第三章 第五話 迷宮の主と人間離れの美しい女性
〜ウルク視点〜
「ダ……ウルク君こっちだ」
メリュジーナに導かれながら、俺はキルケーと合流を目指す。
弱体解除の魔法が効果を発揮しているようだな。メリュジーナは、迷いなく先頭を走ってくれている。
「ほら、あそこ」
メリュジーナが指を差し、俺は視線を奥に向ける。
いた! ゴーレムだ。
キルケーが水圧か、音の魔法を使えと言っていたな。ならば、まずは音の魔法だ。
「攻撃ロール!」
スキルを発動させ、三つのダイスを出す。先に四面ダイスを振り、望みの魔法が出るように魔力でコントロールする。
よし、狙い通りの魔法になった。次は判定ロールだ。
赤と青の十面ダイスを振る。こっちも魔力でコントロールし、成功するように導く。
十の位は四、一の位は二。四十二で成功だ。
敢えてクリティカルボーナスにはしなかったけれど、これで倒せれるはずだ。
「ゼイレゾナンス・バイブレーション!」
魔法が発動し、標的と同じ周波数を送り込む。するとゴーレムの身体は砕け、粉々になった。
「よし! ゴーレムは倒した。キルケー大丈夫か!」
「ウルク! 私は大丈夫だ。ギルドマスターも無事だよ!」
通路からたくさんの柱がある部屋に入ると、分断された二人と合流した。
「本当によかったよ。分断されたときはどうしようかと思っていたけれど、早く再開できて本当によかった」
嬉しそうな表情をすると、キルケーは俺の手を握る。
「また分断されるかもしれないからね。今度は初めからウルクの手を握っておかないと」
「そうだね。キルケーの言うとおりだ」
彼女に続き、メリュジーナまでも俺の手を握る。今の俺は両手に花の状態だ。
「えーと、そうなると俺はどっちの手を握ればいい?」
ギルドマスターがどっちの手を握ればいいのかを尋ねる。すると、キルケーが無言で杖の先端を彼に向けた。
「キルケー? それって、ギルドマスターは杖を握っておけってことなのか?」
「そうだよ! 私の手を握っていいのはウルクだけだからね」
「またこのパターンかよ! どうしてそんなに手を握らせてくれないんだ! 別にいかがわしいことをするわけじゃないんだぞ! メリュジーナはわかってくれるよな?」
「ダ……ウルク君。早くミノタウロスを探そう。こんなところで足止めをされていては、他の魔物に町が襲撃されるかもしれない」
「お前まで無視かよ! こうなるのなら、俺もギルドマスターの誇りなんか無視して逃げ出せばよかった」
ギルドマスターの嘆き声を聞き、俺は苦笑いを浮かべる。
どうして二人は、ギルドマスターに対してあんな態度を取るのだろうか?
「なぁ、どうしてギルドマスターに冷たい態度を取るんだ?」
どうして彼に対してあんな扱い方をするのか、気になった俺は小声でキルケーに尋ねる。
「それはね。ヒロインはヒーロー以外の男と話していけないと言う、裏ルールがあるのだよ。多分メリュジーナも直感的に悟ったんじゃないのかな?」
キルケーに訊いた俺がバカだった。また意味の分からないことを言い出しただけじゃないか。何だよ、その裏ルールってのは!
心の中で呟いていると、メリュジーナが俺の腕をグイグイ引っ張って先に進む。
彼女にとってあの町は生まれ育った場所だからな。一秒でも早く、ミノタウロスを倒したいのだろう。
だけど、俺はミノタウロスよりも、あいつに跨っていた女のほうが気になる。災害級指定の魔物であるミノタウロスを、馬のように扱っていた。彼女はいったい何者なんだ?
