第三章 第三話 戦闘開始するが、直ぐに分断させられました。作戦どおり
翌日の早朝、俺たちは町から離れた場所で魔物を待ち構える。
「ここの場所か。あのエセ勇者と勝負したのを思い出すなぁ」
「早朝だからか、濃霧で先が見えないね。ミノタウロスが来たとしても、直ぐに認識は出来なさそうだ」
キルケーの言うとおり、霧が濃いせいで先が見えない。だけど逆に、相手からも俺たちの存在がギリギリまで気づかれないというメリットもある。
「霧は俺たちの味方しかならない。俺には探査魔法を使うことができる。洞察ロール」
スキルを発動して三つのダイスを出現させる。四面ダイスを振り、魔力で操作して探査魔法を確定させた。
探査魔法だから普通に成功させるだけでもいいけれど、相手は災害級の魔物だ。念には念を入れてクリティカルにしておくか。
「威力判定ロール」
十面ダイスを振り、二つのサイコロにも魔力操作で威力をコントロールする。
十の位はゼロ、一の位は二。クリティカルだ。
「エコーロケーション!」
探査魔法を発動させ、前方に向かって超音波を飛ばす。
これはどう言うことだ? 強い反応が二つ帰ってきた。
「ギルドマスター! 封印されていた災害級の魔物は二体いたのか?」
「二体! そんな馬鹿な! 町に伝わっている話では一体のはず」
なんだと! それじゃあ、もう一つの反応はいったい何なんだ!
敵が二体というのは計算外だ。もう一つの反応も片方と同等……いや、それ以上に強い。俺の探査魔法は、反応の強さで相手がどれだけ強いのかを認識することはできるが、容姿を知ることができない。
「作戦を一部変更する。今からここら一帯の霧を吹き飛ばして相手を確認するぞ! 攻撃ロール」
再び三つのダイスを魔力操作して、狙った技と威力にする。
「ウインドウ!」
風が吹き、俺たちを覆い隠していた霧を吹き飛ばす。すると、こちらに近づく二人組が見えた。
一人は牛の仮面を被り、四つん這いになりながら歩いている筋肉隆々の大男。そしてもう一人は、男の背にまたがっている美しい女性だ。身体のパーツ一つ一つがとても美しく、まるでこの世の男の妄想を具現化させたかのような絶世の美女。
『うふふ。人間を見つけたわよ、ミノタウロス。ご飯が見つかってよかったわね』
『ゴハン、ゴハン……オレ……お腹空いた。人間……食べる』
『なら、どうするのか分かっているわよね』
『逃げられないように……閉じ込める……ラビュリントス』
二人組が俺たちを見て何かを言い出した瞬間、地面から壁が飛び出した。その壁は次々と現れ、俺とキルケーを遮るように間に出る。
「分断された。作戦を開始する」
俺はまだ分断されていないメリュジーナの腕を握って引き寄せると、静まるのを待つ。
体感で五分ぐらい経過しただろうか。先ほどまで平原だったのが嘘のように、辺りは石壁の通路と化した。
「本当にキルケーの言ったとおりになってしまったな。これもテンプレとか言うやつなのか?」
「おーい! キルケー! この声が聞こえるかな?」
メリュジーナが口元に両手を持っていくと、大声を出してキルケーの名を呼ぶ。すると、いたるところから声が反射して彼女の言葉が何度も返ってきた。
「聞こえるよ! だけどどこに居るんだい! 四方八方から声が聞こえるから、正確な場所が分からないのだけど!」
キルケーから返事が返ってくる。だけど、彼女が言ったとおり、いたるところから声が聞こえてくる。そのせいでキルケーの居場所が特定できない。
「一応お互いの声は聞こえるから、気づいたことがあったら教え合おうよ。私の方でも何か分かったら情報を提供するから」
「分かった。まずは合流するのに適していそうな場所を探そう」
メリュジーナと手を繋ぎながら迷宮を進む。
これもキルケーの助言だ。一度分断されたからと言って、これ以上何も起きないと言う保証はない。各個撃破されないために、なるべく引っ付いている必要がある。
