希望
続きです、よろしくお願いします
「城が燃えてる光景て、綺麗なのねぇ……」
目の前で起きている事態に、現実感が無いのか?。
炎上している城を見ながら、ロゼが美しいと口にした……。
これが、日本なら今頃は消防車に救急車、警察車両にマスコミ各社。そして、野次馬共が群がっているのだろうが、この世界にはそんな者は居ない。城下の住民達が、いきなり炎上を始めた城を目にして、驚愕の声を上げているくらいだ。
「もし、場内に残って居た敵が出てきたら、大惨事に成りかねないぞ!」
アネスの心配は当然の事であるけど。
場内に居た敵も、謁見の間に居た連中が城から去った後、姿を消していた
城の中には、総勢千人は人が居た筈だが、敵と交戦で死亡した者と火災に巻き込まれた者で、三分の一の人員が命を失った様だ。勿論この数は、後から判明した犠牲者の数だが。
半日以上燃え続けて、ハイデ宮殿の火災は収まりをみせた。
火災が収まってくると、ロゼとマリネは皇王と皇后が連れ去れた事を悲しむ余裕無く、事後の対応を迫られる事になる。俺達も何か手伝える事はと想ったが、七夜城の事について知っていそうな、ラケニスの所へ行き、情報を得る方に回る事にした。
「ロゼ、俺達はラケニスに情報が無いか聞きに行くよ」
「うん分かった、私とマリネはちょっと動けそうに無いわ、そっちは任せる」
「ユキヒト様、すいません私もロゼ様に付き添うので……」
「ああ、ロゼを手伝ってやってくれ」
負傷者の治療する応援に、ハルにも城跡に残ってもらう。
「そうですね……、わかりましたぁ残って看護に回りますね」
「よろしくねハル……」
結局、三人を除いた五人でラケニスに逢いに行った。
イリスに扉を開いて貰い、塔へと足を踏み入れると。
ラケニスは、険しい表情で俺達を出迎えた。
「主らは、無事じゃった様だの……、が、皇王達が攫われたのは致命じゃな」
皇王、皇后を人質に取られているのだから、当然の大失態だが?。何かそれ以上の事が、在りそうな口振りでラケニスは話していた。
「人質に取られた以上の事が、何かあるのか?」
「小僧……、七夜城についてどこまで知っておる?」
「名前以外は、何も……、聞く前に攫われたしまった」
「他の小娘達も、知らぬのか?」
「私は、名前くらいは聞き覚えあるが……」
アネスは、俺と変わらない知識だが、ラミカは多少知識を持っていた。
それでも、触り程度の物だったようではある。
「確か、千年周期で現世に現れ、ハインデリアと七日間戦争に成るとだけ」
「うむ、まぁその通りなんじゃが、ハインデリアは元々はボルドという国でのぉ、帝政を布いてからは圧制となり、その支配圏を拡大させていった。ある時に、丁度主らの様な者達によって、その支配を弱められて遂には、次元の狭間に城ごと封印されたという話じゃ」
「それで、千年毎に七日間だけ、復讐に来るって事なのか?」
「まぁ、簡単に言うとそうなるが、七日目に七夜城に居る王が、その後、自分の城と封印されると伝え聞いておる。皇王を連れ去った理由はそこじゃ」
つまり七日目に、七夜城に居た者だけが、再び封印される?。
そして、城まで入れ替わって封印されてしまうのか……。
「じゃ、それまでに皇王達を救出する事が出来なかったら……」
「七夜城の城と王が、入れ替わると言う事なんでしょうか?」
イリスが物静かにラケニスに尋ねた。
「そう言う事になるかのぉ」
「ユキヒト、それまでに二人を救出に行こう!」
アネスに言われるまでもなく、出来るなら今直ぐにでもズグロに乗って攻め込みたい所だけど。話はそう簡単に行きそうに無い。
「俺も、そうしたいが結界があって進めなかった……」
「戯けがっ、夜叉姫に貰った小僧の刀で、結界なんぞぶった斬れば………、って小僧、刀をどうした?」
「ロゼまで人質に取られて、殺されかけた。刀は解放の条件で……」
「奴等に奪われたのか……、抜け目がないの……、しかし何で小僧が、神殺しを持っているのを知っていたのじゃ?。なんかまだ裏が在りそうじゃのぉ」