「なぁ、キルケー。ミノタウロスに跨っていたあの女のことなんだけど」
「ウルク、まさかあの女を見て惚れたなんて言わないだろうな!」
「何だと! ダ……ウルク君、それは本当なのか!」
キルケーの発言に、なぜかメリュジーナが反応する。そして怖い顔をして俺を見た。
「どうしてそうなるんだよ。確かに人間離れした美しさがあったけれど、綺麗すぎて逆に不気味だ。俺の好みではない」
「そうか。ウルクのタイプではないのか」
「それはホッとした」
どうしてキルケーだけではなく、メリュジーナもホッとするんだよ。
「どうしてウルクばかりモテるんだ。俺だってギルドマスターとして頑張っているのに、会話を成立させてくれない。作戦なのに手を握らせてくれない。どうしてこうなる」
俺から少し離れた場所を歩いているギルドマスターが、ぶつぶつと何かを言っている。
急にどうしたのだろうか? 何か気になることでもあるのだろうか?
「ギルドマスター、どうかしたか?」
「何でもない! ちょっとした嫉妬だ!」
ギルドマスターが羨ましそうな顔をしながら俺を睨んでくる。
どうして俺を睨むんだよ。俺は別に何も悪いことはしていないじゃないか。
何でみんなと合流できた途端に居心地が悪くなるんだよ。こうなったらさっさとミノタウロスを倒して、この迷宮から脱出しよう。
俺は歩く速度を速め、まだ行ったことのない通路を歩く。
「ウルク。まぁ、話しは逸れてしまったが、現状では何とも言えないのが本音かな。異世界の神話を参考にしても、ミノタウロスと関連性のある美女は思い付かない。彼女と出会ってもう少し特徴的なものが分かれば、分かるかもしれないけれどね」
「なるほどなぁ。わかった。何か気づいたことがあったら教えてくれ」
「もちろんだよ」
しばらく通路を歩いていると、大きい扉を発見した。
「大きい扉だな。キルケー、もしかして」
「ああ、ボス戦の予感がするよ。この先にミノタウロスとあの女がいる可能性が高い」
「分かった。戦闘になったらまずは俺が隙を作る。その間にギルドマスターとメリュジーナは攻撃をしてくれ。キルケーはサポートを頼む」
皆んなに作戦を伝え、扉を開ける。
すると、四つん這いになっているミノタウロスと、それに跨っている女が待ち構えていた。
『あら、一人か二人はここに辿り付くと思っていたけれど、まさか四人全員が生き残っているとは思ってもいなかったわ』
『人間……ご飯……オレ……我慢できない』
『まだダメよ。お預け。そこのあなた』
人間離れした美しさを持つ女性が俺に視線を向ける。
「何だ?」
『あなた、面白いスキルを持っているわね。サイコロで魔法を使うだなんて』
「見ていたのか!」
『ええ、ワタシの魔眼は透けて見ることができるのよ。あなた、ワタシの仲間にならない?』
「なん……だと」
いったいどう言うつもり何だ? 俺を仲間にしたいだなんて。
予想外の言葉に動揺していると、俺の前にキルケーとメリュジーナが立つ。
「ウルクは渡さない」
「ダ……ウルク君はお前のような気味の悪い女は、タイプではないと言っていたよ」
『き、気味が悪い……このワタシが……気味が悪い』
メリュジーナの言葉が心に刺さったのだろう。人間離れの美しさを持つ女は、その場で固まったように動かなくなり、歯切れの悪い言葉を漏らす。
『そんな訳がない……ワタシは……気味が悪くなんかない! 化け物なんかじゃない!』
数秒の時が経ち、人間離れした美しい女は、感情を昂らせて声を荒げる。
『ミノタウロス! あの男だけは捉えなさい。残りの三人は食べていいわ!』
『ご飯! 人間……食べる』
人間離れをした美しい女性が、四つん這いになっている男から飛び降りる。
ミノタウロスは二本足で立ち上がり、床に置いていた斧を掴む。そして一気に距離を詰めると、斧を振り下ろした。
『オレのご飯になれ!』
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