第四章 第六話シャルロット姫の正体は◯◯でした。
「本当の私は国王の娘ではありません。私は王様の護衛任務をしている裏組織のアサシンなのです」
「アサ……シン」
シャルロット姫の語った真実に、俺は一瞬言葉を失う。
「なるほど、アサシンだったのか。だからあんなに暑そうなローブに武器を仕込んでいたんだ。隠された武器から推理すべきだったなぁ」
俺とは違い、キルケーは納得したようで何度も頷く。衝撃的な告白なのに動じないのは、彼女が異世界から来た転生者だからなのだろうか?
「私は王様の命令で、娘としてお姫様を演じておりました。このことを知っている人はほんの一握りしかいません。この町に来たのも、王様からの指示です『塔の見張りが何者かによって倒された。水晶が奪われていないかの確認をしてほしい』そう命じられ、この町に来たのです」
「ウルク君、塔と言うと」
「ああ、人生ダイスに示された『塔のある町に迎え』は、やっぱりこの町であっていたんだ」
人生ダイスが向かうように指示を出したのはこの町で間違いない。だけど、ここで俺に何をさせようとしている? シャルロット姫の任務と何か関係があるのか?
そんなことを考えていると、俺の疑問に答えるかのように人生ダイスが現れる。そして回転を始めて床に落ちた。
「闇に落ちた神から生み出された魔物と戦い、英雄となる」
サイコロの出目に現れた文章を読み上げる。
「えーと、つまり、ウルク君が何かの魔物と戦って英雄になることを指し示しているってことでいいのかな?」
メリュジーナの問いかけに、俺は無言で頷く。
メリュジーナの言うように、多分そうなのだろうな。問題なのは、どこでそのような場面に直面するかだ。
ミノタウロスと戦ったときは、事前に準備ができたから、上手く対応することができた。
だけど、今回は場所が記載されていない。そのせいで、いつ、どこで人生ダイスに書かれたことが実際に起きるのかが分からない。
「メリュジーナ、君の未来予知で何かわかるか?」
メリュジーナに訊いてみると、彼女は首を横に振る。
「さっきから発動させようとしている。だけどこのスキルは気まぐれだから、今は何も見えない」
メリュジーナのスキルで詳細を知ることはできないか。これは困ったな。
「あのう、これは何が起きているのでしょうか?」
現状を理解していないシャルロット姫が、困惑しながら訊ねてくる。
「ああ、これは俺のオートスキルなんだ。このダイスが現れると、出目に書かれたことが百パーセント俺の身に起きる」
「つまり、ウルクの未来は確定されてあり、ダイスに書かれたことが絶対に起きると言う訳だ。彼が君を助けたのも、ダイスの導きによるものさ」
俺に続いてキルケーも説明に加わる。
「なるほど、それで皆さん真剣になって考えていた訳ですね」
「もしかしたら、俺がシャルロット姫と再会したのも偶然ではないかもしれない。シャルロット姫がさっき言っていた、水晶の確認はもうしているのか?」
「いえ、これから塔に行こうとしたところで、ウルク様と出会ったのでまだです」
「よければ着いて行ってもいいか? もしかしたら、人生ダイスの指示と関係があるかもしれない」
「分かりました。私も気になりますので良いですよ」
俺たちはシャルロット姫の任務に同行し、宿屋を出ると町中を歩く。
「あのう、シャルロット姫」
「呼び捨てで良いですよ。もう姫ではないことを知っているので。それに私が姫ではないことを話した途端に、敬語を辞めたじゃないですか」
「あ、そう言えば気付かないうちに敬語をやめていたな」
「シャルロット、ちょっといいかな?」
「はい何ですか?」
シャルロットと話していると、キルケーが会話に割って入ってきた。
キルケーも彼女と話したいことがあるのだろう。シャルロットの相手はこのまま任せようかな。
「どうしてシャルロットは王様を守るアサシンなのに、ヘカトンケイルに捕まっていたのさ。足だって早いはずだろう? 私には捕まってしまうビジョンが思い浮かばないのだけど?」
キルケーのやつ、俺が心の中で思っても口に出さなかったことを訊きやがったな。彼女なりのプライドとかがありそうだったから、敢えて避けていた話題なのに。
「それはとてもお恥ずかしいことなのですが、任務の帰り道、私は財布を落として一文無しになっていました。お腹が空いてまともに動けないところを、ヘカトンケイルに攫われたのです。幸い目撃者がおりましたので、その人がお城の兵士にでも話してくれたのでしょう。お陰で私はウルク様に助けてもらい、今もアサシンとして活動することができています」
「なんだ。行き倒れだったのか。理由が少ししょうもないな」
「行き倒れになった異世界転生者が言えることかよ」
「異世界……転生?」
「いや、何でもないんだ。気にしないでくれ」
危なかった。つい、口走ってしまったけれど、キルケーが異世界から来た転生者だと紹介したら、きっと混乱するに決まっている。ここは余計なことを言わないようにしないと。
『あら、こんなところで再会するとは思ってもいなかったわ。だけどラッキー! ワタシの幸運はズバ抜けているわね』
歩いていると、聞き覚えのある声が聞こえ、俺は立ち止まった。
「ウルク、あそこ!」
先に見つけたキルケーが指を差す。
彼女の指が向けられた場所を見る。身体のパーツ一つ一つがとても美しく、まるでこの世の男の妄想を具現化させたかのような絶世の美女が、屋根の上に立っていた。
「エウリュアレ!」
「ワタシの名前を覚えてくれて嬉しいわ」
「どうしてエウリュアレが生きているんだ! 君は私とウルク君が倒したはず!」
メリュジーナが叫ぶ。
やっぱり、エウリュアレは生きていたか。彼女の『これは終わりではなく始まりよ。別れではなく出会い。次はこうはいかない』と言う言葉が引っかかっていた。
『本気でワタシを倒したと思っていたの? もしそうならおめでたいわね。ワタシは死なない。死ぬことができないのよ。封印されていたことがその証拠よ』
エウリュアレは俺を見下ろす。
『この前と同じことを言うわ。ウルク、ワタシの仲間になりなさい。ワタシにはあなたが必要なの』
「この数日で俺の考えが変わると思っているのか。答えはノーだ」
『そう。まぁ、返事は予想がついていたから別にショックは受けないわ。前回と同様に、力づくで言うことを聞かせてあげる。ミノタウロスのときにはいかないわ。いでよ。マンティコア!』
エウリュアレは持っていた水晶を天高く掲げる。すると水晶にひびが入って割れた。遠くてよく分からないが、水晶の中には何かが入っていたようだ。
水晶に入っていたものはどんどん大きくなり、本来の姿だと思われる大きさにまで膨れ上がった。
毛色は赤く、尾は蠍に似た形状。口には三列に並ぶ鋭い牙があり、顔と耳は人間に似ている。
「あの特徴からして、マンティコアってあのマンティコアなのかい? 私の知っている伝説よりも何倍も大きいじゃないか!」
キルケーが驚くのもムリはない。現れた魔物は、三階建の建物と同じ大きさだった。
『さぁ、マンティコア。哀れな人間どもを駆逐しなさい!』
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