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パーティー結成



「お待たせしました。こちらがナガトさんの新しい冒険者証になりますね」


 ここは廃課金ギルドの受付。

 メイド服のような白黒の制服を着た受付嬢たちが並んでいる。


 受付嬢から渡された冒険者証――これは地上の冒険者ギルドとは別で、廃課金ギルドで独自に発行されているものらしい。


 それは白地の素材にグリーンの縁どりがされた高級感のあるデザインで、中央には青色に輝く小さな石がはめ込まれていた。


「これは廃課金ギルドの所属をしめす証である以外に、このギルド独自の便利な機能を使うための鍵でもあるんです。大切な物なのでなくさないように注意してくださいね」


「へえ、便利な機能? それはいったいなんですか?」


「ふふっ、あちらをご覧ください」


 受付嬢が指さした先はギルドの前の広場だ。


 ここに来るときにも見て気になってはいた。

 広場の中央には青色に透き通った結晶の塊がふわふわと宙に浮かんでいる。


「あれは【ワープクリスタル】です。あの結晶にこの冒険者証をかざせば、離れた場所に一瞬で移動することができるんです。どうです、すごいでしょう?」


 受付嬢はにっこりと得意げに言った。


「ええっ、そんなことが!? すごい、こんな便利な設備があるなんて!」


「もっとも、あのワープクリスタルは一部が欠けていて完全ではないんです。あまり遠くへは飛べないですし、一日に稼働できる回数にも制限はあります。それでも、近場のめぼしい狩場にはすぐに行けますし、廃課金ギルドの会員の方が使うくらいの回数なら問題ありません。ぜひ活用してみてくださいね」



 受付嬢の話では、アクトゥスの街から歩いて一日くらいの範囲なら一瞬で行くことができるそうだ。


 これはすごい設備だな。

 ワープクリスタルがあれば移動時間を大幅に短縮して、周回プレイの効率を上げられそうだ。


「本当は地上のギルドにも導入できればいいのだけど、稼働回数に制限があるからね。この街全員の冒険者が使うことは残念だけどできないの。このワープクリスタルも昔の帝国の時代に使われていた物で、私たちには作ったり、修理したりも出来ないわ。だからこれは優秀な冒険者が集まる廃課金ギルドだけの特別なの。大事に使いましょうね」


 ルナリエが俺と同じ冒険者証を見せながら言った。


 なるほどそういうことか。

 確かにこういう設備があることが知られていたら、地上のギルドの冒険者たちはずるいと思うかもしれない。


 廃課金ギルドの存在が一般に伏せられているのも、そういう事情があるのかもしれないな。

 だが精鋭の冒険者たちがすばやく各地に向かえれば、魔物たちの脅威により対抗しやすくなるだろう。


 あの辺境伯もずいぶんと俺に期待してくれているらしい。

 やれやれ、俺ももっと頑張らないとな。


「さてこれでナガトさんの冒険者の登録は完了しました。あとは何かございますか?」


「あっ、そうそう。私たちパーティーを新しく組みたいの! その申請もおねがいできるかしら」


「かしこまりました。そういえばルナリエお嬢様も今はパーティーを組んでいませんでしたね。では、お二人で新しくパーティーの申請を出しますね」


 受付嬢はカウンターの下から紙とペンを取り出した。


「ではこちらの紙に新しいパーティーの名前をお願いいたします」


「名前か……。うーん、どうするかな?」


「ナガトはどう? 何かいい案があるかしら?」


 俺は頭を巡らせるがなかなか浮かんでこない。


「そうだなあ。どうだろう、ここはルナリエが決めてくれないか」


「わかったわ。そうね……今日はナガトの黒いコートがとっても印象的だったわ。だからまず頭には『黒い(ブラック)』を付けましょう」


「ああ、いいね」


「あとは、魔法の名前から取るのはどうかしら? たとえば【稲妻】。『ライトニングボルト』……少し長いわね。ここは稲妻を他の言葉に読みかえるのはどう?」


「よし、じゃあそんな感じでいくか」


 俺はルナリエのアイデアのパーティー名を紙に書いて受付嬢に渡した。

 受付嬢は書類にペンを走らせながらパーティーの登録を進めていく。


 すると突然、受付嬢の手が止まった。


「あ、あら? ナガトさん、申し訳ありません。このパーティー名はどうやら使用できないみたいです」


「えっ? 他にもう同じ名前のパーティーがいるとか?」


「いえ、そうではないのですが。ごめんなさい、私にも理由はわからないのですがとにかく使えないみたいです」


 どういうことだろう。

 何か良くない言葉だっただろうか……


「そうなんですね。じゃあルナリエ、どうしようか?」


「そうね、なら魔法じゃなくて武器の名前からはどうかしら? さっきサノスが言ってた、ナガトの杖。名前なんだったかしら、あれを参考にするのはどう?」


「いいね。じゃあその方向で行くか」


 俺はふたたび受付嬢にパーティー名を書いた紙を渡す。


 ――しかし。


 受付嬢の手がまたぴたりと止まる。

 彼女は困惑した表情で固まっていた。


「ご、ごめんなさい。どうやらこの名前も使えないみたいです」


「ええっ!? な、なんで?」


 ルナリエが頭をかかえて言った。


「私にも何が何やら……すみません」


「そ、そう。じゃあここは『ブラック治療師』でどうかしら? カッコいいでしょう?」


 ルナリエが期待を込めた目で俺を見てくる。

 ブラック治療師……なんだかパーティー名というより、個人を指してるような気がするが、まあ気のせいだろう。


「あ、ああ。いいんじゃないかな」


 俺は再度、紙に記入する。ブラック治療師、と。


 受付嬢が申請書類を仕上げていく。

 そして……


「あっ! 今度は無事登録できたみたいです。よかったぁ……」


 受付嬢が安堵の表情で胸をなでおろした。

 パーティー申請の用紙に赤い印が押される。


「はい。お待たせしました。これでお二人は廃課金ギルドの新たなパーティー【ブラック治療師】として認められました!」


 ルナリエは笑顔で右手を俺の前に出した。


「これで私たち正式に同じパーティーの仲間ね。ナガト、これからよろしくね!」


「ああ、よろしくなルナリエ」


 俺はルナリエの手をとり握手を交わすのだった。


 ……仲間、か。

 やれやれ。なんだかずいぶんひさしぶりに聞いた気がするな。


 色々あったけど、信じられる仲間がいる事はやっぱりいい事だ。


「ルナリエお嬢様、ナガトさん、パーティー結成おめでとうございます。お二人の成功をお祈りしています」


 このギルドで、ルナリエと一緒に上を目指そう。

 受付嬢に祝福されながら、俺は決意を新たにするのだった。




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― 新着の感想 ―
[一言] ブラックサ○ダーとかブラックロー○スとか、確かに叱られそうですね・・・これは止むを得ない(笑)
[一言] ブラックジャックみたいなパーティ名だな 現代だと、患者に酷使する治療士みたい
感想一覧
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