白銀
その日の遅くに夕飯と共に支給されたのはリュックと拳銃だった。
リュックはタクティカル社の物で12時間の戦闘行動を想定した大容量の物。色はアーミーグリン、背中のハイドレーションパックにはオプティク社製の3Lハイドレーションが入れられていた。ご丁寧なことに、下着や丸一日分の戦闘糧食まで詰められている。
拳銃は9mm弾を使用する軽い物。黒い樹脂製で見たことのないメーカーだった。5条左回り。アメリカ軍で使用されるものと近しい。マガジンはシングルで7発装填できる。照準器にはチューブがいれてあり、暗闇で光る。
恐らくは停電時の戦闘を考慮してのことだろう。拳銃ポーチは同じく樹脂製で、抜くときに指がトリガーにかからないように覆いがしてある。
ケンは何度も拳銃ポーチから拳銃を抜いて自身の間隔とのズレを確かめる。
拳銃はメインの銃が使えなくなったときに最後の命綱となる。それだけに常に触れ、その感覚を手になじませる必要があった。
「これから飯は食堂でとらせてもらいたい」
「ここには食堂はないんだよ」
さっきのメガネ研究員がため息をするように言った。多少時間はあったはずだが目元の痛々しいまでの落ちくぼみはどうにもならなかったらしい。
「食料が一か所に集まるとまずいんだ」
?
ネズミでも出るのか? とケンは疑問に思ったが、素早く身支度をすませ立ち上がる。
研究所というのは何分初めてのことになる。砂の落ちていない床も、ジラジラと明るい光を落とす蛍光灯も久しぶりだった。
「まずは、君に守ってもらう生き物を紹介しよう」
研究員が笑うと銀の被せ物をした歯が目についた。
ケンは研究員に案内されて何枚もの扉を抜けた。その全ては巨大で重く、金属であった。
地下へと続く長い階段を下りていくと段々と肌寒くなってくる。
ゾクゾクとくる寒気は分厚いナイロンの戦闘服の下で鳥肌を立てさせた。
やがて真っ白に統一された研究所の中で一か所だけ薄暗く閉ざされた部屋を見つける。
部屋の扉にかけられた温度計は18度を示し、温度管理が必要なことが分かった。
きっと寒い地域にいる生き物なのだろう。シロクマかペンギンか。
その割にはひどく静かだった。まるで生き物などいないかのように空調を行う換気扇の音だけが響く。
殺風景の部屋は異様だった。まるで正方形のサイコロの中に入ったようだ。壁にはわずかに継ぎ目が見えるだけで、窓もシャッターもない。あるのは蛍光灯と赤いパトカーについているようなランプだけだった。あとは床に何台かカメラが設置されている。
その部屋の中心にポツンと管が置いてある。
透明のそれは、ちょうど人が1人はいるくらいの大きさで綺麗に向こう側が見えた。
いや、その中で肌色の何かがゆっくりと動く。
その中にうずくまっていたのは、一人の少女だった。白銀を思わせる白い髪の毛が川の流れのように波打って肩にたれた。




