ロールバック対応
ダリルたちにパーティーを追い出された俺はアクトゥスの街の教会に来ていた。
今日はガチャを引きに来たわけではない。
ある用事があったのだ。
「こんにちは、シスター。今日は【ロールバック対応】をお願いしたいのですが」
「ロールバック対応ですね。かしこまりました、どうぞこちらに」
意外と知られていないことなのだが、教会が提供しているサービスの一つに【ロールバック対応】がある。
ロールバック対応とは簡単に言えば壊れてしまった装備の修理である。
教会からガチャやイベントで冒険者に提供されるすべての装備品は、俺たちが手にした瞬間に持ち主が自動的に登録される仕組みになっている。
そして装備のレベルや武器スキルといった強化の具合は、女神カミラがすべてを記憶してくれているらしい。
なので不意の事故で装備が破損したり紛失や盗難の被害にあっても、教会でロールバック対応を受ければ、失った装備を元通りの完全な状態で取り戻す事ができるのである。
「冒険者証を確認いたしますね……はい、確認が取れました。ナガト・ハイルーク様、あなたは当教会の【プラチナ会員】でいらっしゃいますね。いつもご寄付をいただきありがとうございます。では、今回のロールバック対応は無料となりますね。では、奥にどうぞ、ご案内いたします」
シスターはにっこりと笑うと俺の手を引いて、教会の奥に誘った。
通常、ロールバック対応には寄付金が必要だ。
しかし、俺はこの教会の【プラチナ会員】なので特典として、年に二回まではロールバック対応を無料で受けられるのだ。
この会員制度は下から順にブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナとランク分けされている。
ランクは、主にガチャを引いた回数などで決まってくる。
一番上のプラチナ会員は新規ピックアップガチャの情報が先行して閲覧できたり、クエストに向かう際に馬車や船を使うたびに買い物でディナールの代わりに使える【ポイント】という通貨のようなものが貯まったりといろいろ特典が受けられるのだ。
なので、今回のように不意に装備を失ってしまっても安心というわけだ。
いやあ助かったな、プラチナ会員で本当に良かった。
教会の奥に佇む女神カミラの像。
静まり返った厳かな雰囲気のなかで、それは慈愛に満ちた視線をおとしていた。
「さあ、どうぞ。取り戻したい装備を思い浮かべてください」
シスターに促され、俺は像の前に歩み出る。
床に片膝をつき、頭を下げて右手を前に出した。
女神の像が虹色に輝き、その光が俺の手の中に集まっていく。
光の中からあらわれたのは見慣れた杖の姿だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
【ロータスワンド】
武器:杖
レアリティ:SSR
レベル:89/100
(NEXTレベル:200pt/3700pt)
突破段階:3/3
攻撃力:2810
スキル:高速詠唱(スキルレベル:10)
魔法の詠唱時間が40パーセント減少。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
俺は杖のステータスを見る。
それは、今日ダリルに折られる直前のものとまったく同じだった。
俺は一安心して胸をなでおろす。
「いかがですか。望まれた装備は無事戻りましたか?」
「ええ、元通りですよ。いやあ、助かりました」
折れた方の杖はダリルたちがそのまま持って行ってしまっていたのだが、シスターに聞いたところ折れた方の杖はロールバック対応をした段階で自動的に消滅するらしい。
もし、壊れた杖の現物がないとロールバック対応できないと言われたらどうしようかと思っていたのだがとくに問題なかったようだ。
「武器のレベルも全部そのまま復活できるなんてすごいなあ。いったいどうやっているんですか?」
「さあ……女神カミラの奇跡は、私たちには想像も及ばない事です。ただ、女神は冒険者にお与えになった装備のすべてを覚えていらっしゃるそうですから。そこから再現をしているのだと、私は考えていますわ」
俺はシスターにお礼を言って教会を後にした。
それにしても、星の数ほどいる冒険者の持つ、装備の一つ一つの状態まで記憶しているなんて女神カミラはすごい。
このような女神が、人間の味方としてあってくれるのは、なんと心強いのだろう。
俺は再び杖を硬く握りしめる。
……どうやら少し忘れていたようだ。
パーティーを追い出されても、劣等民と蔑まれても、俺たちをとりまく状況は何も変わってはいない。
俺たちの事情がどうあれ、あいかわらず魔物たちは攻めてくる。
冒険者がなにもしなければ、人々がその脅威にさらされるのだ。
パーティーを追放されたのは痛いけど、今の俺に出来ることをしないとな。
ただ、気がかりなのは今日のギルドでの一件でずいぶんと悪目立ちしてしまった事だ。
しばらくはパーティーを組んでくれる相手が見つからないかもしれない。
やれやれ、しかたない。
多少効率は落ちるが、しばらくは単独で活動するしかないか。
一人でクエストを受けるのはいつぶりだろうか。
それなら、使う魔法を見直す必要があるな。
俺は準備のため、一度家に戻ることにしたのだった。
この小説を読んで
「面白い」
「続きが気になる!」
「この先どうなるの!?」
と少しでも思ったら、↓の★★★★★を押して応援してくれると嬉しいです!
あなたの応援が、更新の原動力になります!
よろしくお願いします!




