周回プレイ
ヴァルナ大陸、その東方に位置する都市アクトゥス。
この都市の近くに広がるアルムの森は魔物との戦いの最前線だ。
森の背後にある山脈を超えて侵攻してきた魔物が肥沃なこの森に住みついて繁殖し、しばしば大発生をして周囲の都市を脅かす。
フレイムヒュドラは繁殖力が高く、数が増えると手が付けられなくなる危険な魔物だ。
俺たちのパーティー【紺碧の輪】はこの森に仮の拠点を構え、今日までに30体近いフレイムヒュドラを討伐してきた。
俺たちのように一度の冒険ごとに特定の魔物をターゲットにして戦うパーティーは珍しくない。
戦う相手を限定することで持っていく装備やアイテムをそれに最適な物で揃えることができるからだ。
もちろん他の魔物が相手でも紺碧の輪の戦力ならば戦って勝てないわけではない。が、効率を考えればだいぶ落ちるだろう。
我々人間と魔物との戦いは日々激しさを増す一方だ。侵攻する魔物たちから我々の生存領域を死守し、いつの日か魔物を全滅させて平和を勝ち取るその時まで、俺たち冒険者の戦いは終わらない。
一匹でも多くの魔物を倒す。そのために何よりも重視すべきなのは効率なのだ。
このように効率を重視してひたすら同じ魔物を狩り続けるパーティーは多い。
こういうやり方を俺たち冒険者は周回プレイと呼んでいた。
正直、周回プレイで同じ魔物と何度も何度も戦い続けるのは精神的に負担が大きい。機械のように同じ動作を繰り返し、毎回同じタイミングで回復……攻撃……防御。油断すると集中力が切れそうになる。
しかし俺たちの守るべき人々のため、そして我々人間を守って下さる崇高なる【女神カミラ】のために泣き言は言っていられない。
今回のクエストで得られた素材と報酬があればパーティーの装備を更に強化できるだろう。
そして、もっと強力な魔物を討伐して効率を上げて更にパーティーを強化して、もっと多くの魔物を討伐しなければ。
そのためにはやるべき事は山のようにある。休んではいられない。
俺の心は落ち着いていた。
何度、魔物と戦おうと回復のタイミングを間違ったりはしない。
「【麻痺】!!」
俺はフレイムヒュドラが残りHP25パーセントで繰り出す大技を直前の麻痺で封じる。
動けないヒュドラに殺到する仲間たち。
そして、ダリルの突き出した剣がフレイムヒュドラの心臓を貫いた。
ヒュドラの巨体が崩れ落ち地面を揺らす。
「ふいー、一丁上がりっと。おい、ナガト。こいつで何体目だ?」
「ああ。これでちょうど30体目だ」
「がははは、じゃあ今回の目標は達成だな! よお、ダリル、早く街にもどって一杯やろうぜ!」
「賛成よ。早くお風呂に入りたいわ。疲れたから帰り道は私の荷物頼むわね、ナガト?」
ミカヤは荷物の詰まったバックパックを俺に押し付ける。
「ナガト、俺たちの荷物も頼むぜ」
「ほらよ、丁寧に扱えよ」
俺は4人分の荷物を背負う。
ここから街まではまだ結構歩くのだ。
やれやれ、最後に一仕事だ。
俺は片手で魔力回復ポーションの蓋を開けるとその中身を飲み干した。
仕事終わりの乾いた喉にぬるい温度の生臭い液体がしみわたっていく。
「ごくごく、うっぷ……。 【筋力強化】!」
独特の苦みからくる吐き気を堪えながら、自分に魔法を詠唱する。
ミカヤは懐から帳簿を取り出すとそこに棒線を書き込んでいる。これは俺の使った魔力回復ポーションの数を集計しているのだ。
「ふふっ。碌にダメージも稼げない回復役をパーティーに入れてあげているんだから、これぐらいはやってもらわないとねえ?」
「まったくだ。俺たちに感謝しろよ? ナガト」
「ちげえねえ、がっはははは!!」
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