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アクトゥスの街



 街道を歩く俺たち。

 遠くにアクトゥスの街の城壁が見えてきた。

 

 アルムの森を出たころには真上で輝いていた太陽が、もうすっかり地平の向こうに沈もうとしている。日暮れでもこの季節は気温がまだ高い。夏の虫があわただしく鳴いていた。


 ダリルが口を開いた。


「そういえばよ、明日は街の【教会】で何かイベントがあるって聞いたぜ」


「へえ、何があるんだ?」


「何かもらえるのかしらね?」



 そういえば出かける前に何か聞いた気がするな。何だっただろうか。

 

 【教会】というのは【女神カミラ】の意思を執行する機関で、人々の精神的な拠り所であるとともに、俺たちに新しい装備や召喚石を提供してくれる組織だ。


 魔物たちの侵攻は日々激しさを増していたが、女神カミラの奇跡を代弁する教会が次々と強力な武器や魔法を開発してくれていたので、現在のところ大きな被害はなく戦ってくることが出来ていたのである。



 そんなことを話している内に俺たちはアクトゥスの街の城門をくぐるのだった。


 街の入り口付近、大通りに面して建てられた一際大きな建物が冒険者ギルドだ。

 中は酒場も併設されていて、今日も活気に満ちている。


 俺はフレイムヒュドラの素材が詰まったアイテムポーチをダリルに渡した。

 ダリルはそれを受け取ると、受付嬢の控えるカウンターの上に置いた。


 大量の素材で膨れ上がった袋からジャラジャラと牙と爪がこぼれる。


「よお、ヒュドラの討伐が終わったぜ。きっちり30体分だ、さあ鑑定してくれ」


 受付嬢は驚いた様子でそれに答える。


「うわあっ、すごいです! フレイムヒュドラの素材がこんなに!? すぐに鑑定して報酬の手配をしますね。さすが勇者ダリルさんのパーティーです!」


「ははは! 俺にかかればこれくらい大したことありませんよ」


 ダリルは得意げに笑う。



 そして、報酬が入った麻袋からダリルは俺たちパーティーメンバーに分配した。

 俺の分からは使った魔力回復ポーションの分が差し引かれ、幾分か目減りしていたがそれでも数日間森に籠って稼いだだけはある。かなりの金額だ。


 やっぱりこの瞬間は格別だな。これはどのように使おうか……


「よし、じゃあ今日はこれで解散だ。明日はイベントがあるらしいからな、昼に教会の前で集合だ。お前ら遅れるんじゃねえぞ」


「はっははは! 分かってるって! それより今日はとことん飲むぜ、よお。ダリルも飲むだろ!?」


 ボーラスがダリルの肩に手を回す。


「はあ、それにしても暑いわねえ。私は汗かいて気持ち悪いからもう帰るわ。じゃあね」


「みんなお疲れ、じゃあまた明日」


 俺は仲間たちと別れ、自分の家に帰るのだった。



 アクトゥスの街はずれにある俺の家は周りに他の民家もなくポツンと立っている小さな家だ。

 その窓からは明かりが漏れ、煙突からは煙がたなびいている。


 

「あっ! おかえりナガト。えへへ、ちょうどご飯ができたところだよ!」


 家の戸を開けた俺を迎えたのは幼馴染のライザの声だ。

 ライザはよく俺の家に来ては、俺に料理を振舞ってくれるのだ。

 なんでも彼女曰く、二人分まとめて作った方が節約になるからとのことらしい。


「はは、ただいまライザ。よく今日俺が帰るって分かったね。うーんいい匂いだ、今日は何を作ったの?」


「うふふ、今日はナガトの好きなコカト鶏の炙り焼きよ。特製のクリームソースもあるわ」 


「うわあっすごいや。待ってて、すぐ着替えてくるよ」


 俺は急いで荷物を置いて部屋着に着替えるとテーブルの席に着いた。

 まもなくこんがり焼かれたコカト鶏の乗った大皿を持ってライザがやってきた。


「じゃーん! ナガト、冒険(クエスト)お疲れ様。いっぱい食べてね」


 ライザがナイフで切り分けたそれに、俺はクリームソースをたっぷりと付けて口に運ぶ。

 皮のパリパリとした食感、溢れ出るジューシーな肉汁、そしてクリームソースの酸味が溶け合って……たまらない美味しさだ! 


「うまいなあ。さすがライザ、最高だよ。あれ、この白いのは何だい?」


「これは新大陸で見つかった芋の一種なの。合間に食べてみて、きっとよく合うわ」


 俺は細長く切られたそれを口に入れた。ホクホクとした食感、ほのかな塩味、うーんこれはクセになるな。これだけでもいくらでも食べられそうだ。


「おいしい? ふふふ、よかった気に入ってくれたみたいで。私もお腹が減っちゃったわ」


 ライザは肉にフォークを刺すと俺の使ったクリームソースの皿にくぐらせて口に運ぶのだった。



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