第三話 ガーディアンなんかに負けない! エウリュアレさん、俺に愛の力を!
〜勇者の息子トロイ視点〜
俺ことトロイは、開いた壁から現れたやつを見て身構える。
あれは石像か?
俺たちの前に現れたのは、翼の生えたドラゴンの形を模した石像だった。
「ははは、驚かせやがって、あれだけでかい音を出しておいて現れたのはただの石像だとはな」
親父が笑いながら石像に近づく。
どうしてこのタイミングで石像なんかが出て来た?
疑問に思っていると、石像の尻尾が動く。
「親父! 危ない!」
「ぶほおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
危険であることを知らせるも、油断していた親父は石像の尻尾で叩かれ、壁に激突する。
「親父!」
「お父様!」
「ガハッ、ガハッ、ゴホッ!」
親父は一度床に崩れ落ちるも、よろよろと立ち上がる。口から血を吐き、顔は血が付着して汚らしい。
「ハシィは親父を回復させろ! その間に俺がこいつを食い止める」
父親の回復を妹に任せ、俺は石像の方を向く。
動く石像か? いや、ドラゴンの像と言うことはガーゴイルだろうな。きっと水晶を守るガーディアンの役割なのだろう。
ウルクのやろう、こんなものまで用意していやがるとは。
だけど、そんなことはこの際どうでもいい。俺がやるべきことは、こいつを倒して水晶を持ち帰ること。
ガーゴイルを見ながら俺は口角を上げる。
何でだろうな。不思議なことに、全然怖くない。きっとエウリュアレさんが俺のことを守ってくれているんだ。
今の俺はまさに怖いもの知らずの無敵状態だ。
「食らえ! 爆裂……」
俺は構えをとって、最初から必殺技を放つ準備をする。
「波! え? ぐはああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
構えて爆裂波を放とうとした瞬間、俺の身体はガーゴイルの尻尾に当たり、そのまま吹き飛ばされた。そして親父と同様に壁に激突する。
「お兄様!」
「おのれ、人が必殺技を放とうとしたところで攻撃をしやがって! 普通は待つものだろうが!」
よろよろと立ち上がり、一歩ずつ前進する。
「俺のことはいい、ハシィは親父の回復に専念しろ」
俺はガーゴイルを睨みつける。
まさかガーゴイルが、必殺技を放つときは攻撃をしてはならないと言う暗黙のルールを知らないとは驚きだ。
だけど、それなら別のやり方で戦えばいい。
「必殺技を待てないようであれば、素早く動いてダメージを与える!」
俺はフットワークを活かしてガーゴイルに接近する。
ガーゴイルは再び、尻尾を使って薙ぎ払う。
あまい。そんな攻撃、二度と通用しないぞ。
体勢を低くしてやつの一撃を躱す。
「既にお前の攻撃は見切った! 俺には通用しな……グヘエエエエエエエエエエエエエエエエエエエェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!」
敵の攻撃を交わした瞬間、背中に激痛を感じた。俺の体はそのまま吹き飛ばされ、再び顔面を壁にぶつける。
俺としたことが、一度攻撃を避けて油断してしまった。だけど、ここで負ける訳にはいかない。俺にはエウリュアレさんの笑顔を守ると言う重大な任務がある。このまま倒れる訳にはいかない。
腕に力を入れて立ち上がり、ボロボロになりながらもガーゴイルに近づく。
「負ける……訳には……いかない。義理の兄弟……として……ウルクの……非道を……許す訳には……いかない」
こうなってはもう、最後の手段を使うしかない。俺の身体がどうなろうと構わない。だから、エウリュアレさんの笑顔を取り戻させてくれ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
雄叫びを上げながらガーゴイルに駆け寄る。走りながら構え、爆裂波を叩き込もうとした。
「え?」
その瞬間、俺は何かに躓いて転んでしまう。
くそう。やはり、走りながらの爆裂波は無理があったか。
「お兄様危ない!」
ハシィの声が聞こえ、俺は顔を上げる。
ガーゴイルが俺を潰そうとしていた。
「親父! ハシィ! あとは頼んだ!」
全てを諦め、俺は両目を瞑る。しかし、数秒経っても俺の意識は消えなかった。
これはいったい。
俺は閉じていた瞼を開ける。すると目の前には、巨大な棘付き鉄球に押し潰されたガーゴイルの姿があった。
「あれはモーニングスター。いったいどこから?」
顔を左右に振り、周囲を伺う。すると、塔の壁が破壊されていた。
外から飛んできたのか。でも、いったい誰が?
