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第三章 第九話 復活のエウリュアレ

 〜エウリュアレ視点〜




 うふふ、うふふふ、そろそろいいかしら?


 私ことエウリュアレは、私を倒した人間とフェアリードラゴンの気配が離れて行くのを確認したあとに、閉じていた瞼を開けた。


「あの二人は見えるところにはいないわね。あーあ、せっかくのお洋服が台無しだわ。これ、結構気に入っていたのだけどなぁ」


 ボロボロになった洋服を見ながらも、私は口角を上げる。


「この威力、やっぱり彼は私の求めている人材だわ。なんとしても手駒に加えないとね」


 だけどまた挑んだところで返り討ちに遭うのは目に見えている。ここは彼の情報を集めて弱点をつく必要があるわ。


「ひとまず、着替えてから情報を集めましょう。姉と妹と再会ができたのなら、彼女たちにも手伝ってもらうのがいいわね」


 私は力を使い、一瞬にして遠くに離れた町に移動した。そして洋服屋入ると、気に入った服を掻っ払う。


「封印されていた間に随分と時代が変わったみたいね。お洋服も素敵だったし、見たこともない新しいデザインの装飾品もたくさんあるわ。この町を観光したいところだけど、まずは彼か、姉妹に関する情報を集めないと」


 私は人差し指を顎に置く。


「そうね。日も暮れ始めていることだし、まずは酒場に向かうとしましょう。あそこならたくさんの情報が手に入るだろうし、美味しいお酒も飲むことができるわね」


 そうと決まれば善は急げ。早く酒場に向かいましょう。


 この時代のお酒は美味しいのかしら? 楽しみだわ。


 戦いに負けたことなんて忘れ、私は楽しい気分になりながら酒場に向かう。


「どうやらここね。看板のマークは昔から変わらないようだわ」


 扉を開けて中に入る。開店したばかりの時間帯であるはずなのに、お店の中は賑わっていた。


 へぇー、結構人がいるわね。これは期待しても良さそう。


 首を左右に振り、客たちを見る。


 さてと、取り敢えず誰と話して情報を得ようかしら。


「ガハハハ! それにしてもこの間のメリュジーナは傑作だったよな。この俺との勝負に負けて、土下座しやがっていい気味だ! 一角ウサギを五匹しか倒せないくせに、勇者である俺に盾突いたからああなるんだよ」


「親父の言うとおりだ! 弱いくせに俺たちを侮辱しやがって! でも、あの土下座シーンは見ものだったよな」


「ブスに加えて弱いだなんて可哀想だったよね。でも、お父様を侮辱したのだから仕方がないわね」


 うん? あのおじさん、メリュジーナって言わなかったかしら? メリュジーナって確かフェアリードラゴンのことよね。もしかしたらいきなり当たりを引いたかもしれないわ。まずはあの三人組から話を聞きましょう。


