第二話
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『ベリールーム』
入室:二
閲覧:〇
〉金田一が入室しました
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金田一とは葵 一のHNだ。某漫画の主人公と同じ名前だと言うだけで、小学生の時からあだ名は決まってこれだった。幼い頃はからかわれて嫌だったけれど、今では結構気に入っている。
話は戻るが、チャットルームと言うものを利用するのが初めての一は、「へー、こんなんなんだ」と、表示された画面をまじまじと見ていると、チャットルームが動き出した。
何でも屋『ベリー』からのようだ。
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〈ベリー:この度は何でも屋『ベリー』にご依頼ありがとうございます〉
〈ベリー:と、言いたいところだけど〉
〈ベリー:あんたの依頼何なの?〉
〉ベリーが画像を送信しました
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件名:助けてください!
--d-i----55@-----.ne.jp 20XX/12/26 26:14
HN:金田一
夜分遅くにすみません!
友達が財布を落としてしまって、
今日の夕方までに見付けたいので、
一緒に探してください!
大学生 二十歳
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〈ベリー:ざっくりし過ぎ〉
〈ベリー:てか、何でも屋じゃなくて警察行けば?〉
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ここまでものの数分の間に続々と届くメッセージの数々に、こういったものに疎い一は口を挟むどころか、送られてくるメッセージを読むのに必死になっていた。
「うわ、口を挟む隙がないな……(それに、口悪っ)」
しばらくすると、メッセージラッシュが落ち着いたらしく、画面が静かになったので、一は急いでメッセージを打ち込む。
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〈金田一:夜分遅くにすみません。初めまして、金田一です。迅速な対応ありがとうございます! 実は、警察に行ってみたのですが、落とし物では届いていませんでした。紛失届けも友人が今日群馬に帰るので、書かなくてもいいやと言っていて、出してません。友人とも最後に財布を出したところを探したりしましたが、見付かりませんでした。なので便利屋さんに、探すだけでもとお願いしてみたのですが、そういうのをやっていなかったり、たくさん人手が必要になるからその分料金も高くなるし、見つかるかも分からないものに、そんなに人員を割けないとかなんとか、いろんなところから断られてしまって……料金はいくらでも構いません! 見つからなくてもいいです! もうここしかないんです! お願いします!〉
一なりの考えや思いを、相手にぶつけるように送る。しかし、メッセージを打つのに十分程掛かった一とは違い、ベリーからの返信はすぐに来た。
〈ベリー:長い読みにくい〉
〈ベリー:簡単にまとめると、警察も他の何でも屋からも相手にされなくて、最後に来たのがうちってことでOK?〉
〈金田一:……はい〉
〈ベリー:悪いけど、うち何でも屋じゃなくて、ネット何でも屋なんだけど〉
〈金田一:えっと?〉
〈ベリー:サイト最後まで見た? 一番下に書いてあるでしょ〉
一はそう言われ、「え、『ネット何でも屋』と『何でも屋』何が違うんだ?」と思いながら、チャットルームを閉じ、何でも屋『ベリー』のサイトに戻り、サイトの一番下までスクロールする。
するとそこには、こんなことが書かれていた。
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注意:ネット外でのご依頼はお受けできません。
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〈金田一:え? どういうことですか?〉
〈金田一:パソコンの修理とか、そういうのの何でも屋ってことですか?〉
〈ベリー:半分当たり〉
〈ベリー:ネット上だけの何でも屋ってこと〉
〈ベリー:会ったりとかしないし、本名とかも教えず、HNだけでやり取りをし、ネット上の困り事を助けたり、悩み相談を聞いたりとかそんなの〉
〈ベリー:だから、会ったりとか財布探しとかは、わたしには無理〉
〈ベリー:つまり、あんたの探してる普通の何でも屋じゃないってこと〉
「……マジかー」
最後の希望だと思っていたものが崩れ落ち、一はスマートフォンを片手に項垂れる。
時刻は、午前三時半。
もう諦めるしかないのかと、一はベッドの上に倒れ込み、目をつぶった。