裏が在る?。ラケニスは、誰かが俺達の情報をボルドの連中に流したと、言いたいのだろうか?。しかしそんな事が可能なのだろうか?、次元の狭間に漂っている者と、どうやって連絡を取るというのか?。
「まさか、魔法陣を利用したとは考えられませんか?」
「ズグロの考えが、当りかもしれぬな……、長い年月研究し続け完成させたとしたら、在り得る話じゃな」
共謀している者が居るのなら、大きな障害と成りえるかもしれない。が、それより今は、あの城を取り囲んでいる結界をどうやって破るか?、それが重要な気がするのだが。
「次元の扉を開いて、向こう側へ行けないかな?」
それなら結界の有る無しに関係なく、奴らの近くへ行けるのでは?。
だが、その考えにラケニスは異を唱えてきた。
「この塔へなら問題ないかも知れぬが、一度事故が起きておる。敵陣へ乗り込む際に使用するのは、わしは反対じゃのぉ」
「え?、しかしここへ来るのも同じではありませんか?」
イリスの考えが普通に思える、ラケニスは繊細に成りすぎてないか?。
「事故が起きた時、ニクスの居場所を探る目的での移動じゃったの?、それ以外では一度も起きておらぬ」
どうやらラケニスは、あれを事故ではなく、誰かの仕業と考えている様だ。黒衣の者が犯人というのが、濃厚だったが確証は得られなかったし、仮に奴らだとして他にも残っているのか?。
「あの事故は、黒衣の仕業でまだ残っている奴が居ると?」
「分からぬ……、だがもしそうだとしたら、確実にその時を狙ってくるぞ」
「今回、また飛ばされたら制限時間も有る事だし、避けるのが懸命か」
アネスは慎重論を推している、扉を使用しないとなると結界を破るしかないが、期限内でその方法を見つけないとならないが、本当に見つかるのか?。
「少し……、時間を貰うぞ小僧、手が見付かるかもしれぬ」
「何か、何時も頼って悪いけど……。頼むよ」
「今は、城跡のロゼ達を手伝ってやるの事だの」
今一番大変なのは、ロゼだ。
出来る事が無くても、傍にいれば何かの役には立つかもしれない。
しかし、何時もラケニスに道を開いて貰っている。
何とも情けない英雄も居たものだ……。
━━七夜城内。
七夜城へと攫われた皇王と皇后。
黒ローブの男達に連れられ、静まり返った長い廊下を歩かされていた。
扉の無い巨大な入り口を抜け、更に進んで行くと、皇帝の鎮座する場所へと到着した。遥か大昔に、ハインデリアの領土に在ったこの城の城主である、皇帝ベルトーゼが居た。
「皇帝陛下、ハイデ宮殿の皇王と皇后をお連れしました」
「うむ、ご苦労であった……」
「はっ!」
会釈をした後、二人の後方へと移動した。
皇帝が、攫われた二人に対して長年の想いを吐き捨てた。
「ハイデの皇よ、此処に連れて来られた意味を知っておろうな?」
「ふんっ! 、私と入れ替わろうと言うのであろうが、無駄じゃな」
「ほお……、無理とホザキおったか、異世界人達が助けに来ると?」
皇帝ベルトーゼの威圧は、普通の者では畏縮してしまう。
だが、それを物ともせずキッパリト言い切る。
「あの者達なら、どんな苦境であろうが必ず看破してやって来る!」
「ええ……、その通りですわ。あの者達は必ず来ますわ!」
皇后も全く萎縮しない事に、皇帝は僅かに不満の色を見せた。
「大した皇后だ、我に萎縮せぬとは……、だが奴等にこの結界は破れぬ」
「いいえ! 、あの娘達は絶対に来ます!」
皇帝は立ち上がって、大声で一蹴した。
「仮に来たとしても、あの者達には何も出来ぬわっ!、二人を連れて行け!」
「はっ!」
二人の後方に立っていた男が、再び、何処かへと連れ去っていった。
その様子を眺めていた皇帝は、一言呟いた。
「一万年……、長かったわ、やっと我が領土を取り戻せる」
大広間の玉座に座り、皇帝の両手は激しく力が入り。
骨のきしむ音が、広間に響いた。
有難うございました




