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第三章 第六話 迷宮のミノタウロスは狂化で強化します

『オレのご飯になれ!』


 誰がお前の腹の中に収まるかよ。


「ライトウォール」


 ミノタウロスが斧を振り下ろしたと同時に、俺たちの前に球体の光の壁が現れる。


 刃と壁が接触した瞬間、反動で敵の得物が弾かれた。


 ふぅ、ギリギリだったけれど、どうにか間に合ってくれてよかった。あの女に気づかれないでサイコロを振るのは大変だったよ。


『攻撃……届かない……どうして? そんなはず……ない』


 ミノタウロスは屈強な腕で斧を振り回し、何度も光の壁を破壊しようと試みる。


 ムダだ。その程度の腕力なら、この防御壁は突破できない。


ウルク(ピグレット)、助かったけれどこれからどうするのだい?」


「守りに入っていては攻撃できないよ。ダ……ウルク君」


 キルケーとメリュジーナが尋ねてくる。


「安心しろ。ちゃんと考えてある。攻撃ロール」


 スキルを発動してサイコロを振る。出目にはファイヤーボールと表示された。


 続いて威力判定のダイスを二つ振る。十の位は四になった。


 成功確実になったな。ボーナスはつかないけれど、牽制には十分だ。


 続いて一の位のダイスが止まる。結果は九だった。


 四十九で成功だ。


「ファイヤーボール」


 天井に複数の火球が出現すると、ミノタウロスに降り注ぐ。


『邪魔を……するな!』


 牛の仮面をつけている魔物は、握っている斧を振り回す。すると火球が真っ二つになった。


「斧を振り下ろした瞬間に出る気圧の変化を利用して、風を生み出して掻き消したか。野生の感かもしれないけれど、中々やるねぇ」


 ファイヤーボールを回避するミノタウロスを見て、キルケーが分析する。


 正直、キルケーの言っている意味がよく分からない。だけどこれで、あの魔物は火球を避けることに必死なはず。


「今からライトウォールを消す。その間に散開してくれ」


「わかったよ」


「ダ……ウルク君の指示に従う」


「了解した。自分の身ぐらい自分で守ってやるさ」


 防御壁を消すと、俺たちは散らばった。


 ミノタウロスの攻撃を観察した限りだと、やつは近距離攻撃しかできない。ならば、一定の距離を取りつつ、遠距離から攻撃をすれば倒せれるはずだ。


 今、最後の火球が掻き消されようとしている。魔法が消えた瞬間に攻撃だ。


「攻撃ロール」


 火球が消されたタイミングに合わせ、ダイスを振る。


 魔力を送り、四面ダイスには狙い通りの魔法が出目に現れる。


 よし。さっきは牽制することが目的だったから、威力を抑えていた。だけど今度は倒すことが前提だ。本気でいかせてもらう。


 判定ロールの十面ダイスを投げる。魔力を送り、十の位をゼロ、一の位を五にした。


 クリティカルだ。こいつを喰らえ!


「パップ!」


 音の魔法を発動すると、ミノタウロスの立っていた床が砕け、石礫(いしつぶて)が飛び散る。


『グオオ!』


 無数の石礫を浴びたミノタウロスは床に倒れ、隙だらけとなった。


「今だ!」


「行け! 柱のピグレット!」


「わたしの槍を受けるがいい」


 合図を送ると、キルケーとメリュジーナが一斉に攻撃をする。


 豚が激突し、メリュジーナの槍が魔物の心臓部に突き刺す。


「やったか」


「メリュジーナ! それフラグ! 絶対に言ってはいけないやつだ」


 メリュジーナの言葉に、キルケーが過剰に反応する。


 キルケーのやつ、どうしてそんなに焦っているんだ?


 不思議に思っていると、ミノタウロスの指がピクリと動くのが見えた。


「メリュジーナ危ない!」


 叫んだと同時に魔物は立ち上がり、彼女に斧を振り下ろそうと構える。


「柱のピグレット!」


『ブヒブヒブー!』


 キルケーが叫ぶと豚が飛び上がり、魔物の腹部に体当たりした。


 攻撃を受けたミノタウロスは、その場で尻餅をつく。


 よかった。どうにか難を逃れた。だけど、どうしてミノタウロスは死ななかった。メリュジーナの槍は、確かにあいつの心臓を貫いたはずだぞ。


 これには何かあるはずだ。そのカラクリを見つけない限り、やつを倒すことができない。


『ウフフ、抵抗してもムダよ。ミノタウロスは絶対に倒すことができない』


 心臓を貫かれても動き続ける魔物の原因を探っていると、人間離れした美しい女性が、倒すことは不可能だと言う。


 そんなはずはない。不死身の魔物なんてものは存在しないはずだ。


ウルク(ピグレット)! 不死身のパターンにはいくつかある! 多分今戦っているのは偽物だ! 本体は別のところに潜んでいる!」


『どうしてそのことを知っているのよ!』


 本当に倒す敵は別にいるとキルケーが言う。すると、美しい女性が図星を刺されて驚いた。


「いやだって、ファンタジーの定番じゃないか? よく使われてあるパターンだけあって、すぐにピンと来たよ」


 再び、キルケーが異世界の言葉で訳の分からないことを言う。だけど、これで突破口が見えたな。


「ミノタウロスの本体を探すぞ」


『させないわ! ミノタウロス! 狂化しなさい』


『ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』


 人間離れした美しい女性がパチンと指を鳴らした。その瞬間、ミノタウロスは雄叫びを上げる。


 魔物の筋肉が膨れ上がり、身体全体も少しだけ大きくなった。


『ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』


 ミノタウロスは雄叫びを上げながら斧を振り回す。


 身体能力が強化されているようだな。攻撃速度が上がっている。


「バフロール」


 スキルを発動してサイコロを振り、望みの魔法が出るように操作。狙い通りに瞬足の魔法が出目に現れる。


「続いて判定ロール」


 威力判定のダイスを振る。もちろん狙うはクリティカルだ。


 十の位はゼロ、一の位は四。クリティカル発生。


「スピードスター」


 瞬足の魔法を唱え、ミノタウロスの目の前に移動する。


「そんなへなちょこの攻撃、当てられるものなら当ててみろ」


『ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』


 俺の挑発に乗り、魔物は無雑作に斧を振り回す。


 斧を振り下ろすと、床に着く前に振り上げてきた。


 やっぱりな。不死のカラクリが見えてきた。


「こいつで終わりだ! 攻撃ロール」


 再びスキルを発動してダイスを振り、先ほど使った音魔法をもう一度使う。


 続いて威力判定だが、これは絶対に失敗してはいけない。狙うはもちろんスーパークリティカルだ。普通のクリティカルでは、威力が小さすぎて敵に気づかれる恐れがある。


 真のダブルヒット!


 二つのダイスを同時に魔力操作し、ゼロと一のスーパークリティカルを発生させた。


「パップ」


 音の魔法が発動した瞬間、この部屋が崩壊していく。


 それと同時にミノタウロスの姿も消えていった。


 魔物が消えたことで、俺たちを閉じ込めていた迷宮は消失する。気がつくと平原に戻って来ていた。


 最後まで読んでいただきありがとうございます。


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