願い
続きですよろしくおねがいします
遺跡で、意識を無くした俺は、暗闇の中で目が覚めた。
水中へ吸い込まれた様な、足下に何も感じないこの感覚。
これは……、前にも経験している。
〝ハル……、アネスは?〟
暗闇が支配している視界の中に、彼女達は居なかった。
「ハルっ! 、アネスっ!」
大声で叫んでみたが、反応は無かった━━。
又、バラバラに飛ばされてしまったのか?。
不安だけが広がる中、目の前に光点が現れ、眩しい閃光となり目が眩んだ。
顔を上げ、目を開くと俺は池の傍に立っていた。
現実の光景ではない事は、音が何もしない事で判断できた。
しかし、ここは一体?。
『ここは……、私とあの人が暮らした場所』
頭の中で声が響いてきた……、この声に聞き覚えが有る。
ニクスの思念体からの物だ。
「あんた……、ニクスなのか?」
そう……、私は長い間、人の災いと成って来た。
異世界人よ、あなたに頼みが有る……。
ニクスは返事の代わりに、語り始めた。
何かを俺に頼みたいらしいが。
「女神のあんたが、俺に何を頼むというんだ?」
この私を、完全に滅し去って欲しい……。
今回、防げてもいずれ……。
私は、もうこの世界を傷つけたくない。
破壊の女神ニクスは、俺に完全な消滅を頼んできた。ラミカの故郷の地でも、この世界を傷つけたくないと言っていた。破壊を司る者が、それを否定している、彼女はこの世界で何に触れたのだろう?。
池の傍に、二人の人物が姿を見せた。
どう見ても、その姿は仲の良い恋人同士か、夫婦にしか見えない。
私と……、あなたと同じ異世界人。
神と人が、同じ生活形態をいとなんでいた?。
そんな事が可能なのか?。
破壊神の私を、彼の強さは圧倒的に凌駕していた。
私は、その強さに惹かれ、彼の傍に居る事を望み、
自らの力を滅し、人に転生して彼と暮らし始めた。
その本体が、アデル領の森に眠っていると言う事か。
暫らく一緒に暮らしていて、彼の力が失われている
事に気が付いたけど、もう私は彼を愛していた。
離れる気持ちには、成れなかった……。
ニクスと共に暮らしていた人は、俺と同じ様に、七名の女性から愛された異世界人。彼が力を失っていたと言う事は、七名の誰か、或は全員の愛を失ったか?。
そして、あの日が来た。
七名の女性から、彼は……、殺された。
一瞬、閃光が放たれ俺の目には、ニクスと彼が殺される場面が映っていた。七名の女性の声は聞こえないが、口々に何かを叫び二人を剣や魔法で、なぶり殺しにしていた。
彼女達の、唇の動きはこう語っていた。
この裏切り者! 、と。
力を失った彼には、七名の凶刃や魔法から、彼と妻となったニクスを守る手段は無かった。只、彼女の身体を庇い全員の恨みを一身に受け、やがてその命の火は消えていった。
一度は、愛されていた者から恨みの念で、殺された。
彼女達の恨みを受けた彼の辛さと、その要因と成ったニクスの想い。
どっちが辛かったのだろうか?。
彼が死に、彼女達は去っていった。
この時、ニクスはまだ生きていた、そこへ一人の老人が姿を見せた。
老人は膝を折り、ニクスに言葉を掛けているが、それを聞けなかった。
死に瀕した私には、神としての力が戻りかけている、
このままでは、私は彼を殺された恨みで、再びこの
世界を壊してしまう。
私に残った全てを使い、我の中に息づく命を成長させた。
その子を老人に託し、その血をわが本体には、絶対に
近づけぬ様に頼んで、私は命を滅した……。
この老人と言うのは、賢者の事なのだろう、幼い子を育てやがて大人になり、次の命を紡いでいく。その生まれた全ての子供達を、この世界の賢者は見定めてきた。
頼む、異世界人よ。
貴方の持つ刃で、今一度私を本体ごと、全てを滅して欲しい……。
子孫の血を持って、私を起こしその刃で、滅してくれぬか。
「それが、あんたの望みなのか……」
