第四章 第十話 いきなり包囲をしたからびっくりしたじゃないか(最終話)
おいおい、マジかよ。こんな展開になるなんて予想していなかったぞ。
もしかしてマンティコアを町から追い出す前に、一部の建物を壊してしまったから、その責任を取らせにきたのか?
「逃すなよ。何が何でも同行してもらうんだ」
「でも、大丈夫か? あの巨大な魔物を簡単に倒してしまった奴らなんだぞ」
「平気さ、きっと戦闘で疲れている。頑張れば何とかなるはずだ」
どうやら彼らは、俺たちを捕まえたいけれど、実力が分かっているから臆しているようだな。
まぁ、逃げようと思えば逃げられる。彼らに睡眠魔法をかけてもいいし、少し乱暴だけど、メリュジーナがドラゴンになって、空中に逃げるという方法もある。
取り敢えずは彼らの行動を見つつ、判断するとするか。
様子を伺っていると、取り囲んでいる兵士の後ろから一人の男が現れた。
男に気付いた兵士たちが左右に分かれて道を作る。
あの人が着ている服は清潔感があるなぁ。きっと裕福な生活を送っているのだろう。
「私はあの町の町長だ。手荒な真似をして済まない。話を聞きたいのでご同行していただけるだろうか?」
やっぱり、それなりに身分の高い人だったか。話しをするだけなら、着いて行ってもいいかな。やばくなりそうだったら、そのときに逃げればいいし。
「分かった。着いていくよ。俺だけでいいか?」
「いえ、できればお仲間もご一緒願いたい」
俺はキルケーたちに視線を向ける。
「私はウルクに着いていくよ」
「当然着いて行くさ。わたしとウルク君は、縁の糸で繋がっている。離れるなんてあり得ない」
「私は報告をしないといけないのですが、少しでも情報を多く得たいので、着いて行きます」
「分かった」
彼女たちの意思を確認すると、俺は町長と顔を見合わせる。
「分かった。着いて行く」
「そうか。それは安心した」
大人しく着いて行く意思を示すと、彼らの表情が和らぐ。
俺たちは兵士に取り囲まれたまま町に戻ることになった。
「封印されていた魔物から町を守ってくれてありがとう!」
「あなたはこの町の英雄です! 本当に助かりました!」
「隠れながら見ていたけれど、本当にすごかった! ドキドキが止まらなかったよ!」
町の門を潜った瞬間、至るところから町民たちが称賛の声をかけてきた。
俺たちを囲っていた兵士たちがバリケートの役割を果たし、町民たちが近づくのを阻止している。
あれ? 俺たち称賛されているのか?
兵士たちの目が血走っていたから、てっきり町の一部を壊した責任を取らされると思っていた。町民たちも怒っていると思っていただけに、何だか呆気に取られる。
「あのう、俺たちに責任を取らせるために町に連れ戻したのではないのですか?」
「何をおっしゃいますか。あなた様はこの町の英雄です。あなたがいなければ、この町は壊滅していました。そんな方に責任を負わせようものなら、天罰が下ります」
あ、そうなんだ。俺の勘違いだったのか。それは良かった。もし、弁償しろと言われたら、王様に協力して貰わないといけなかったよ。
町民たちから称賛される中、俺たちは大きい建物に案内される。
きっと、ここが町長の家なのだろうな。
建物の中に入ると、テーブルを挟んで高級そうなソファーが置かれてあった。
この部屋の雰囲気からして、応接室なのだろう。
「英雄様たち、どうぞ座ってください」
座るように促され、俺たちはソファーに座る。
「あの魔物は、大昔の英雄様が封印して下さった魔物です。塔の中で厳重に保管して守っていたのですが、先日侵入者に奪われてしまったのです」
侵入者は、きっとエウリュアレなんだろうな。あの女なら簡単に侵入して奪うことも容易にできそうだ。実際に持っていたし、ほぼ間違いないだろう。
「侵入者を捉えることに成功したのですが、奴らは既に水晶を持っておらず。行方が分からない状態でした。まさか、この町で封印が溶けてしまうとは予想外でした」
あれ? 俺の予想が外れてしまったな。そう言えば、エウリュアレは三バカと言っていたな。彼女に騙されて塔に侵入してしまった哀れな人がいたのだろう。
その人のことを考えると同情してしまう。いったいどんな人たちだったのだろう。
「ですが、封印された魔物が倒されたことで、一安心をしております。これで魔物のことを気にしないで生活することができます。本当にありがとうございます」
町長はもう一度俺たちに頭を下げる。
「これはほんの礼です。お納め下さい」
町長は横に置いてあったバッグから札束を取り出すとテーブルの上に置く。
この分厚さからして、百万ギルはないか? ギルドの依頼でもないのに、お金をもらって本当に大丈夫なのだろうか?
「申し訳ありません。何せ王都と比べるとそこまで大きくない町ですので、これが精一杯なのです」
俺が戸惑っていると、町長が急に謝ってきた。
どうやら、勘違いをさせているみたいだな。ここは素直に受け取ったほうが、彼も安心するだろう。
「勘違いをさせて申し訳ないです。ギルドの依頼でもないのに、お金を受け取ってもいいのかなぁと思いまして」
「何をおっしゃいますか。キルドの依頼でなくとも、町を救って下さった英雄様に謝礼を払うのは当然のことです」
「わかりました。では、受け取らせてもらいます」
俺は札束を受け取ると収納した。
すると、人生ダイスが現れ、サイコロの出目に文字が浮かぶ。
次の目的地は決まった。
さぁ、行こう。導かれるまま最後は幸せになろう。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ここまで読んで下さった方には大変感謝をしております。
物語の区切りがついたので、一旦完結とさせてもらいます。
どうして物語を途中で終わらせたのかと言うと、私のもう一つの連載作品である『Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房になって困る』が、カクヨムの方でそれなりに人気があり、サイトが更新する度に総合ランキングが上がっているからです。
なので、こちらの方に集中して、作品の質を上げて行こうと思いました。
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