第一章 第五話 勇者ノアたちのその後
〜勇者ノア視点〜
俺こと勇者ノアは、王様から直々にヘカトンケイルの討伐と、シャルロット姫の救出を命じられた。そこで息子のトロイと娘のハシィを引き連れ、魔物の居る廃城に向かっている。
「まさか、お姫様救出の依頼が来るとはな。これこそまさしく、勇者である俺に相応しい任務だ」
「報酬金は一千万ギル! 報酬金で何を買おうかな! 美容のためのマッサージを受けるでしょう。高いネイルをするでしょう。やりたいことがたくさんあるわ!」
「ヘカトンケイルを討伐し、依頼をクリアした暁には、武闘家としての俺の名声も上がる。そうなれば、そろそろ弟子を取ることも考えてもいいかもしれないな」
トロイもハシィも、既に依頼を終えた後のことを考えている。まぁ、ムリもないだろうよ。ヘカトンケイルなんて魔物は、勇者である俺には通過点にすぎない。まず負けることのほうがありえないからな。
「ヘカトンケイルなんて余裕だ。何せ、今回からウルクがいない」
「確かに親父の言うとおりだな。ウルクがいるせいで、足を引っ張られたことが数えきれないほどある。今回の依頼は、思ったよりも早く終わらせられるかもしれない」
「そうそう。本当に邪魔でしょうがなかったよね! 私のファイヤーボールに自分から突っ込んで大火傷を負うし、サポートに回って強化呪文を唱えたら、間違って敵を強化してしまうし」
ハシィがウルクの失敗談を語りやがった。娘が嫌な思い出話しをしたせいで、俺まで思い出してしまう。
ああ、本当に頭に来るぜ。死んだ弟の息子であるから、俺の温情で今までパーティーに入れてやっていたと言うのに、自分の失敗を認めようとしない。それなのに、失敗以上の功績をあげていると言いやがった。
弱いザコのくせに口だけは達者だ。まぁ、あいつは追放してやったんだ。再び会うことなんてほとんどないだろうがな。
「おい! ハシィ! それ以上ウルクの話しをするな! 聞いているだけでムカムカしてくる」
「ご、ごめんなさい。お父様、私調子に乗っていた」
「ハハ、そう言えば、親父は昔からウルクのことが嫌いだったよな」
ハシィを注意した途端に、息子のトロイがあの男のことを言い出す。
こいつ、わざと言っていないか?
「トロイ、わざと言っているのなら一発ぶん殴るぞ」
「ごめん。無意識に言葉が出てしまった。わざとではないんだ」
たく、こいつらときたら時々調子に乗りやがって。普段は口に出して言わないが、お前らだってアイツと同じだ。俺の子どもだから、パーティーに入れてやっている。もし、俺の機嫌を損ねるようなことを今後してきたのなら、二人とも追放してやるからな。厳しく突き放すことも、親の務めだ。
「それじゃあ話題を変えようよ。討伐対象の魔物を何分で倒せるか賭けない? 当たった人には報酬金の半分が貰えるってことで。私は三十分!」
「お、それは面白いな。では、俺は二十分にしよう」
おいおい、お前ら勝手に話しを進めるなよ! まぁいい。その案には賛成だ。普段はなるべく平等になるように分配しているからな。たまにはこんなのもいいだろう。
「俺は五分だ」
「「え?」」
五分で終わらせることを言うと、トロイとハシィはこいつ正気か? と言いたげな顔をする。
「いやーそれは何でも大きく出過ぎだよお父様。ザコならともかく、相手はへカントケイルなんだよ」
「ハシィの言うとおりだ。まさか、親父は最初から賭けを降りる気なのか?」
はぁ? 何を言っているんだこのボンクラ共は? 俺は勇者だぞ。お荷物がいなくなったことで討伐速度は上がる。それを考慮すれば、いくらへカントケイルでも五分もあれば十分じゃないか。
「お前らこそ何尻込みしているんだ? お荷物がいなくなった以上、討伐速度は上がっていると言ったばかりじゃないか。それを考慮して計算すれば、これくらいに決まっている」
「いやー、私もそれを計算に入れて言っているのだけど」
「俺もだがな」
とんだ腰抜けどもだ。まぁいい。蓋を開ければ俺が正しいことが証明される。報酬金の半分は俺のものだ。
「こんなところで喋っていないで、さっさと廃城に向かうぞ」
俺は歩く速度を早めて、ヘカトンケイルと囚われのお姫様がいる廃城に向かう。
「それにしても見るからに不気味だな」
「そうね。いかにも魔物の巣窟って感じがするわ」
廃城前に到着すると、トロイとハシィが荒廃した城を眺めて言葉を漏らす。
「ザコなんかに構っていられない。一気にヘカトンケイルのいる場所に向かう。聖水を出せ」
「お兄様、聖水だってよ」
「俺は何も持っていないぞ。ハシィが用意していたのではないのか?」
「当たり前でしょう。これまでアイテムを用意したことがないもの」
「俺だって同じだ。アイテムに関してはあの男が用意していたからな」
マジかよ。本当に使えないやつだな。アイツが抜けたのだから、それぐらいの配慮をしやがれ!