「それにしても、どうしてウルクと分断されて私の相棒がギルドマスターなんかになるんだよ! いいかい、この杖を握らせてやるから、私には指一本触れるなよ。私の手を握っていいのはウルクだけだ」
「ああ、分かったよ」
歩いている間も、キルケーたちの声が丸聞こえだな。まぁ、どこから声が聞こえているのか分からない反面、彼女たちに何かあったら直ぐにわかるのが救いだ。
「メリュジーナ! ウルクと一緒にいることをいいことに、身体を密着させていないよね!」
「当たり前だ! ダ……ウルク君とは作戦どおり手を握ってはいるが、それ以上のことはしていない」
キルケーのやつ余裕があるなぁ。分断されて離れ離れになったと言うのに、自分の心配をしていない。これも異世界からの転生者ならではの知識と言うやつか。
そんなことを考えながらも、俺はメリュジーナと先に進む。
「あれ? ここさっきも通らなかったかな? ダ……ウルク君?」
「そうか? 周りが似たようなものばかりだから、同じところを歩いているのか判断できないな」
「絶対同じところを歩いているよ。ほら、あそこの柱は根本が少しだけ欠けているじゃない? わたしはあれと同じものを数分前に見た。同じような欠け方をしているのは、どう考えても可笑しい」
そんなに細かいところを見ていなかったから気づかなかったな。だけど俺は曲がった道を覚えている。頭の中でマッピングをしているが、同じ道に繋がるルートはないはずだ。
これは何かがあるな。
「キルケー! どうやら俺たちは同じところを歩いているみたいだ。そっちはどうだ!」
「私たちのほうも同じだ。今、見覚えがあるものを見つけた」
俺たちは気づかない間に、同じところを彷徨っている。これが脱出不可能と言われている迷宮の力か。
「きっと魔力で脳に異常を生じさせているのだろうね。例えば左に曲がろうとすると、脳にある嗅内皮質と言うものが、これを処理して向いている方向を変えるんだ。それに応じて目的地の方角を調整する必要があるのだけど、送り込まれる帰巣シグナルというものの量が少ないと、体の動きに脳が追いつかずに方角の調整を失敗してしまうのだよ。それにより、進むべき方向を間違ってしまう」
「キルケー! もっと分かりやすく教えてよ!」
分かりやすく説明するようにメリュジーナは求める。
「これでもなるべく分かるように教えたつもりなんだけどなぁ。つまりは、魔力によって脳と身体にズレが生じてしまったんだよ。それが原因で正確な情報が身体と共有されなくなり、方向音痴になってしまっているってわけ」
「それならそう言えば良いじゃないか!」
メリュジーナが怒るが、彼女の気持ちも分かる。
「ごめんよ! 私がどれだけできる女なのかウルクにアピールしたくて」
「とにかく、弱体化させられたってことでいいよな。それならバフロール」
スキルを発動させてダイスを振り、魔力を操作。そして判定ロールは成功するように軽く調整する。
「ウイークネスズ・リリース」
弱体解除の呪文を唱え、俺とメリュジーナに送り込まれる魔力を遮断した。
これで道に迷わなければいいのだけどなぁ。
「よし、取り敢えずはこれで先に進んでみよう」
「うわあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
先に進もうと言った瞬間、ギルドマスターの絶叫が迷宮中に響く。
「ギルドマスターに何かあった! 急ごう!」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
『面白かった』
『続きが気になる』
『この続きはどうなるの! いつ更新される!』
と思って下さったら、広告の下にある☆☆☆☆☆から作品の応援をお願いします。
面白かったら星五つ、つまらないと思ったら星一つで構いません。
あなたの思った素直な気持ちで評価をしていただけると嬉しいです。
右下にあるブックマーク登録もしてくれたら嬉しいです。
何卒よろしくい願いします。




