幸先眼福
「そこの人こっちへ来なさい」
「・・・私ですか?」
「そうだ。天才の私が占ってやろう」
「占い師ですね、いいです。結構です」
「まぁそう言わさんな、今日で店じまいなんだ。無料で見てしんぜよう」
「天才なのに?儲からなかったんですか?」
「天才すぎてな。見たくないものも見える。疲れてしまったんだ」
「ならなぜ私を見ようと?」
「商売として占いで人を不幸にもしてきた。最後ぐらい良いことをしようとしたくてな。まぁ老人の最後の我儘だと思って少し付き合ってくれ。そのかわり必ずお主を幸せにしてみせよう」
「・・・分かりました。少しだけですが付き合いましょう」
「感謝する。では・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
お主は今日しようとしている事をしなければこれから幸せになるであろう」
「・・・・・・・なんで分かったんですか?」
「だから言ったであろう。見えると」
「・・・・楽にしてあげたいんです。私には妻を救う事は出来ないんです」
「毎日なぜ妻はお主に殺してと頼むか分かっているのか?」
「ええ、妻の苦しみは理解しているつもりです」
「・・・そうか。両親から虐待を受けていたもの同士で駆け落ちをしたのか」
「なぜ、過去を知っているんです?」
「・・・二人で幸せになろうと努力した。だが、最も望んでいた子供が出来ないと知ってしまった」
「・・・・・」
「毎日、殺してという妻をお主はまだ愛しているであろう」
「愛しています。昔も今もそれだけは変わりません」
「妻も同じ気持ちを持っておる。ただ、二人とも不器用なだけだ」
「・・・・」
「お主は妻を。妻はお主の事を一番に考えているのだ。妻が殺してというのはお主の幸せを自分が奪うからと。お主が楽にしてあげようとするのは自分が妻を幸せにできないからと」
「そうです。私には妻を幸せにできない。だから彼女の意見を尊重したいのです」
「お主はそれが妻に出来る最後の優しさと考えているのだろうが、それはお主にとって一番残酷なことだ」
「分かっています。妻を楽にしたら私も死にます」
「・・・一つ変える方法がある。どうだ、やってみないか?」
「それは何です?」
「帰ったら妻の前でこの薬を飲みなさい」
「私が先に死ぬのですか?」
「それは今は言えん。必ず妻の前で飲むのだ。薬のお金はいらん。ただ、次にあった時は高い料金をもらうとだけ言っておこう」
「分かりました」
3年後
「また会えて嬉しいです」
「その様子だとうまくいったようだな」
「ええ、妻は倒れた私を助けるため閉じこもっていた部屋から抜け出してくれました。
病院で目覚めた私は妻が泣きながら喜んでいるのを見て分かりました。妻もわかったのでしょう。死で幸せには出来ないと」
「そうか、今は幸せになったか?」
「幸せになったとは言えませんが二人で支えあってこれからの人生幸せになっていこうとしています。
あなたはまだ占いはやっているのですか?」
「今はもうやっておらん。見てのとおり少ないが野菜を売ったりしておる」
「そうですか。美味しそうですね」
「天才が作ると美味しくみえるのだ」
「買いましょう。妻に私達を救った恩人が作った野菜だと教えてあげたいです」
「よかろう。野菜詰め合わせを1万で売ろう。高いとは言わせんぞ。次にあった時は高い料金を取るといったであろう」




