第二章 第六話 どうして誰も集まらない!
〜勇者ノア視点〜
ああ、くそう! いったいどういうことだ!
ギルドの椅子に座りながら、俺は苛立ちを覚えていた。
ギルドで仲間募集の張り紙を貼ったのだが、誰一人として面接に来ない。
「くそう。どうして誰も面接に来ない! 俺たちは勇者パーティーなんだぞ!」
苛立ちを隠せきれなくなった俺は、右手で拳を作り、テーブルを叩く。
「噂の勇者パーティーはあなたたちか?」
「あーん?」
イライラしていた俺は、睨みつけるように声をかけてきた人物に対して視線を送る。しかし、それが間違いであるとに気付く。慌てて佇まいを整え、訪れた人物を迎え入れる準備をした。
俺たちの前に現れたのは美少女だった。
見た目の年齢は子どもたちと変わらない。薄い水色のロングの髪をポニーテールに纏め、ほっそりとした体型の娘だ。頭には角、スカートからは尻尾が出ている。
角と尻尾の特徴から見て、彼女はフェアリードラゴンで間違いない。フェアリードラゴンは武術に長け、ドラゴンにも変身することができる。
俺はなんてついているんだ! この際ガキだと言うことは目を瞑ろう。だけど間違いなく彼女は強い! もう、この娘さえ居れば、これ以上の仲間は要らない。
「お嬢ちゃん、名前は?」
「わたしか? わたしはメリュジーナだが」
「メリュジーナ! いい名じゃないか! 水の精霊や竜の妖精と言われているメリュジーヌの別名と同じとは! 親御さんはいい名前をあんたにつけたな」
「やったな、親父! これで俺たちも戦力が上がる」
「同じ女の子同士、これからよろしく頼むわね」
俺と同じように、トロイとハシィも喜ぶ。きっと俺の態度を見て、採用決定だということが伝わったのだろうな。
メリュジーナと握手をしようとして彼女に手を差し伸ばす。しかし、俺の手は握られることはなかった。
「どうやら勘違いされているみたいだからこの際言うけど、わたしはあなたたちの仲間になろうと思って、声をかけた訳ではないから」
「なんだと!」
「わたしは王様直々の依頼を失敗しておきながら、隣町に逃げ込んだ哀れなエセ勇者パーティーが、今どんな感じなのかを見に来ただけだから」
「今なんと言いやがった! この俺をエセ扱いしやがったのか!」
俺はテーブルを強く叩くと立ち上がる。
「ちゃんと聞こえているじゃないか。そのとおりだよ。あなたたちはまともに依頼をこなせないエセ勇者パーティー。その証拠として、誰も面接に来ようとはしないじゃないか」
「あれは勇者の証が勝手に判断しただけよ! 私たちは敗北していなかった」
ハシィの言うとおりだ。俺たちは負けていねぇ。勇者の証が勝手に決めつけやがっただけの話だ。俺は絶対にヘカトンケイルとの戦で負けたなどと認めねぇからな。
「勇者のくせに囚われのお姫様も助けることができなかったと言うのに、負け犬の遠吠えだけは一人前だね。ヘカトンケイルも討伐できないダメ勇者パーティー」
女の言葉に、俺は頭に血が昇ってカチンとくる。
「何を言っていやがる! 何も知らないくせに!」
「お父様の言うとおりよ! あの廃城のヘカトンケイルは、今まで倒してきた奴らとは実力が段違いだったのよ! 何も知らないくせに勝手なことを言わないでよ!」
俺に続いて、ハシィがヘカトンケイルの強さを語る。
そうだ。あの魔物はとても危険だ。普通のヘカトンケイルとは力が違い過ぎる。この俺が一撃で大ダメージを受けるほどなんだぞ!
「あのヘカトンケイルは倒せない! 勇者であるこの俺が勝てなかったんだからな!」
「エセ勇者だから倒せないんだよ。本物の勇者であれば、廃城のヘカトンケイルは倒せるわ。王都では真の勇者が廃城の魔物を倒して、お姫様を救出したと言う話で持ちきりだよ」
「何だと!」
メリュジーナの言葉に、俺は歯を食いしばる。
いったいどんな化け物なんだ! そいつは! 王様に選ばれし勇者であるこの俺が、城から吹き飛ばされて敗北扱いされたんだぞ! それなのに、そいつはあの魔物を倒して囚われのシャルロット姫を救出しやがったなんて。こんな話信じられるか!
「という訳だから、あなたたちは王様のお願いをまともにクリアできないエセ勇者っていう話が広まっているのよ。みんな形だけの勇者パーティーに入ろうとは思わないわ」
「ぐぬぬぬ! クソ!」
俺は思わず叫び声をあげる。
散々バカにされたままでは俺の気がすまない。この女には痛い目に遭ってもらわなければ。
依頼が張り出されている場所に向かい、俺は依頼内容が書かれた紙に目を通す。
「あった。これだ」
一枚の依頼書を取り外すと、その依頼書をメリュジーナに突きつける。
「俺と勝負しろ! 俺が勝ったら、俺たちをバカにしたことを謝ってもらうからな」
「へぇー、面白そうだね。依頼内容は、街の外に住み着いた一角ウサギの群れの討伐」
「どっちが多くの魔物を倒したのかで勝敗を決める。そして勝者が、依頼の報酬金額を全てもらう条件でどうだ!」
「いいだろう。その勝負、受けさせてもらうよ」
メリュジーナが勝負を引き受けると言った瞬間、俺は口角をあげる。
ハハハ! バカめ! この勝負を引き受けた瞬間から、お前の敗北は決まっているのだ。
ああ、今から楽しみだぜ、勝負が終わった頃には、俺には金とメリュジーナの謝罪の言葉が聞けれるのだからな!
ガハハ! ガーハハハハ!
俺は心の中で、笑い声を上げた。
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