加入試験
「どうするのサノス? せっかくの治療師なのに……」
「このまま諦めるしかないのでござるか?」
「まあ待て。オレに良い考えがあるんだ」
サノスたち三人はあれからなにやら話し込んでいた。
「じゃあナガト、気を取り直して受付に行きましょうか」
「ああ。そうするか」
俺とルナリエが受付に向かおうとすると……
「ちょっと待ちな。ナガト、お前の廃課金ギルドへの加入をまだ認めるわけにはいかねえな」
サノスがふたたび俺たちの前に立ちふさがったのだった。
「えっ!? ど、どうしてですか?」
「サノス、何言ってるの? ほら、この紹介状が目に入らないのかしら?」
ルナリエはアクトゥス辺境伯の家紋が刻まれた紹介状を突き付ける。
「うっ! た、確かに辺境伯は認めているようだが、だがオレも現場で活動する冒険者たちの代表として、新しく加入するナガトが廃課金ギルドでやっていけるかどうか、その資質を確かめなくちゃならねえ。廃課金ギルドには危険な冒険も多いからな」
「また、わけのわからないことを……。サノス、あなたはナガトの強さを知らないからそんな事を言えるんだわ」
「まあ、そう言うな。どうだ? これでもオレは廃課金ギルドの中じゃ装備の事には詳しいんだ。ナガトの装備が廃課金ギルドに入るのにふさわしいかオレが診断して、もし力不足だとなったら、しばらくはナガトはまったり団で研修として、パーティーに参加してもらう。そういうことでどうだ?」
「やれやれ、諦めが悪いわね。譲るつもりはないけど、ナガトがいいなら装備を見るのは自由よ。どうする、ナガト?」
「そうだなあ。俺も装備の事についてはずっと独学でやってきたし、詳しい人に見てもらえるなら悪くないかな」
「よし、決まりだな。じゃあさっそく見ていくとするか」
サノスはその大きな体をかがめて俺の装備を上から眺めていく。
「ふむ、その黒いコートは新品だがそれ以外は結構古い型の装備もちらほらあるな。あまり見ないタイプだ。それにしちゃよく手入れされている……。じゃあまずはその杖から見てみるとするか」
サノスは俺の杖を手に取って眺めはじめた。
「くくくっ、始まったわね。サノスの得意技『装備語り』が……!」
「キヒヒ……! サノス殿が一度装備の事で話し始めたら、丸一日は語り続けるでござる。あの新人も、きっと根負けして我らのパーティーに入ることになるでござるよ」
マーベラとマイソールの二人はその様子を見て、後ろでなにやら悪い笑みを浮かべていた。
「へえ、この杖ずいぶんと古い年式の物だな……オレでも見たことがねえタイプだ。いや待てよ? この形状は確か……!? い、いや、まさかそんなハズはねえ……こんな物がここにある訳が……」
サノスはいったいどうしたのだろう。
彼は急に青ざめた顔になり、汗をだらだらと流している。
あまり俺の杖は評価が高くなかっただろうか……
「こ、この形状、刻印、間違いない本物だ。な、なんてことだ……この目で見る日が来るとは……! まさか【ロータスワンド】が現存しているなんて……」
サノスは信じられない、といった表情で膝を震わせていた。
「大丈夫ですかサノスさん? なんだか顔色が青いですが」
「あ、ああ、すまない。とんでもないものを見たせいで、ちょっと気分がね……。悪いが今日はこの辺でもう失礼するよ」
「えっ、装備の診断はもういいんですか? サノスさんのパーティーで研修する話は?」
「い、いえいえ。まさかロータスワンドの……『パワーエイト』の所有者の方をパーティーにお誘いするなんてね。そんなことはとても、畏れ多くてできませんよ。あっ杖はお返しします。いや、呼び止めてすみませんでした。じゃ、我々はこの辺で!」
「ちょっとサノス、もういいの?」
「ううむ。いつものサノス殿じゃないでござるね……」
二人を引き連れてサノスは去っていった。
サノスは急にどうしたんだ……
『パワーエイト』ってなんだろう?
疑問を残しながら、俺は彼らを見送るのだった。
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