第四章 第五話 どうしてあなたがここにいる?
「もしかしてシャルロット姫様ですか?」
俺はぶつかった女性に訪ねる。
金髪の髪に青い瞳。そして美しい顔立ちが印象的な女の娘は、あのシャルロット姫に酷似していた。
彼女はぶつかった拍子に外れたフードを被り直し、小さく頷く。
「え、ちょっと」
まさかの再会に驚いていると、彼女は俺の腕を引っ張って路地裏に連れて行く。
「シャルロット姫、いったいどうしたのですか?」
訊ねると、シャルロット姫は俺を壁に追いやり、両手をついて逃げ道を塞ぐ。
「ウルク様、ごめんなさい。私がここにいることは内緒にしてくれませんか?」
「それはどうして?」
「詳しくはお話しすることができません。ちょっとしたお忍びで来たと思ってください」
ちょっとしたお忍びと言われてもなぁ。さすがにムリがあると思う。
お忍びにしては、ローブで街中を歩くのは似つかわしくない。
「あのう、どうしてローブなんかを着ているのですか? お忍びにしては、かえって怪しく見えますよ」
「いや、これはちょっと寒くて」
「額から汗が出ていますよ。暑いはずですよね」
「人の揚げ足を取らないでください!」
怒るってことは、やっぱり暑いのですよね? どうして暑いのを我慢してまで、ローブを着ているのだろう。
「いた! ウルク見つけたよ。こんなところに……って壁ドンされている!」
「状況から考えると、襲われているのだよね。ウルク君から離れろ! でなければ、この槍で貫く!」
なんちゅうタイミングで二人が合流してくるんだよ。このままではシャルロット姫が、メリュジーナに刺されてしまう。
「待て! この人はシャルロット姫だ」
「え! シャルロット姫なの! 女の娘に壁ドンされるなんて、誰得の展開なの!」
「どうしてシャルロット姫様がこんなところに? お城で休養されているはずじゃ?」
「どうして、ウルクさんは私の正体をしゃべってしまうのですか! こうなったら口封じをさせてもらいます」
俺から離れるとシャルロット姫は二人のところに走る。
口封じって言ったけれど、シャルロット姫はもしかして。
このままじゃ二人が危ない。
「デバフロール」
スキルを発動して俺はダイスを振る。
とにかく成功させなくては。魔力操作は最低限だ。
判定ダイスに魔力を送り、出目を操作する。
合計四十三。成功だ。
「スリープ!」
睡眠魔法をシャルロット姫に使う。魔法が発動すると、彼女は眠ってしまったようで地面に倒れた。
「ウルク君、いったい何が起きたの? どうしてこんなところにシャルロット姫様が?」
「分からない。俺もさっき再会したばかりなんだ」
「とにかく、この暑そうなローブを脱がせよう。見ているこっちが汗を掻きそうだよ」
キルケーがシャルロット姫のローブを脱がす。
「うわー、マジか。まるで暗殺者だね」
シャルロット姫の着ていたローブの内側には、小型ナイフや短剣などが隠されてあった。
「どうしてシャルロット姫様がこんな物を? とにかくウルク君に何があってはいけないから、私が預かっておこう」
メリュジーナが、隠された凶器をローブから取り外す。
「それで、シャルロット姫はどうするのだい? さすがにこのまま放置しておくわけにもいかないだろう?」
「当たり前だ。宿屋を探して彼女を寝かせよう。目が覚めたら、色々と訊かないとな」
俺は眠っているシャルロット姫を抱き抱えると、宿屋を探した。
しばらく歩くと、宿屋を見つけた。中に入って部屋を借り、ベッドにシャルロット姫を寝かせる。
これでよし、あとは彼女が目を覚ますのを待つとするか。
彼女を寝かせて一時間が経過した。
「お、どうやら目が覚めたようだね」
シャルロット姫の寝顔を覗いていたキルケーが、目が覚めたことを言う。
どうやら目が覚めたようだな。それじゃあ色々と話を聞かせてもらうとするか。
「シャルロット姫、ご気分のほうは宜しいでしょうか」
「えーと、は……い」
上体を起こしながら俺の問いに答える。
どうやら目が覚めたばかりで、まだ頭が働いていないようだな。ここは脳が完全に覚醒する前に訊いておこう。
「すみません、どうしてシャルロット姫はローブの内側に凶器を隠し持っていたのですか?」
「それは……って、どうして教えないといけないのですか!」
おっと、どうやら寝惚けている状態から、情報を引き出すことには失敗してしまったようだ。
「おっと、私たちにそんな態度をとってもいいのかなぁ? 人質……いや、このナイフたちがどうなってもいいのか?」
シャルロット姫が教えないと言うと、キルケーはメリュジーナからナイフを一本取った。
「教えないと言うのならそれでもいい。その場合はこのナイフを砕き、鉄屑にするまでだ」
キルケーよ。いくら何でもそんなのでシャルロット姫が口を割るわけがないだろう。
「お願い! 全てを話すから、ナイフを破壊しないで!」
ええー! ナイフを人質に取ったらあっさり白状しちゃったよ!
「まさか、それもテンプレと言うやつなのか?」
「いや、これは何となく気分で悪役を演じてみただけだ。テンプレとかは関係ない。偶然とは言え、話を聞くことができてよかったじゃないか。それじゃあ、話してよ。そしたら預かった得物は返すから」
「わかりました。皆さんには、私が一国の姫と言う認識を持っておられるかもしれませんが、皇族の血を引きてはいません。私は王様の娘ではないのです私は――」
「待って!」
シャルロット姫の話の途中で、キルケーが止めに入る。
いったいどうしたんだ?
「待ってね。今、シャルロット姫の正体を当てて見せるから。えーと、えーと、こういうパターンのファンタジー作品って何かあったかなぁ? 何かあるはずなんだけど」
額に手を置きながら、キルケーは考えている。
「ダメだ。全然思い出せない。間違っていたら恥ずかしいから、話を続けてよ」
おい! 話の腰を折っといて、結局は当てられないのかよ!
「すみません。シャルロット姫、続きを話してもらえませんか?」
「わかりました。私の正体は――」
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