 私は念のために警戒をしつつも、彼らに近づく。


「そこのあなたたち、ちょっといいかしら」


「何だ? かなりの別嬪(べっぴん)さんじゃないか? 俺たちに何か用か?」


「あら、いきなり褒めてくれるだなんて嬉しいわね。あなただって中々イケているじゃない。渋いおじ様は好きよ」


 私は思ってもいないことを口にする。


 彼らの話を聞いている限り、この三人組はバカだ。だから嘘でも褒めれば、気分をよくして口から情報を漏らしてくれるかもしれない。


「お、さすが別嬪さんだけあって見る目があるじゃないか。それで何か用があるんだよな」


「ええ、相席しても宜しいかしら?」


「どうぞ、どうぞ! 今、他のテーブルから椅子を用意しますね」


 一緒のテーブルを使っていいかと訊ねると、おっさんではなく、青年のほうが返事した。そして彼は急いで立ち上がると、隣のテーブルから椅子を用意してくれた。


 うふふ。この感じだと、あの子は私に一目惚れをしたようね。だけどこればかりは仕方がないわ。だって、私たちゴルゴーン三姉妹は、全ての男の妄想を具現化した姿ですもの。


 寧ろ、私の容姿を見て、綺麗すぎて不気味と言ったウルクの方が可笑しいのよ。


「どうぞ、お座りください」


「ありがとう」


 私は青年が用意した椅子に腰をかけると、会話を切り出す。


「あなたたち、先ほどメリュジーナのことを話していなかった?」


「あなた、あの女のこと知っているの?」


 三人に訊ねると、少女が聞き返す。


「ええ、ちょっとした縁があってね。彼女、ウルクとか言う人と一緒に行動しているわ」


「プッ、ダハハ、ダーハハハハハ!」


「アハハハハ、マジかよ。あの女ウルクと一緒にいやがるのかよ」


「アハハハ! ザコ同士お似合いね。あーお腹が痛い」


 彼女はウルクと一緒にいることを告げると、三人はいきなり笑いだす。彼らを見た瞬間、私は再び口角を上げた。


 当たりどころじゃないわ。大当たりよ。まさかウルクのことを知っている人物にいきなり出会えるだなんて。私の幸運は桁外れね。


「あのね。私、ウルクのことが知りたいのよ。よければ話を聞かせてくれないかな?」


 彼のことが知りたい。そう伝えると、青年は顔色を変えてムスッとした。


 あら、あら、私としたことが失敗したわ。あの言い方では勘違いをされてしまうわね。


「ウルクはやめたほうがいいわ。将来のことを考えるのなら、もっといい男を探したほうがいい」


 今度は少女のほうが私を心配する。


 これはちょっと厄介なことになってしまったわね。早く軌道修正をしないと、情報をもらえなくなるかもしれないわ。


「勘違いをさせてしまってごめんなさい。別に彼に恋愛感情を持っているわけではないのよ。ちょっと彼の情報が欲しくて」


「何だそうだったのか」


 ウルクに対して恋愛感情がないことを告げると、青年の顔が綻ぶ。


 この男、直ぐに顔に出るわね。扱いやすそうだわ。使い捨ての駒には持ってこいかもしれないわね。


「俺はあの男の話をしたくない。トロイかハシィ、どっちでもいいから話してやれ」


「それじゃあ俺が話すよ」


 おっさんが話をするように促すと、青年がウルクのことについて話してくれた。


 ふーん。そうなんだ。これは使えるわね。


「ウルクのことについて話してくれてあり……がとう」


「おい! いきなりどうした!」


「どうしたの?急 に涙なんて流して」


 私は演技で涙を流した。すると青年と少女が慌てだす。


 いい食い付きね。これなら上手く誘導できるかもしれないわ。


「ごめんなさい。ちょと、思い出したことがあって。私、ウルクに酷いことをされたから」


「何だって! あのクソザコがあなたに何をしたんだ!」


 酷いことをされたと言うと、予想通りに青年は身を乗り出して聞いてくる。


「あのね。私が大事にしていた水晶をウルクに奪われてしまったの。そしたら彼は、この町の先にある塔に隠したと言って。私、取り返しに行ったのだけど、塔には厳重な警備がされていて中に入ることができないのよ」


 嘘泣きをしながら作り話しをすると、思いっきりテーブルが叩かれる。


「あのクソザコが! こんなに美しい女性になんてことをしやがる。男の風上にも置けない」


「お兄様の言うとおりよ。同じ女として許せないわ」


「親父! ここで出会ったのも何かの縁だ。俺たちで塔に向かって、水晶を取り替えしてあげないか!」


 青年の言葉に、おっさんは胸の前で腕を組んだまま、しばらく黙っていた。


「親父?」


「そうだな。身内が迷惑をかけてしまったんだ。親戚として俺たちが尻拭いをしてやる必要がある。俺たちで水晶を奪い返してやろう」


「あり……がとう」


 嘘泣きをして言葉を詰まらせたふりをしながら、私はニヤリと笑みを浮かべる。


 作戦成功。この三バカを利用してあの水晶を手に入れることができれば、ウルクにリベンジをすることができる。


 今度は女二人を始末して、ウルクを私の仲間に引き込んでみせるわ。


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