そう……、二度とこの世界へ戻って来ぬ様に。
「わかった、約束する……」
感謝する……、異世界人よ。
じきに、この空間から仲間と合流できる場所へと繋がるだろう。
「仲間と合流?、全員とか?教えて……
俺は、全ての言葉を話し終える前に、再び意識が遠退いて行った。
暗闇の空間へと戻された俺は、ニクスの言った仲間と合流する場所へ、繋がるのを待った。
その時は、不意に訪れた。
俺の身体は、見えない渦に引かれる様な感覚に、引き込まれていった。
「どうした?、もう抵抗する事は諦めたか?」
高位悪魔に対して、絶対有利で戦っているラクテルも、その強大な身体と魔力に決定打を欠き、倒しきるには至らない。空中戦を挑んでいるズグロにしても同じ、総合的な能力では、魔獣を圧倒している筈なのに、魔獣は常に私達を背にする位置で戦うため、ズグロは超大な魔力を放つ事が出来ない。
二人から引き離された私達四人は、既に……、じり貧な状態に追い込まれている。空中に待機している黒衣達は、私達が黒球を破壊する度に、新しく球を生成して放ってくるのだ。
「はあ、はあ、はあ……、これは厳しいわねぇ」
「ロゼ様、まだ……、やれますよ!」
「ええ、私だってまだまだ行けます!」
「皆さん、もう少しです頑張りましょう!」
弱音を吐いたつもりは無いのに、身体は動かなくなっている。
他の三人も、既にボロボロの状態で、言葉は勢いを保っているが、見るからに限界なのは、誰の眼にも明らかに成って来た。
「ユキヒト様……、もう一度……」
「私らが……、こんなに危ないってのに、何してんだか……」
私は、戦っている内に彼が掛け付けてくれるのでは?、っと期待をしていた。
勿論、いまもそれは変わらないのだけど。
「流石に……、間に合わないのかな」
殺されかけて、彼への想いが募ってくる。
ユキヒトに逢いたい……、と。
『最初の威勢は……、無くなった様だな、ではそろそろ終りにしよう』
四人の黒衣は、両腕に黒球を二重に生成させている、ひとりが倍の二十の球を浮かび上がらせた。あれを今放たれたら、私達にはもう回避する余力は無い。
私達が倒れたら、ズグロもラクテルも力を抑える必要は無くなって、すぐに倒してくれるだろう。最悪の破壊の女神復活は、彼女達が防いでくれる筈。
それには……、この場に居ない三人もきっと。
だが、最後に一言叫んでやるっ!。
『さらばだ……、皇女殿下っ!』
ユキヒトのぉ……、 馬鹿あ━━━━!!
黒衣が腕を振るう……、その時。
空間その物を揺るがす振動が起き、黒衣達も空中でバランスを崩した。
振動が収まった後、私達の目の前には、良く知った顔が姿を見せていた。
「ユキヒトっ!! 、アネス、ハル!」
「ユキヒト様っ! 、やっと来てくれた!」
「助かったあ……」
「ユキヒトさん……、遅いです!」
ニクスの言った合流場所は、仲間全ての集まる場所だった。
一人は知らない者が、巨大な奴と戦っている。
空中戦をやっているのは、ズグロか……。
そしてロゼ達は……、ボロボロの姿で俺を見て、涙を浮かべた。
「ユキヒト……、私ら死に掛けてんだけど?」
「ごめん……」
皮肉を言ってきたロゼの姿も、酷いものだった……。綺麗な金髪も顔も、俺達を欠いた状態で死闘を繰り広げていたのが、すぐに分かる。
「ぎりぎり、間に合ったのか……、ハルみんなの治療を」
「はいっ!」
本職のハルの治癒魔法は、彼女達を一気に回復させた。
不意な事故で、引き離された俺達は今、ここに再び総員が揃った。
「ほぉ……、ぎりで異世界人は間に合ってくれた様だな」
「さてっ! 、総員そろいよっ! 、これまでの借りを返さなきゃ!」
「ですねっ、かなり良い様にやられましたしね!」
『くっ、間に合ったか……、だが、まだ終わりではない!』
ニクスとの約束も有る。
その約束を果たす為にも、黒衣はこの場限り、俺達が殲滅させる。
ありがとうございました




