第二章 第一話 キルケーの秘密
〜キルケー視点〜
「なぁ、君は本当に何者なんだ? 本当に魔女なのか?」
私ことキルケーは、ウルクの言葉にどうしたものかと悩んでしまった。
ああ、私としたことがつい口走ってしまった。きっと、本当のことを言わないと彼は納得しないだろうな。だけど、事実を言ったところで信じてはくれないだろうし。どうしよう。
こんなときの対処方法は神様から聞いていないよ。
悩んでいる最中、彼はジッと私を見つめる。その目には、本当のことを言わないと許さないからなと訴えていた。
はぁ、仕方がない。ここは当たって砕けろの精神だ。信じて貰えないだろうが、本当のことを言うとしょう。
「分かった。本当のことを教える。だけど信じてはくれないだろうね」
私はあのころのことを思い出す。
「これは〜これは〜とある異世界の〜転生者の〜話し〜バン、バン、ババーン、バン、ババン」
どうせ信じてはくれないのだ。こうなったら吟遊詩人のように語ってあげようではないか。
◇
真の私こと切藤彗華、十六歳は成績優秀、容姿端麗な超絶美少女だった。いつものように実家の養豚場の手伝いをしている。
「皆んなたくさん食べて、まるまる太るんだよ」
豚の餌やりを終えた私は、友達とオンラインゲームの約束をしていたことを思い出す。
「ヤバイ! そう言えば、友達とゲームをする約束をしていたんだ!」
私は急いで部屋に戻ると、パソコンの電源を入れてゲームを始める。もちろんプレイヤー名はキルケーだ。
このニックネームは、私のフルネームから取ってつけた。
三時間ほどゲームを楽しんだ後、私は母親からお使いを頼まれ、原付でスーパーに向かう。
そんなとき、不運にも信号無視で突っ込んだトラックに撥ねられ、私はあっけなく死んだ。
気が付くと、私は知らない場所にいた。そして、目の前には美しい女性が立っており、つい見とれてしまう。
「どうやら目が覚めたようですね」
「あなたは?」
「ワタシはあなたの住む世界を管理している女神です」
「神さま!」
私は驚く。
え! 本当に女神様なのかい! ちょと待ってくれ! 事故死、目の前に神様、この流れって転生物のテンプレ展開じゃないか!
「まさか、私を異世界に転生させるなんて言わないよね?」
「まぁ! どうして分かったのですか?」
マジかあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
私は思わず心の中で叫ぶ。
「実は、あなたにお願いがあるの。今から送る世界で【人生ダイス】と言うオートスキルを持っている男の子がいるの。彼は神のテーブルの結果、異世界の女の娘と出会うことになっているのよ。そこで、異世界の女の娘を用意しないといけないところで、偶然あなたが死んでしまったから、ここに呼び寄せたと言うわけ」
「人生ダイス? 神のテーブル? なんですかそれ?」
「詳しいことは教えられないのよ。とにかくあなたがこれからすることは、人生ダイスに振り回されている男の子を見つけてサポートをしてあげて」
「サポートって具体的には何を?」
私は女神様に尋ねた。
「彼にダブルヒットと言う技を教えてあげて。やり方はダイスに魔力を送るだけだから」
女神様が十面ダイスを用意すると実演してみせた。
「こんな風に、魔力でダイスを操作して、クリティカルになるようするテクニックを口頭で教えればいいだけだから」
「TRPGのようなスキルがあるんだ。なんだか新鮮」
「お願いをする立場だもの。あなたが異世界でもやっていけるように特典をあげるわ。そうね何がいいかしら?」
女神様は人差し指を頬に当て、首を傾げる。
「そうだ。高い魔力量をプレゼントしましょう。それに豚さんが好きだから、豚化の魔法が使えるようにしてあげるわね。あと、あの世界で馴染むように見た目を変えましょう。これで決まり! と言うわけで早速異世界に行ってください」
「え! ちょっと待って! 私まだやるなんて一言も行っていない!」
私は女神様に向かって叫ぶ。その瞬間、足元の地面がなくなり、私の身体は真っ逆さまに落ちた。
「あいたたた。まったく、普通異世界転生って魔法陣とかでワープさせるものじゃないの! いや、ワープ系は異世界転移の方だっけ? まぁ、細かいことはいいや」
私は立ち上がり、近くにある湖を覗き込む。すると、私の容姿は西洋風の顔つきに変わっていた。
「うっそ! これが私! 日本人の顔も可愛かったけれど、こっちの顔もなかなかイケテいるではないか!」
私は水面に移る自分の顔を見て興奮した。
「さて、それでは女神様の言っていた男の子とやらを探すとしよう。どんな子かな? イケメン? それとも可愛い系? ショタっていう可能性もあるよね! なんだかワクワクしてきた」
この世界に来た目的を果たすために、私は森の中を歩く。すると、目の前にスライムが現れた。
「お! スライム! ゲームで定番の形とは少し違うけど、スライムで間違いないよね!」
初めてみる魔物を見て、私はテンショが上がりまくっていた。
「よし! それじゃあさっそく、女神様の言っていた豚になる魔法を使ってみよう。ピッグイズピグレット!」
呪文を唱えた瞬間、目の前にいたスライムの形状が変わる。
丸々と太った身体、短い足、キュートな鼻にくるりとなっている尻尾!
「本当に豚になった! 私の愛豚! おーよしよしいい子だ」
豚になった元スライムの身体にダイブすると、私は豚を愛でる。
そして私は豚と一緒にウルクを探した。
しかし所持金がなく、空腹に勝てなかった私はついにピグレットを食べてしまう。
「うう! 美味しいよピグレット。お前の命はムダにしないからね」
お腹が満たされた私は再び一人旅を始めた。
数日が経ち、私は町に着いた。だが、路地裏を歩いているところでお腹の方は限界になる。
「もうだめだ。お腹が空いて力が出ない」
その後、私はそのまま行き倒れになった。
◇
「と言うわけだ。多分何を言っているのか理解していないと思うが」
歌い終わった私は、ウルクを見る。彼は胸の前で腕を組み、難しい顔をしていた。
「キルケーが言っていることのほとんどが理解できない。いったい何を言っているんだ?」
彼の言葉に、私は心の中でため息を吐く。
はぁー、やっぱり異世界のことを話したところで信じてくれないよね。そう言えば、転移、転生系の主人公って、何かしらの理解者がいたから、上手く話が進むのだった。
「まぁ、バカにしたいのならしてくれて構わないさ。こうなることは予想できていたから」
「いや、バカにはしないさ。俺のオートスキルである【人生ダイス】のことを知っていたし、常識外のことを言ったりもしていたから、異世界から来たと言うことは信じるさ。ただ歌の内容が理解できなかった。原付とかパソコンって何だ?」
ウルクの言葉に、私は顔を綻ばせる。
まさか、本当に信じてくれるとは思わなかった。
「ありがとう! ピグレット!」
私は咄嗟に彼に抱きついていた。まさか本当に信じてくれるとは思ってもいなかっただけに、普段の何倍もの嬉しさを感じる。
「どうしていきなり抱きつく! 離れてくれ」
「別にいいではないか。君は私のピグレットなんだから」
女神様、私の意志に関係なく異世界に送られたときは、心の奥底で恨んでいました。だけど彼となら、この異世界でも上手くやっていけそうです。
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