破壊された壁の前に移動して外を眺める。しかし、塔の周辺には誰もいなかった。
もしかして、神様が助けてくれたのか?
「よっしゃあ! ガーゴイルを倒したぞ! これも愛による奇跡だ! エウリュアレさん! あなたへの愛が、俺に勝利を与えてくれました!」
大声で叫び、潰されたガーゴイルの前に戻る。そして俺は石造の頭を踏みつけた。
「ざまぁ! ウルクよお、お前の用意したガーゴイルはこのとおりだ。俺たちの前では、こんなものオモチャにすぎない」
安全になったと確信した俺は、何度もガーゴイルの頭を踏みつける。もちろんあいつの顔を思い浮かべながらだ。
「やったわね、お兄様」
「まさか活躍の場をトロイに奪われるとは思わなかったがよくやった」
親父の回復が終わったらしく、二人が俺のところにやって来る。
「早く水晶を回収して、エウリュアレさんに渡しに行こうよ」
「そうだな」
台座に置かれた水晶を掴み、俺たちは塔の外に出る。すると、とても美しい女性が俺の視界に映る。
「エウリュアレさん。どうしてこんなところに?」
俺は水晶を持ったまま彼女に駆け寄る。
「どうしても気になって来ちゃった。もしかしてそれって」
エウリュアレさんが俺の持っている水晶に視線を向ける。
「取り返して来ましたよ。これで合っていますよね?」
彼女に訊ねながら、俺は水晶をエウリュアレさんに渡す。
「ええ、合っているわ。ありがとう」
礼を言われ、俺は本当に良かったと思う。これで彼女が笑ってくれるのだから。
「本当に助かったわ。これで、ウルクを私の仲間に引き込むことができる。協力してくれてありがとう。三バカさんたち」
「え?」
予想できなかった言葉に、俺は惚ける。すると、一瞬にして彼女の姿が消えた。
な、何が起きた? 水晶を渡したら消えた? いや、そんなことは今はどうでもいい。ウルクを仲間に引き込む? どう言うことなんだ?
「おい、どう言うことだ!」
「何でエウリュアレさんは消えたの?」
「分からない。彼女に水晶を渡したら『協力してくれてありがとう。三バカさんたち』と言って消えた」
「それって、もしかして!」
ハシィが気づき、事実を口にしようとしたタイミングで、俺は妹の口を手で押さえる。
「いたぞ! 通報どおりだ!」
妹に続きを言わせないでいると、見張り役の男たちと同じ服装をしたやつらが現れた。奴らは俺たちを囲むと、ジリジリと距離を詰めて来る。
「え、え! これってどう言うこと!」
「分からない。だけど言えることは、俺たちはヤバイ状況下にあると言うことだ」
俺の手を外すと、ハシィが戸惑いの声を上げ、親父が悪い状況にあることを説明する。
「逃がさないからな! この犯罪者共」
「犯罪者だと!」
「そうだ! お前たちには暴行罪、器物損壊、そして窃盗の罪で拘束させてもらう。かかれ!」
男の一人が号令を出すと、一斉に俺たちに襲い掛かる。
くそ! いったい何が起きていると言うんだ。だけど、ここで捕まる訳にはいかない。エウリュアレさんに真相を教えてもらうまでは。
「こんなところで捕まってたまるか!」
俺は襲って来る男たちを次々と殴り、地面に倒す。
「道が開いた! 親父、ハシィ全力で逃げるぞ!」
親父と妹に逃げることを告げると、俺は一番に駆け出す。
「逃すな! 絶対に取り押さえろ!」
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