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ジュノ海岸



 真夏の太陽が空高く輝いている。

 白い砂浜に、どこまでも続く澄み渡った青い海。

 

 俺とルナリエはクエストの目的地――ジュノ海岸へとやってきた。


 ヴァルナ大陸は広大な内海を持つ大陸だ。

 ジュノ海岸へはアクトゥスの街から一日と少し、西へ歩けば行くことができる。


 俺たちにはワープストーンがあるので、ワープした先から歩いてすぐだ。


 鳥たちの鳴く声、波の打ち寄せる音が静かに響いている。

 どうやらビーチには俺たち以外に誰もいないようだ。


 おかしいな……

 この時期なら通常、ジュノ海岸は観光客で混みあっているはずなのに。


 ルナリエは波打ち際に走り、目を輝かせて言った。


「うわぁ、すごい! 誰もいない……私たちの貸し切りだわ!」


「そうだね。これならまわりを気にせずサンドクラブを狩れそうだ」


「よし、じゃあさっそく海で泳ぎましょうか! さっき水着を買ってきたわ。ナガトの分もあるわよ」


「えっ!? 蟹は?」


「み、水の中いるかも……。ねえ、二人で泳ぎながら探すのはどうかしら?」


「水の中にサンドクラブが? そ、そうかなあ……」


 はたしてどうだろう。

 サンドクラブの習性を考えれば水の中にいるとは考えにくいのだが……


「もう。せっかく誰もいなくて貸し切りなのよ? 楽しまなかったらもったいないわ。たまには息抜きも必要でしょ?」


「そうだなあ。まあ、せっかく海まで来たんだし泳いでいくか!」


 理由はわからないが、なぜかジュノ海岸に他の観光客の姿はない。

 夏のジュノ海岸でこんなこと滅多にないだろう。

 

 それにさっきからこの暑さだ。

 ちょっとくらい海で遊んでいってもいいだろう。


 ――そんな事を考えている時だった。


「……どうやら、泳いでいる時間はなさそうだ。ルナリエ、武器を構えろ。サンドクラブだ!」


 俺たちのまわりの砂浜、その砂の中をなにやらうごめく影。

 サンドクラブは砂の中にもぐり、すがたを消して獲物に忍び寄ってくるのだ。


 俺は周囲に目をやった。

 よく見るといくつもうごめく影がある。


 砂の中のサンドクラブはおそらくかなりの数だ。

 どうやら俺たちはすでに囲まれているらしい。


「三体、四体、かなり多いな。ルナリエ、俺の後ろにいるんだ」


「わ、わかったわ!」


 ルナリエは剣を抜き俺の背に隠れる。

 俺は杖を下に向け、タイミングを計った。


 ずざざざざ……!

 砂の中を不気味にうごめく影が俺たちの足もと近くまで近づいてくる……


「【稲妻(ライトニングボルト)】!!」


 ズバァン!!


 俺は足もとの地面めがけて【稲妻】の魔法を放った。

 激しい炸裂音と共に、衝撃でまわりの砂が吹き飛び空中に舞い上がる! 


 砂煙がゆっくりと晴れていく。

 俺たちのまわりにいたのは大きなハサミをもつ黄色い蟹の魔物、サンドクラブたちだった。


 サンドクラブは皆、目をまわしたようになっている。


「う、うわあ、こいつらがサンドクラブ!? なんだかふらふらしてるわね?」 


「サンドクラブは砂の中で音を頼りに獲物を探すんだ。だから急に大きな音を聞くと、驚いてスタンしてしまうのさ」


「す、すごい……! サンドクラブにそんな攻略法が!?」


「なに、大したことじゃない。さあ、今が攻撃のチャンスだ!」


「わかったわ! えいっ【ファイヤースラスト】!!」


 ルナリエが剣のスキルを発動する。

 剣にまとった炎による、広範囲のなぎはらい攻撃だ。


「ギュイイイイッ……!!」


 炎の剣がサンドクラブたちをまとめて焼き払った。


「よぉし、やったわね! ……ん?」


 無事、サンドクラブたちを倒した俺たち。

 すると聞き覚えのあるファンファーレがその場に鳴り響いた。



―――――――――――――――――

報告:冒険者レベルが上がりました!


名前:ルナリエ

ジョブ:剣士

レベル:38→39 ★UP!

(NEXTレベル:10pt/780pt)

★ステータスが上昇

★スキルポイント1点を獲得

―――――――――――――――――



「あっ! 私のレベルが上がったみたいだわ!」


「おう、やったな。おめでとう!」


 俺たち冒険者は魔物を倒すことでレベルアップできる。

 一気に複数のサンドクラブを倒したのでルナリエのレベルが上がったようだ。


「よし、じゃあサンドクラブの素材を回収するか」


 俺は解体用のナイフを取り出し、サンドクラブのハサミを切り取っていく。

 サンドクラブの硬質なハサミは武器の研磨剤に使われるほか、その身は鍋にしても美味いのだ。

  

 しかし、どうだろう。

 さっきから不思議に思っていたことがある。


 今、倒した分だけで4体だ。

 サンドクラブはこんなに群れて出てくる魔物だっただろうか?

 

 疑問に思った俺はちらりと砂浜を見た。


 一見、何もいないようにみえる砂浜。

 しかし目を凝らしてよく見ると、砂浜のあちこちが怪しくうごめいている。


「すごいな……100体以上はいるぞ……」


「ど、どういうこと?」


 これはある意味チャンスかもしれない。

 依頼のサンドクラブは5体だが、もっと粘っていいだろう。


「理由はわからないが、浜辺にすごい数のサンドクラブがいるみたいだ。なあ、今日はルナリエのレベル上げをしないか?」


「えっ、いいの!? やったぁ!」


 今後の周回プレイの事を考えると、ルナリエのレベルはなるべく上げておきたい。

 サンドクラブはそこまで強力な魔物ではないが、これだけの数がいるならかなりのレベルアップを見込めるだろう。


 俺の魔法で驚かせて、ルナリエの剣技で倒す。

 さっきの方法なら安全にやれるはず。


 どちらにしても、この数のサンドクラブを放置してはこの地域が危険だ。

 奴らは俺たち【ブラック治療師】が倒すとしよう。


 砂浜に巣食う蟹たちとの戦いが始まろうとしていた……




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