第三章 第四話 ラビュリントスのミノタウロス
〜キルケー視点〜
私ことキルケーは、ウルクとメリュジーナの二人と分断され、現在はギルドマスターと一緒にいる。
あーあ、どうして私はウルクと分断されてしまったのだろうか。本当に運が悪い。
「なぁ、キルケー?」
今ごろあっちはどうしているのかな? 作戦通りに手を繋いでいるのだろうか? ああもう! メリュジーナが羨ましいよ。
「キルケー、俺の声が聞こえているか?」
メリュジーナは手を繋いでいるだけで、それ以上のことはしていないと言っていたが、何が起きるかわからない。それに、ラノベ系の物語なら、ヒロインとの親密性を上げるために、絶対に何かが起きる。ああ、早くウルクと再会したい。
「頼む、無視しないでくれ」
今ごろラッキースケベな展開になっていないか? メリュジーナが足を滑らせて転けそうになったところをウルクが支えるけれど、本人まで足を滑らせてメリュジーナのスカートの中に顔を突っ込んだりとか……って、何で私はこんな妄想をしているんだよ! 彼がそんな無様なことになる訳がない。どちらかと言えば、最強無双系だろう。
「なぁ! 頼むから俺の話を聞いてくれ!」
「もう! うるさいな! 私はウルクと離れて気が立っているんだ! 話しかけないでくれよ」
「だけど、それじゃ何かがあったときに教えることができないじゃないか」
うう、確かにギルドマスターの言うとおりだ。だけど、今は彼と話すような気分じゃない。でも。危険察知に遅れて彼にケガをさせてしまったら、ウルクに使えない女扱いをされるかもしれない。それだけは絶対に回避しないと。こうなったら妥協するか。
「わかった。でも、会話は成立させないからな。一方的に話しかけてくれ。私は独り言を言う」
「わかった。それでいい。それで話なんだけどよ、さっきから俺たち、何かにつけられていないか?」
つけられている?
私はその場で止まり、耳を澄ませる。すると、後方から足音が聞こえた。
流石にウルクたちじゃないよね。それだったら様子を伺うようなことをしないで、合流してくるはずだ。
そうなると、この足音は敵である可能性が非常に高い。
「私が何とかする。ギルドマスターはあの柱の影にでも隠れていて」
先にある大きな柱に隠れるように言うと、彼は小走りで柱に向かっていく。
「うわあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
柱に向かったギルドマスターが、急に叫び声を上げる。
彼は尻餅をついており、口をパクパクしていた。
『侵入者発見、これより排除する』
「魔物! 柱に化けていたのか」
柱が魔物という設定は、ゲームとかではよく見るけど。まさか異世界でもこんな感じの魔物がいるなんて思わなかったな。
「ピッグイズピグレット!」
柱の魔物に豚化の魔法を使う。
魔物は、柱から生えた腕でギルドマスターを殴ろうとしていた。しかし拳が届く前に魔法の効果が発動し、柱の魔物は丸々と太った豚に変わる。
ふぅ、どうにか間に合ってよかったよ。でも、これで終わったわけじゃないから油断しないようにしないと。
振り返り、足音が聞こえた方をもう一度見る。
「コソコソとしていないで、出てきたらどうだい? それとも今の魔法を見ておじけついちゃったのかな?」
挑発してみると、足音の正体がやって来る。岩が集まり、人の形を形成している魔物だった。
「見た目からしてゴーレムだよね。君はどっちだい? 命の石のようなものを嵌められて、仮初の命を与えられたパターンかい? それともこの迷宮の主である、ミノタウロスの魔力で動いている操り人形のパターンかな?」
魔物に問いかけてみるも、奴は何も答えない。
無口のようだね。さて、どうしようか。アイテム型式の場合、核となるものを破壊すれば動きを止めてくれるだろう。だけど魔力で動くタイプなら、砕いて倒さない限り攻撃し続ける。
ああ、どうして女神様は、私を最強系主人公タイプにしてくれなかったのだろう。最強系なら、こんなゴーレムも直ぐに倒すことができると言うのに。
私に水の魔法が使えたのなら、水圧で穴を開けることができる。他にも音の魔法が使えたのなら、空気の振動で対象物の強度を上回れば、音による空気の振動だけで岩を壊すことだって可能なんだ。
たくさんの物語を読んで得た知識で、複数の対処方法が分かると言うのに、私はそれが使えない。
どうやってゴーレムを倒そうか?
悩んでいると、先ほど豚に変えたピグレットがゴーレムに突っ込む。
豚が当たった瞬間、ゴーレムの足の一部が砕けて魔物は転倒した。
「うっそ! 信じられない!」
まさか私の豚がこんなに強いとは思わなかった。
うん? 待てよ。これが私の本当の能力ってことなのか? ただ豚に変えるだけじゃなく、魔物の特徴を引き継いだ豚になる。もしそうだとしたら、今戦っているピグレットは柱の魔物の頑丈さがあると言う訳だ。
「行け! 柱のピグレット!」
私の合図に反応し、豚はゴーレムに突進していく。
今のうちに、ゴーレムを分析しないと。
敵の間合いに入らないように気を付けつつ、魔物の周囲を走る。
外側にはアイテムが取り付けられている感じがしないなぁ。内部にある可能性も否定はできないけれど、ここは操り人形タイプとして考えたほうが良いかもしれない。
そうなると、柱のピグレットではどうしようもないよなぁ。
「キルケー! どこにいる! ギルドマスターは無事か!」
どうしようか考えていると、ウルクの声が響いた。
そう言えば、ここの迷宮は声が響いて離れていてもお互いの声が聞こえるのだったね。
「ウルク! ギルドマスターは無事だ。今、ゴーレムと交戦中。ほんの少しだけ苦戦しているかな?」
「今どこにいる!」
「柱がたくさんある小部屋だ」
「ダ……ウルク君、その小部屋は通ったことがある。私は道を覚えている。こっちだ」
メリュジーナの声が聞こえる。彼女の口振りからして、もしかして迷宮の魔力を遮断して、方向感覚が元に戻ったのだろうか?
それなら先に先手を打っていたほうがいいだろうね。
「ウルク! 水圧の強い魔法か、振動の強い音の魔法が使えるかい?」
「わかった。任せろ!」
これでゴーレムを倒せれる。あとは、ウルクが来るまで時間稼ぎだ。
「さぁ、柱のピグレットよ! ゴーレムの足止めをするのだ!」
私の指示に従い、柱のピグレットがゴーレムに突進する。しかし魔物と激突する前に、ゴーレムは急に粉々に砕け散った。
その光景を目の当たりにした私は、ニヤリと口角を上げる。
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