くそう。なんてことだ。アイテムを調達しに町に戻れば、依頼失敗とみなされるかもしれない。面倒だが、ここはザコの相手をしつつ、討伐対象の魔物を倒すとするか。
「仕方がない。ザコとも戦うことになるが、マイテムなしで挑むとしよう」
「きっと大丈夫よ。魔法のスペシャリストである私がいるもの。ケガをしても、すぐに治して上げるわ」
「ザコ相手なら怪我をすることなんてないだろう。これまでの冒険で、ケガをしたことなんて一度もないからな」
引き返さないでこのまま城の中に入ることを告げる。すると、ハシィとトロイもそれに賛同してアイテムは必要ないと言う。
「それじゃあ入るぞ」
ボロボロの扉を開けて俺たちは中に入った。
建物の中は予想以上に腐食が進んでいるな。気を付けなければ床を踏み抜きそうだ。
「気をつけろよ。床に嵌ってサンドバッグになったらシャレにならないからな」
「お父様、心配しなくても大丈夫よ」
「親父、心配するな。俺の動きは素早いからな。万が一床が崩れたとしても、嵌る前に可憐に回避してみせるさ」
俺は周辺を見渡す。
さすがに入り口からヘカトンケイルが待ち構えているわけがないか。恐らく、やつは玉座の間にでもいるだろう。城に住み着いた魔物のボスは、大抵そこにいると噂で聞いたことがある。
「とりあえずは他の魔物を警戒しつつ、玉座の間に向かおう」
「分かった」
「魔物が現れたときは任せてくれ親父」
奥に進むことを告げると、俺が先頭になって階段に向かう。すると、階段前の壁にかけられてある絵画から、にゅーっと魔物が現れた。
人間の骨が空中に浮いており、ローブのようなものを羽織っている。だが、骨やローブは半透明だ。。
「やっぱり廃城なんだからレイスの一体や二体はいるよな。だけど、勇者である俺には所詮はザコにすぎない」
鞘から剣を抜くと、俺は跳躍して剣を振り下ろす。
「喰らえ!」
俺の攻撃は魔物に当たり、レイスを両断する。
「どうだ!」
威勢よく声を上げるが、魔物を見た瞬間、俺は信じられない気持ちになる。
ど、どうしてだ! どうして消滅していない!
俺の攻撃は確かに魔物にヒットした。いつものレイス相手なら、一発で倒せる。それなのに目の前にいる魔物は、まるで攻撃が当たっていないように平然としていた。
こいつはいつものレイスとは違うのか? いやそんなことはない。どこからどう見ても、これまで倒してきたやつらと同じだ。
「親父、何をやっている! レイスなんていつも簡単に倒しているじゃないか!」
「言われなくとも分かっている。こうなれば別の技だ! 喰らえ! さみだれ斬り!」
俺は剣の軌道が読まれにくい技で斬りかかる。
もしかしたら当たったと思ったのは勘違いで、避けられていたのかもしれない。だけどこの技はそう簡単には見切られない。
「ぶっ倒れろ!」
俺は剣技を使い、魔物の身体を切り裂く。しかし俺の攻撃は全て無効化されているようで、すり抜けてしまった。
バカな!どうして俺の攻撃が当たらない!
「ガハッ!」
動揺をしていると、俺は背後から攻撃を受ける。
振り返ると、子どもたちが俺を攻撃していた。
いったい、どうしちまったんだ。
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