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最終話

 

 ようやく家の中に入れた。

 玄関を入ってすぐ横にキッチンがあり、反対に扉が一つ、トイレだろうか。そして、そのまま真っすぐ行くとドアがあり、部屋の中が玄関から見えないようになっている。


「てか、ベリーが依頼人を家に呼ぶの初じゃね?」

「え、そうなんですか?」

「……今まではネット上のやりとりだけだったからじゃない? ネット外はあなたが初めてだし」


 そう言うとRICKY(リッキー)とヒメはドアを開け、中に入って行く。(はじめ)も二人に続いて部屋に入る。中は六畳くらいの広さだろうか? 入って右側に、ふすまの下段部分がない上段部分だけ、みたいな上部収納がある。床はフローリングで、左側の壁に付けられているエアコンが暖かい風を出している。

 家具はそれ以外何も置かれていない。

 ──殺風景通り越して、人住んでるのか? てか、ベリーは?

 部屋の中には、今来た三人以外誰も居なかった。

 どういうことだ? と、一が部屋を見回しているのを尻目に、RICKYは壁際にあぐらをかいて座り、ヒメは上部収納の引き戸をノックしている。

 ──え! もしかして、そこにベリーが?!

 一の予想通り、少し間が空いたあと、上部収納の引き戸が開き、一人の女の子が出てきた。

 女の子は黒髪のおかっぱ頭に、ちょっと生意気そうなつり目と、ぷっくりした唇が印象的だと、一は思った。年齢はパッと見、一よりだいぶ幼く見える。服装は、上下三本線の入った小豆色の、俗に言う芋ジャージを着ていて、足は裸足だった。


「ヒメちゃん、ありがとう。……ども、ベリーです」


 ベリーはヒメに微笑んだあと、一の方に体を向けたが、その顔にはもうヒメに見せていた笑顔はなく無表情で、目線も足元を見ているようで一と合わない。

 一は少しその態度が気になったが、自分もあいさつをしなくてはと、姿勢を正した。


「き、金田一です! 今回は、本当にありがとうございました!」

「……別に」

「……」

「……」

「……(なんか、チャットや通話してる時の印象と違うな)」


 ベリーは一の話を聞いているときも、聞いた後もずっと視線は足元を見ているし、チャットや通話のイメージから、グイグイ来るうるさい子なのかと思っていたが、この態度はむしろ真逆。

 ──それか単に、人見知りなのか?


「今回の依頼料のことだけど……」

「あ! はい! 五万一千円ですよね?」

「違う」

「へ?」


 ベリーの言葉に、リュックから財布を取り出そうとした一の手が止まる。


「最初あたしとアンタとヒメちゃんとRICKYだけだったから、その値段だったけど、今回RICKYのフレンドも手伝ってくれて……合計で十六万円になります」

「ハアッ?!?!」

「うるさい」


 思わず大きな声を出した一を、ベリーが耳を手でふさいで嫌そうに見てくるが、そんなこと気にしていられなかった。


「いや、おかしいでしょ! なんでそんなに高くなってるんですか?!」


 ベリーに詰め寄る一に、今まで我関せずスマホを弄っていたRICKYが話に入ってくる。


「俺のフレンドに話したら、探すの手伝うっつって十人も集まってくれてよ~。んで、九時から十六時までいろんなとこ探しに行ってくれたからさ、せめて一人一万はあげたいんだよね~」


 RICKYの話を聞いて一は(一人一万って、高いな!)と思ったが、そんなにたくさんの人がマガジンの財布探しを手伝ってくれたのかと、少し感動もしていた。

 ──あれ? 一人一万……?

 感動していた一は、はたと気付く。


「……そ、それでも十五万一千円じゃないですか!」

「その他もろもろプラス税」

「うっ……」


 一の気付きは、ベリーにあっけなく一刀両断された。

(なんか出るとこ出たら行けそうな気もするけど、財布見つけてくれたしな……でも、そんな金ないし……)


「あ! じゃさ、一ちゃん」


 悩む一に、RICKYが話し掛ける。


「えっ、なんで俺のほんみょ……」

「金田一の下の名前って一だから、一ちゃん! 良くね?」

「は、はぁ……(たまたまかよ!)」

「で、一ちゃん! 金ないなら、ベリーの仕事手伝えばいんじゃね?」

「?」

「RICKY、全然意味分かんないから」


 一だけでなく、その場にいる人全員がRICKYの言葉に『?』となっていると、RICKYの隣に座っていたヒメがツッコミを入れた。


「そお? ラーメン屋でラーメン食い終わってから金ないことに気付いて、食った分働いて返す的な?」

「は、はあ……」


 ──言いたいことは分かるけど……。

 そんなこと無理だろうと一がRICKYを見るが、RICKYは気にせずベリーに話を振る。


「良くね? ベリー」

「……」


 案の定ベリーも何も言わない。


「いや、すみません。金は分割でもいいな「いいけど」」


 一が場の空気を変えようと、話し出したのをベリーの言葉が止めた。

 そして、次にベリーの口から告げられる言葉に、一は驚くことになる。


「あんた十六万分、うちで働いて返してよ」

「え、ええええ!!」



 (あおい) 一。

 ネット何でも屋『ベリー』で、バイト始めます?





 END

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