第三章 第八話 緊急クエストクリアしました
〜ウルク視点〜
「そう、私は竜と妖精を親に持つフェアリードラゴン! ダーリンは渡さない!」
メリュジーナが勇みよく吠える。エウリュアレを捉えるために手を前に出した。
『捕まるものですか』
危険を察知したようで、エウリュアレは俺から離れたようだ。背後から彼女の気配がしない。
『変に詳しい魔女にフェアリードラゴンの女が相手だと、今の手駒では分が悪いわね。また大岩に封印されたら困るわ。だから、撤退させてもらうわね』
エウリュアレが両翼を羽ばたかせて空に舞い上がる。
『じゃあね。戦力を整えたら、また君のところ来るから、それまで元気でね』
どんどん遠ざかって行く。あの距離では、遠距離攻撃をしたところで躱される。
「ダーリン乗って」
メリュジーナが背中に乗るように言う。俺は彼女の背中に飛び乗った。
「しっかり捕まってね」
メリュジーナが両翼を羽ばたかせて上空に舞い上がると、飛び去って行くエウリュアレを追いかける。
「待て!」
『やっぱり追いかけてくるわよね。わかっていたわ。だけど、今回ばかりは逃げさせてもらうわね』
エウリュアレが両翼を羽ばたかせた瞬間、羽が抜けると俺たちに向かって来る。
「避けるからね。振り落とされないように!」
左右に動いたり、上昇や下降をしたりして彼女の羽を避ける。
『本当にしつこいわよ! いい加減にしなさい』
「それはわたしたちのセリフだよ。いい加減に倒されろ!」
飛行速度を速め、メリュジーナはエウリュアレとの距離を縮める。
「ダーリン、わたしが牽制する。その間に彼女を倒してくれ」
「わかった」
「喰らえ! ファイヤーブレス!」
メリュジーナが口から火炎を吐き、敵の進路を妨害する。
「今だ! 攻撃ダイスロール!」
ダイスを振り、魔力でコントロール。この場に適した魔法を発動させる。
威力は少し高めで良いだろう。確実に逃げられないように機動力を奪う。
威力判定ロールの結果、一と四で十四だ。これくらいなら問題ないはず。
「ウエポンカーニバル&ウエポンアロー!」
空中に数多くの得物を配置し、避けられないように一斉射撃を行う。
『きゃああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
全ての武器がヒットすると、ダメージを受けたエウリュアレは真っ逆さまに落ちる。
「わたしたちも降りよう」
落下した彼女を追い、俺たちは大地に降り立つ。
「いた! あそこにある大岩に背中を預けている」
メリュジーナが発見すると、俺は大岩を見る。
あの傷ならまともに動くことができないだろう。だけど、念のために警戒をしつつ近づかないとな。
俺はゆっくりと彼女に近づいた。
『まさか。ここまでコテンパンにされるとは思ってもいなかったわ。今回の敗因は、あなたたちを見くびっていたことね』
「その傷ならもう助からないな」
『そうね。でも、これは終わりではなく始まりよ。別れではなく出会い。次はこうはいかないのだから』
「待て! それはどう言う意味だ!」
死に際に意味深なことを言い、俺は彼女に問う。しかし返答が帰って来ることはなかった。
これが終わりではなく始まりとはどう言う意味だ? いったい何が始まろうとしている。
「ダーリン大丈夫? 顔色が悪いよ」
「ああ、問題ない。ちょと、考えごとをしていた」
メリュジーナが俺を心配してくれたので、彼女に余計な気遣いをかけないように大丈夫と言う。
うん? ダーリン? そう言えば、戦闘中にも何度か俺のことをそう呼んでいたな? どう言うことなんだ?
