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11. 聖女の助言

 儀式の終わりまで残り一日となった。

 あれから城を探索したが、城の中には死霊の騎士たち以外はもう誰もいないようだった。

 他の妖混じりも人の魔獣とやらも何もかもだ。

 仕方なく私は続いて火口湖の神殿へと足早に向かうことにした。

 そして、そこで出会ったのは怪物だった。


「フォッホォォオオオオオ」


 そいつは巨大なメイスを振るって髑髏の集合体を砕くと、神言を唱えて蒼い炎の竜巻を生み出した。わずか一瞬であの規模の奇跡を行使するか。まさしく化け物だ。

 あれが聖女マリアンヌか。

 特注の聖騎士の鎧を包んだエルダーオークの如き巨体の化け物。全身に聖痕を刻み込んで、聖力を溜め込んで攻撃をする重戦士。とても女であると思えぬ。人間であるとも。

 そいつは妖混じりではない、全く真逆の存在。聖なる力に汚染された教団の兵器だ。


「なんですかあなた。か弱き女性ひとりに不浄を掃除させるとは? 恥を知りなさい」


 どうやらマリアンヌはこちらに気が付いていたようだ。

 面倒臭いのと接触したな。


「ケツを拭けというのなら、お供に任せるんだな聖女様。私がそうする義務はない」

「ここにいる以上、あなたも主の下僕でありましょう。それに私に付いてきた者たちは皆死にました。今年は軟弱な者ばかりが多く、いささか辟易としましたよ」


 ああ、そうかい。連中は仲良く永遠楽土ヴァラ・ファロに逝っちまったと。神官戦士の亡骸も確かに多く転がっていたけどな。もっともあの死都の引力から逃れて永遠楽土ヴァラ・ファロに辿り付けるヤツがどれだけいたんだろうな。

 まあ、どうでもいいことだが。


「なあ、あんた聖女様だろ」

「ええ、そうです」

「人の魔獣ってのはどこにいるか知っているか?」


 その不躾な問いに、マリアンヌは目を細め、値踏みをするように私を見た。


「逢魔の谷。すでに何人かは向かいましたわ」

「あんたは向かわないのかい?」


 私がそう尋ねると、マリアンヌは背を向けて歩き出す。


「私の役割はここの掃除ですよ。そもそも、それ以外の目的でここに来る者などいないはずなのに、嘆かわしいことです」

「熱心でない信徒ですまないな。それじゃあ、お掃除頑張ってくれや」


 私はそう返して、神殿の外へと向かう。

 わずかな会話の間にもアレの中に宿る神の力は私の魔獣の血を沸き立たせる。ともかく早く離れたい相手だった。

 まったく、人間を相手にしているとは思えない。相性も最悪だろうな。

 そして、私が神殿を出るとそこには、先ほどの骸骨の集合体にも似た鎧の集合体が待ち構えていた。

 それはレギオンという魔獣の一種にして群れだ。

 ともあれ、私の目的もどうやら無事果たせそうだ。そのための準備運動に、こいつには付き合ってもらうとするかね。

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