第三章 第二話 落ちこぼれのメリュジーナ
「どこにもいないな」
ギルドを出たきり帰って来ないメリュジーナを、俺は捜索している。
勘違いをさせるような言い方をしてしまったのは悪いけれど、どうして戻って来てくれないのだよ。これじゃあ謝れないじゃないか。
走りながら辺りを見渡し、メリュジーナを探す。
彼女はフェアリードラゴン。龍のツノと尻尾があり、特徴的な見た目だ。目立つので直ぐに見つけられると思っていたのだけどなぁ。
「こうなったらスキルで探すか。洞察ロール」
スキルを発動して三つのダイスを出現させると、四面ダイスのほうが先に回転を始める。
狙うは探索魔法だ。
魔力をコントロールして狙った魔法のところでサイコロの動きを止める。
「よし、狙い通りだ」
続いて威力判定を決める十面ダイスが回転した。先ほどと同じように魔力でコントロールする。
「十の位は一、一の位は五、十五で成功」
洞察ロールの場合は、数字が少ないほど精度が上がる。これでメリュジーナのだいたいの居場所がわかるはずだ」
「エコーロケーション!」
両手を前に出して探査魔法を使う。すると、俺から放たれる超音波に対して、人でも魔物でもない反応が返ってきた。
クリティカルではないから確実性はないけれど、多分これはメリュジーナだ。
「あの時計塔か」
この町の象徴とでも言える建物を見上げ、俺は走ってその場所に向かう。
体感で十分ほど走り、扉を開けて中に入ると階段を駆け上がった。
いた! やっぱり時計塔だったか
「メリュジーナ見つけたよ。こんなところにいたんだ」
「この声はダ……ウルク君。どうしてここが分かったのだい?」
「ああ、それは俺のスキルで見つけたんだ」
「そうか、凄いんだね。わたしとは大違いだ」
スキルで見つけたことを説明すると、なぜか彼女は憂いた表情をした。
「さっきも説明したけれど、わたしはね。竜と妖精のハーフなんだ。二つの種族の能力を引き継いでいる。だけど、落ちこぼれなんだ。何年も努力して頑張っても、未だに竜の姿に変身することができない。それに槍だって上手く使うことができないんだ。この前も挑発に乗って勝負をして、惨敗してしまった」
会話をしている間も、メリュジーナの表情が暗くなっていく。
確かに努力しても結果が出ないことはとても辛いよな。人によっては耐えきれないものだ。
「さっきはこの町を守りたい想いで、自分を鼓舞した。だけどここで夕日を眺めていたら、冷静になって怖くなった。落ちこぼれのわたしが災害級の魔物に挑んだところで勝てるわけがない。例えダ……ウルク君が災害級の魔物を倒したところで、わたしは死んでいるに違いない」
夕日を眺めてアンニュイな気持ちになってしまったのだろうな。不安な気持ちになるのも分かる。だけど、気持ちで負けていたら勝利なんてものは掴み取ることができないのも事実だ。
俺はメリュジーナの腕を引っ張って抱き締める。
「メリュジーナは絶対に死なせない。この俺が守ってみせる! だから安心しろ。何があっても俺が見つけてやるから」
「ダ……ウルク君」
「それにメリュジーナは落ちこぼれなんかじゃない」
「え!」
俺の言葉に彼女は驚いた声を出す。
「本当の落ちこぼれと言うのは、抗うことを止めて負けを認めて何もしないやつだ。だけどメリュジーナはこれまで膨大な時間を使って努力をしてきた。その費やしてきた時間は、才能を開花させるのに十分なはずだ。あとは方向性の問題、努力の仕方を変えれば、君は必ず羽ばたくことができる」
「ほん……とう?」
「ああ、実現できるように俺が側に居て上げる。だから、もう自分を落ちこぼれなんて言うな」
「うん。ありがとう」
顔を上げてメリュジーナは礼を言う。彼女は笑みを浮かべていた。
「それじゃあギルドに戻ろうか。作戦会議もしないといけないし」
日が沈みつつある中、俺たちはギルドに戻る。
「遅い! いつまで待たせるんだ! もう夜になってしまったじゃないか」
帰って来るなり、キルケーが声を上げて俺たちを叱る。
「遅くなってしまったのは悪いと思っている。だけど、色々とあったんだ」
「ダ……ウルク君は悪くない。悪いのはわたしだ。だから叱るのであれば、わたしだけにしてくれないか?」
「叱っている時間があるくらいなら、作戦会議に時間を費やす。だからこれ以上は何も言わない」
「ありがとう。それでは作戦会議をやり直そうか」
作戦会議をもう一度することを言うと、全員が真剣な表情をした。
「ウルクがメリュジーナを探している間に、私はミノタウロスのことを思い出していた。きっと分断させられる。だからそのことを前提に話を進めよう」
「分断だって?」
「ああ、ミノタウロスの伝説には、脱出不可能と言われる迷宮とセットなんだ。とあるソシャゲーのストーリーと同じような展開になる可能性だってある」
またキルケーが異世界の言葉を使って説明してきたな。
「えーと。つまり、相手は俺たちを分断させるために、その迷宮に閉じ込めるかもしれないと言う訳か」
「さすがウルク! その通りだよ」
どうやら当たっていたみたいだな。彼女と過ごした時間が長くなっているから、なんとなくだけどわかるようになってきた。
「ダ……ウルク君、今の説明で分かったの! わたしは全然何を言っているのか理解できなかったよ!」
隣にいるメリュジーナが俺を褒める。
「メリュジーナもキルケーと一緒にいれば、その内理解できるようになるかもな」
「ゴホン。話を戻そう。どんな感じで分断されるのかは分からない。一人だけ迷宮の外に出して一人ずつ倒すのかもしれないし、全員を迷宮に閉じ込めた状態で分断してくるかもしれない」
「分断か。連携が取れていない今の状態で分断されるのはまずいよな」
「そう。そこでだ。分断された状態でみんなが動いていては、合流するのが難しくなる。そこでいくつかの分断パターンを考え、実際に起きたときの対処方法を考えようと思う」
なるほどな。戦闘は常に冷静になって判断する能力が求められる。事前に決めていたら、慌てずに済むと言うわけか。
「では、今かからいくつかのパターンを考えて行動を決めよう」
俺たちは様々な状況パターンを想像し、夜遅くまでアイディアを出し合った。
そして翌日の早朝、俺たちは町の外で敵を待ち構える。
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