「メリュジーナ、どうして俺のことをダーリンなんて呼んでいるんだ?」
「え? わたし、ウルク君のことダーリンって呼んでいたの!」
俺の問いに彼女は驚く。
「もしかして、無意識に言っていたのか?」
「そうみたい。だけどどうして? 意識して言おうとしたら、言葉が詰まってしまったのに」
「待て、待て、どう言うことなのか説明してくれ。どうして俺のことをそんなふうに呼ぶ!」
「あのね。実は――」
俺はメリュジーナから、未来予知で見えた光景のことを教えてもらう。
マジか。俺、将来的には彼女と結婚するのか。
「そ、そう言う訳だから、ウルク君のことをダーリンと呼んだわけなんだ」
「そうだったのか」
メリュジーナを見ると、彼女と目が合う。結婚相手だと認識した瞬間、どう接してあげれば良いのかがわからなくなり、視線を逸らす。
「と、とにかく戻ってキルケーたちと合流しよう」
「そ、そうだね。それじゃあ乗ってよ。ダーリン」
背中に乗るように促され、俺はドラゴンとなっている彼女の背中に乗る。
「それじゃあ、出発するよ。振り落とされないようにしっかりしがみついてね」
彼女の背中にしがみつき、キルケーたちのところに帰った。
竜の背中から降りると、彼女は人の姿に戻る。
「ウルク、エウリュアレは!」
大地に降り立つと、キルケーが駆け寄って俺に訊ねる。
「一応倒した……と言っていいのかな?」
「何だい? 歯切れが悪いじゃないか」
「いや、エウリュアレが最後に意味深な言葉を残しやがったんだ。それがどうしても引っ掛かってしまって」
「ダーリン、大丈夫だよ。多分あの女が適当なことを言ったにすぎないって」
「「ダ、ダーリン!」」
メリュジーナが俺のことを特別な呼び名で言う。するとそれを聞いたキルケーとギルドマスターが驚きの声を上げた。
「ウルク! ダーリンってどう言うことなんだ! 説明をしてくれ!」
怖い顔をしながらキルケーは俺に詰め寄る。
前にも似たようなことがあったような気がする。だけど、どうして彼女はこんなに怒るんだ?
「ちゃんと説明をするから離れてくれ。そうじゃないと、落ち着いて話すことができない」
距離を空けるように言うと、キルケーは一歩下がって俺から離れる。
まだ近いけれどまぁいいか。
俺はメリュジーナから聞いた話をキルケーたちにも話す。
「ふーん、なるほど。事情は把握した。だけど、その未来予知は本当のことを見せているのかなぁ?」
「わたしのスキルを疑っているのかい?」
「だって、君が見たと言う映像ではミノタウロスが災害級の魔物だったのだろう? だけど実際はそうではなかった」
キルケーの言葉に、メリュジーナは悔しそうな顔をする。
「でも、確かにあのときはそんな風に見えたんだ。未来とは違ったことが起きた。これはつまり、キルケーがミノタウロスを予想したことで、予知とは違うことが起きてしまったと考えられる」
「私が悪いとでも言いたいのかい! 何なら、君を豚に変えても良いんだよ」
「やれるものならやってみてよ。その前に黒焦げにするから」
「ちょっと待った! こんなところで歪み合うなよ」
このままではまずい。そう思った俺は、彼女たちの間に入って仲裁する。
「「ふん!」」
二人は顔を背けて互いを見ようとはしなかった。
「とりあえず、この件に関しては保留にしよう。メリュジーナも無闇に俺のことをダーリンとは呼ばないでくれ。まだ結婚していないのに誤解されたらまずい」
「わかったよ。でも、二人っきりになったときぐらいは、ダーリンと呼ばせてもらうからね」
ふぅ、これでどうにか丸く収まってくれたかな。
俺はチラリとギルドマスターを見た。
「おっほん。今回は三人ともよくやってくれた。お前たちのお陰でこの町は救われた。緊急クエストクリアだ。報酬金は改めて明日渡そう。今日は身体を休ませるのだ」
ギルドマスターが依頼クリアを宣言すると、俺たちから離れて行く。
「さて、俺たちも帰ろうか」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
『面白かった』
『続きが気になる』
『この続きはどうなるの! いつ更新される!』
と思って下さったら、広告の下にある☆☆☆☆☆から作品の応援をお願いします。
面白かったら星五つ、つまらないと思ったら星一つで構いません。
あなたの思った素直な気持ちで評価をしていただけると嬉しいです。
右下にあるブックマーク登録もしてくれたら嬉しいです。
何卒よろしくい願いします。




