第一章 第六話 どうしてザコ相手に攻撃が当たらないんだよ!
〜勇者ノア視点〜
「おい、トロイ! ハシィ! いったいこれはなんの冗談だ!」
いきなり俺を襲った二人に問いかけるも、子どもたちは何も答えない。よく見ると、二人とも目が死んでいた。
まさか、レイスに取り憑かれたのか。
「はあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
幽霊に取り憑かれた息子は、もう一度俺を攻撃してくる。
くそう! 余計な手間をかけさせやがって! こうなったら、ダメージを与えて追い出してやる!
バキッ!
息子を気絶させようとして、剣を思いっきり振り回した直後だ。足を置いた床が割れ、ヒビが広がると砕けた。
その後、俺は浮遊感を覚える。
視界の先には大穴のようなものが見え、ハシィとトロイの背中も見える。どうやら俺たちは、床を踏み抜いて落下してしまったらしい。
「くそおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
しばらく落下したのち、俺は地下の床に身体をぶつける。
「ガハッ、ゴホッ、オエェ」
背中に激痛を覚えた俺は、直ぐに身体を動かせられない状態に陥っていた。
くそう。何て運が悪い。まさかここまで城の腐食が進んでいるとは思わなかった。
打ちどころが悪かったのか、上手く呼吸ができない。これだけのダメージを受けているのだ。レイスに取り憑かれた二人も正気に戻っているはず。ハシィに回復をしてもらわないとな。
「ハ、ハジィ……じょうぎにもぼっでいるだろう。おべをがいぶくじろう」
くそう。言葉もまともに発音できないじゃないか。
「どうじで、わだじはがらだがいだいの?ヒ、ヒール」
どうやらハシィは正気に戻ったようだ。俺を回復をする様に言うと、娘は自分の回復を優先する。
ハシィが先に自分の回復をしやがる。けれど仕方がない。回復も使える娘が動けないと、俺に回復魔法をかけることできないからな。
回復魔法がかけられるのを待つ。しかし、いつまで経っても俺の肉体が回復することはなかった。
「お、おい! がいぶくはまばか!」
「待って……よ……回復が……いつもよりも……遅いの」
おいおい! なにチンタラやっていやがる! いつもだったらとっくに終わっているころじゃないか! ふざけるんじゃねぇぞ!
「いいがら! はびゃくじろう!」
「分かった……わ……ヒール」
ハシィが回復魔法をかけ、少しずつではあるが、俺の気分はよくなっていく。
まったく、どれだけ待たせやがる! これくらいさっさと終わらせろよ! 気合いが足らないんだ! 気合いが!
「まだ……全然……だぞ……早く……回復を終えろ」
「無茶を……言わないでよ……私の回復も……ろくに終わっていないのだから」
俺たちは時間をかけ、どうにか動けるまでに回復した。
「なぁ? トロイはどこに行った?」
「さぁ? どこかしら? 薄暗くてわからないわ」
俺は首を左右に振る。しかしこう薄暗くては、見つけることも難しい。
くそう。トロイはどこに行きやがったんだ? うん? 今何か踏んだな。
足を前に出すと、俺は何かを踏んづけた。視線を下に向けると、そこには顔面を踏まれたトロイの姿があった。
息子は気を失っているのか、白目を向いており、意識がない。
「トロイのやつ死んだのか?」
「分からない。だけど一応回復魔法をかけてみるね。これで死んでいるのか、生きているのかを判別できるから。ヒール」
ハシィが意識を失っているトロイに回復魔法を使う。
「うーん? あれ? ここは?」
トロイはしぶとく生きていた。意識が戻ったばかりの息子はボーとしている。
「目が覚めたのならさっさと行くぞ! 俺たちは一階に戻る手段を探して、ヘカトンケイルを倒さないといけない」
トロイの首根っこを掴むと、俺は息子を引きずって先に進む。
俺たちが落ちた場所は、地下の広いフロアだった。だが、この先は通路になっているようで、一本道だ。
目が慣れてはいるが、それでも薄暗い。
「ハシィ、魔法で明るくしてくれ」
