クエスト報告
イルマにお礼を言って宿を後にした俺たち【ブラック治療師】は、アクトゥスの街に戻ることにした。
宿から出る時、ルナリエとイルマが何やら話しているのが見えた。
「イルマ、昨日の『作戦』はごめんね。後で埋め合わせはするから」
「ふふっありがとうルナリエさん。私、期待して待ってますね」
どうやら二人もすっかり仲良くなったみたいだな。
しかしいったい何の話をしているんだろう。
ジュノ海岸からはなれ、街道を歩く俺たち。
ルナリエは嬉しそうに体を動かしていた。
「うーん、体が軽いわ。レベルアップってすごいのね!」
「確かに強くなったけど急に無理はよくないぞ。昨日は一気にレベルが上がったから徐々にならしていかないと」
「うふふっ、わかってるわ。昨日はいっぱいさわってくれて嬉しかった。ねえ、またあのレベル上げがしたいなぁ」
「やれやれ、残念だがそれは無理だ。EXPポーションは希少品だからね。滅多に手に入るものじゃないのさ」
「むう……じゃあどんどん魔物を倒して稼がないと!」
「ああ、その意気だね。パーティーのランクが上がれば受けられる依頼も増える。もっと効率よく稼げるようになるよ。ギルドに戻って報告をしてこよう」
しばらく歩くと来た時にワープで飛んできた、あの白い石の小屋が見えてきた。
「そういえば、ワープで来たけど帰りはどうなんだ?」
「それなら心配ないわ。この廃課金ギルドの冒険者証があれば帰りもワープで飛べるわよ」
「へえ、便利だなあ!」
俺たちは扉を開けて小屋に入る。
床に描かれた魔法陣に乗ると、それが青い光を放ち始めた……!
光が俺たちを包み、視界が白くなっていく。
――気が付くと俺たちは廃課金ギルドの建物、その前の広場に立っていた。
「ふう。帰って来たわね」
「すごいな。こんな一瞬で帰って来れるなんて」
普通に街へ帰ったら丸一日はかかるだろう。
ワープストーンは本当にすごいな……
俺たちは依頼の報告のためギルドの受付へと向かった。
受付嬢が笑顔で俺たちを出迎える。
「おかえりなさい。ルナリエお嬢様、ナガトさん。いかがでしたか?」
「ああ、依頼は達成しました。これがサンドクラブの素材です」
ドンッ!!
俺は大量の素材――サンドクラブ、約100体分の素材で膨れ上がったアイテムポーチをカウンターに置いた。
袋からあふれた爪がこぼれ落ちる。
「こ、これは……!!」
受付嬢は目を見開いて驚いていた。
「今回、奴らずいぶん数が多かったですね。これは買い取ってもらえそうですか?」
「ええ、もちろんです! す、すごい……サンドクラブの素材がこんなに!? これを全部、お二人で?」
「うふふっ、そうよ。特にナガトがね、一瞬で50体くらい倒してしまったわ」
「そ、そんな! すごいですっ、そんなことができるなんて!」
受付嬢はカウンターから身を乗り出し、上目づかいできらきらとした視線を向けてくる。
「そんな。俺はたいしたことはしてませんよ」
「いえ、そんなことはありません。それだけの魔物を一瞬で倒せるなんて、この廃課金ギルドでもそこまでできる人はいるかどうか……まして、治療師でありながらそこまでお強いだなんて。私、こんな方はいままで見たことがありません!」
「そ、そうですか? ははは、なんだか照れるなぁ」
受付嬢はとても興奮した様子で語っていた。
やれやれまいったな。本当にたいした事はしてないんだが……
その時だった。ギルドに大きな声が響いた。
「大変だッ!! ジュノ海岸にとんでもない奴があらわれたらしいぞ!!」
「な、なんだって!?」
ギルドはざわざわと騒然となった。
どうしたのだろう。なにか事件だろうか。
「地上のギルドからの情報だ。ジュノ海岸にサンドクラブの大群があらわれたらしい。この数は間違いない『大移動』の前兆だ」
「大移動だって!? じゃ、じゃあ奴らを率いているのは……」
「ああ。あの『深海の悪夢』だ」
「なんてこった。これは最悪の事態だぞ……!」
彼らはどうしたのだろう。俺は受付嬢に聞いてみた。
「受付嬢さん、彼らはいったい。なにか事件ですか?」
「どうやら例のジュノ海岸にとんでもない魔物があらわれたみたいです。大変だ……すぐに大規模な討伐隊を組まないと!」
ジュノ海岸……もしかして俺たちが倒してきたあれの事だろうか。
俺はアダマンタイト鉱石を取り出してカウンターに置いた。
「もしかしてそれはアダマンシザーのことですか? 奴なら俺たちがもう倒して来ましたが……」
「なっ!? こ、この輝きはアダマンタイト鉱石! ま、まさか……」
カウンターにごとりと置かれたアダマンタイトを見て、受付嬢はなにやら固まっていた。
まわりの冒険者たちの視線が一斉に俺たちに向けられた。
「あれはまさしく本物のアダマンタイト鉱石! じゃあ、例のアダマンシザーはもう……」
「す、すごい! まさかあいつら二人だけで倒したのか!?」
冒険者たちはざわざわと騒然となっていた。
おっと、彼らはアダマンシザーの事を言っていたのか。
しまったな。目立つつもりはなかったのだが……
「ごくり……これは詳しく話を聞く必要がありそうですね」
受付嬢はなにやら目の色を変えて、俺を見ていた。
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