ネット何でも屋『ベリー』
深夜二時。
神奈川県のとある線路沿いに建つ、ワンルームアパートの一室。
電気が消えた部屋の中に、二人の男が居た。
一人は、ベッドの上で正座をしながらスマートフォンを食い入るように見つめている。
男の二重が特徴的なあどけない顔を、液晶の明かりが照らす。
男の名は、葵一。
二年前の春に大学進学のため、群馬県から上京してきた。この部屋には、そのときから住んでいる。
もう一人は、一の高校時代からの友人で、あだ名はマガジン。
マガジンは大学の冬休みを利用し、一の所に遊びに来ていた。現在は、一とは対照的にベッドの隣に敷かれた布団の中で、寝息を立てている。
そんなマガジンを横目に、一はスマートフォンを使い、ネット検索でヒットしたリンクをタップし、サイトを開き、上から下にスクロールしながら内容を読んでは、一の希望にあったものではないらしく、ブラウザーを閉じ、次にヒットしたリンクを開いては、また閉じるを繰り返していた。
「……やっぱり、ダメか」
時折希望にあったものを見付け、連絡を取るが、うまくいかず、また検索、開く、閉じる、この行為を続けること一時間弱。
特に期待せずに、開いたサイトを流し見ていた一の瞳がめいっぱい開く。
「!」
ようやく一の希望にあったサイトを見付けることが出来たようだ。
「ここなら……」
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わたし貸します。
何でも屋『ベリー』
困り事から悩み相談まで何でも。
年中無休二十四時間対応。
報酬は応相談。
ご依頼はメッセージフォームよりお願いします。
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一はメッセージフォームを開き、さっそく必要事項を書き込もうとするが、一番最初の自分の名前を記入するところで指が止まってしまった。
「名前の欄がHN? 本名じゃなくていいのか」
一は、普通こういった所は本名で依頼するものじゃないのか? 珍しいなと感じたが、まあ、いっかと深く気にせず、次の項目に移る。
「よし……、お願いします!」
名前、依頼内容、メールアドレスと必要事項を全部書き終え、スマートフォンをベッドの上に置き、両手を合わせて祈りながら送信する。
すると、ものの一分も掛からずに一のメールアドレスにメールが届いた。
──何でも屋さんからだ!
一は喜びながら、さっそくメールを開いた。
だが、メールを開いてみるとそこには、文も何もなくURLが一つだけ。
「……なんのURLだ?」
質問しようとメールを送ろうとしたが、使われているメールアドレスは自動送信用のもので、返信しても意味はないようだ。
一は、もしかして最近ニュースなどでよく聞くフィッシング詐欺? それとも怪しいサイトだったのか? と不安になったが、どちらにせよこのURLを開かなければ先には進まない。「ええぇい! 悩んでる暇はない! こちらは一刻も争う非常事態なんだから!」と多少オーバーにだが気合いを入れ、URLをタップした。
数秒の読み込みの後、開かれたのは、詐欺でもなく、怪しげなサイトでもなく、ただの変哲もないチャットルームだった。