「分かった。ファイヤーボール」
娘が魔法で火球を生み出すと、周囲が明るく照らされた。しかしいつもとは違い、火球の大きさが小さいような気がする。
「なぁ? いつもと比べて火球が小さくないか? もう少し大きかったような気がするが」
「き、気のせいじゃない? きっと落下したときのショックで、記憶が曖昧になっているのよ。も、元々からこんな感じよ」
火球が小さいのではないかと指摘すると、ハシィは慌てて気のせいだと言う。
いや、どう見ても小さくなっているだろう。以前に洞窟関係の依頼を受けたときは、もっと明るかったぞ。
回復魔法にも時間がかかっていたし、ハシィの魔法の威力が弱くなっていないか? もし、たまたま調子が悪いのではなく、弱体化しているのであれば、いくら娘であったとしても、追放しなければならない。
勇者である俺のパーティーにザコはいらないからな。
「ハシィ減点」
娘に聞かれないようにポツリと言葉を漏らす。
トロイを引き摺りながら歩いていると、前方に扉があるのを発見した。
そうとう古い扉だな。ボロボロで穴が空いている。
空いている穴から覗くと、俺は顔を引き攣らせた。
マジかよ。この奥はレイス共がたくさんいるじゃないか。
「おい、いい加減に自分の足で立ちやがれ」
「あ、すまない親父」
ボーとしているトロイを立ち上がらせると、俺は二人にこの先のことを教える。
「どうやらこの先は、レイスがうじゃうじゃしているようだ。ハシィは聖属性付与の魔法でサポートしてくれ。俺とトロイでレイスを片付ける」
そうだ。今になって思い出してしまったが、レイスには物理攻撃が効かない。幽霊を倒すには、聖属性を付与してもらう必要がある。神の加護を得た得物で攻撃しなければ、レイスを倒すことができないのだ。
「よし行くぞ!」
俺は声を張り上げて扉を開けると剣を構える。
「ゴッドブレス」
ハシィが魔法を唱えると、俺の剣に渦状の空気の流れを感じた。
これでレイスをぶっ倒すことができる。
「喰らえ! 大切斬!」
床を蹴って跳躍すると、上段に構えて剣を振り下ろす。
『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァ!』
幽霊を一刀両断した刹那、レイスは耳を擘くような悲鳴を上げる。そして魔物の身体は霧のように霧散し、消え去った。
よし、まずは一体目だ。
俺はトロイの様子を見る。
息子は俺と同じように、拳に神の加護を得ている。だが、トロイの動きは遅く、全ての攻撃は回避されていた。
トロイのやつ、いつの間にか素早さを下げる攻撃を喰らいやがったな。
「ハシィ! トロイの素早さを元に戻してやってくれ」
「分かったわ。ウイークネスズ・リリース」
ハシィが弱体解除の魔法を唱える。これでトロイの素早さが元に戻り、攻撃が当たる。
そう思っていたが、一向に攻撃が当たらない。
「おい! ちゃんと弱体解除の魔法を唱えたのか! さっきと変わらないじゃないか!」
「かけているわ! でも、なんでお兄様の動きが全然変わらないのよ! こんなの可笑しいわよ!」
叫ぶようにハシィは声を荒げる。
嘘だろう。いったいどうなっていやがる。トロイが鈍足の魔法をかけられたのは間違いない。そうでなければ、アイツの攻撃が全て躱されるわけがない。
特殊なレイスなのか? いや、どこからどう見ても普通のレイスだ。これまで倒してきた奴らと何も変わらない。
くそう。どうして俺たちは急に調子が悪くなってしまったんだよ。
唯一俺だけがレイスにダメージを与えているが、数が数だ。俺一人だけでは捌き切れない。
歯を食いしばりながら突破口を考えていると、奥の方に通路を発見した。
「レイスを相手にしていられない。あそこの通路まで逃げるぞ」
ハシィとトロイに撤退することを告げると、俺は一目散に逃げる。
全速力で走りながら後方をみると、レイスはしつこく俺たちを追いかける。
「くそう! どうしてこうなった!」
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