の加工しかできないが、このアダマンタイト鉱石なら大きいから二つ分にはなるな。こいつで二回分の加工が可能だぜ。よく考えて選んでくれ」


「おっと、二回の加工が出来るのか。それはすごいな」


「ねえナガト、ここはあなたに任せるわ」


「わかった。じゃあまずはルナリエ用に【盾】を新しく作ろうか」


「わぁっ、いいの? やったあ!」


「ああ。アダマンタイト鉱石なら相当強力な盾が作れる。ルナリエの防御力もかなり上がるはずさ」


 今日ガチャのピックアップスケジュールを確認した限り、しばらく強力な盾装備の登場はないらしい。

 ここで作っておいても損することは当分ないだろう。

 

 剣士のスキル【不知火(しらぬい)の構え】を使えば防御力は火力にも変換できる。

 周回プレイで効率を求める時も役に立つだろう。


「よぉしこれでかなり強くなるわね。あっ、でも待ってナガト。それだとちょっと問題が……」


「ああ、どうしたの?」


「その……【装備重量】がオーバーしちゃうわ」



 ――ルナリエの心配は正しい。

 俺たち冒険者のステータスの中には【装備重量】という項目がある。


 これは身体全体で、どれぐらいの重量の装備を身に着けられるかを決めるステータスだ。


 もしこれを超えて装備を身に着けると、重くてまともに動けなくなる。魔物の前なら命取りだろう。


 そして【装備重量】に対してどれぐらいの装備を身に着けているかで動きの機敏さも変わってくる。


 具体的には装備重量の30パーセント以下で【軽量級】、70パーセント以下で【中量級】、それ以上で100パーセントまでを【重量級】に分けられる。


 無論、軽い方が動きも速い。


 前衛職の盾役(タンク)などは【重量級】で戦ったりもするが、ルナリエのジョブ【剣士】は動きの速さを強みにした攻撃的なジョブだ。


 ルナリエは【軽量級】を維持するため、装備重量の30パーセント以下に装備の重さをおさえているのである。


 盾を追加したら30パーセントを超えてしまうのでは、という心配なのだろう。


「それなら心配ないさ。ルナリエ、ステータス画面を見てくれ。【装備重量】が上がっているだろう?」


「どれどれ、【ステータスオープン】! あっ、本当だ! 装備重量がかなり上がっているわ」


「ああ。昨日レベルアップしたから装備重量も増えたんだ。今なら盾を持っても【軽量級】の動きを維持できるよ」


「わぁ……これなら心配ないわね」


「とはいえあんまり大きいのは無理だな。小盾サイズで作ってもらおうか」


「ええ、そうね。そうしましょうか」



 俺たちはアダマンタイト鉱石を使った盾をオーダーするのだった。

 武具屋の親父が腕をまくって張り切っていた。

 

「よし。注文うけたまわったぜ。あと一つはどうする?」


「そうだな……」



 俺はある事で迷っていた。

 それは装備のレベル上限解放で俺の杖【ロータスワンド】の上限を開放するかどうかだ。


 アダマンタイト鉱石を使いレベルの上限解放をすることで、装備のレベルをそれまでの100から150まで上げられるようになる。


 これによりステータスが更に上げられるようになるので単純に強くなる。ここまでは特に迷う要素はない。


 俺が悩んでいるのはもう一つの要素。

 それは上限解放することによる【第二スキル】の解放だ。


 現在ロータスワンドには詠唱時間を40パーセント短縮させる【高速詠唱】のスキルしかない。


 だが、武器のレベルを150まで上限解放するとここにもう一つのスキルがつくのだ。

 どんなスキルが付くのかは武器ごとにあらかじめ決まっている。


 普通、スキルが追加されるのだから装備として強くなる。

 明らかなマイナス効果が付くことはない。


 だが中には使い勝手が大きく変わってしまったりするようなスキルもあるので一概に強くなるとは言えないのだ。


 一度上限解放したら元には戻せない。ロールバック対応でも解放前に戻すことはできない。


 なるべくならリスクのある強化は避けたい。


 俺は以前からアダマンタイト鉱石が手に入った時の事を考え、ロータスワンドが上限解放されたときにどんなスキルが追加されるのかを本で探した。

 だが、なぜか上限解放されたロータスワンドに関する記述はどの本にも見つけられなかった。


 なのでやるとしたらどんなスキルが付くかわからない一発勝負になってしまう。

 万が一、変なスキルが付いたら使い勝手が大きく変わってしまうかもしれない……


 一応、防具の上限も上げられるのだがやはり武器を強化しておく方が周回プレイで重要だ。


 ルナリエの武器【覇剣カラドボルグ】は既にレベル150なので、アダマンタイト鉱石でもこれ以上は上げられない。


 なのでやるとしたらやはり俺のメイン武器【ロータスワンド】が候補になってくる。

 多少未知数なところはあるが基本的には強くなるだろう。よし、やってみるか。


「じゃあ親父さん、俺のこの杖の上限解放を頼みます」


「おう、わかったぜ! ロータスワンドか、こいつの上限解放は俺も初めてだな。どんなスキルが付くかわからねえがやっちまっていいんだな? もう元にはもどせねえぞ」


「ええ。お願いします」


「よし、わかった。加工には一日かかる。明日になったら取りに来てくれ!」


 俺たちは武具屋に素材と杖を預け、店を後にした。

 レベルの上限解放は装備のレベルが100になっていないとできないので、親父に金を払って先にロータスワンドのレベルを100まで上げてもらうのも一緒に依頼した。


 これで明日になれば新たな装備と対面することになるだろう。


「うふふっ、明日が楽しみね!」


「ああ、そうだな。どんな仕上がりになるだろうか……」




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