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女難危行・拉致した皇女と六人の嫁  作者: 雛人形
悲しき破壊の女神 一
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分断

宜しくお願いします


 数日間、黒衣の痕跡を追っていたラケニスからの報告を聞く。


 婆さんが使い魔を飛ばした日から約二日、黄泉へと夜叉姫に拉致られ、そこでも面倒事に巻き込まれてた。神とは思えぬ所業に付き合わされ、只その御陰?で現世の事が一時的に頭から消えていた。


 黄泉から戻ってからは、本来危惧していた事が急速に蘇り、ラケニスからの連絡を今か今かと、待ち侘びていたのだ……。


 「結局……、主らと因縁の地に居るようじゃな」

 「俺達が、行った事の有る場所にか……」


 誰かからその身を隠すとしたら……、普通は相手の知らない場所や、関係の無い場所を選ぼうとする物ではないだろうか?。まさかそんな盲点を衝いていようとは、俺達に関連の有る地に潜んでいたとは思いも寄らなかった。


 「で、結局……、何処で使い魔が消えたの?」

 「アデル領の森じゃ……」

 「ええ! 、伯母様の屋敷の近く……どうして?。あそこの森には、ニクスに纏わる物なんて無かった筈だけど……」


 アデル領……、あの地で起きた悲劇を俺達が忘れる事は無い。

 俺達は、掛け替えの無い仲間を喪った……。

 ロゼに至っては、大好きだった伯母も同時期に喪っている。


 その事を決して忘れる事はしないが、もう俺達が引き摺る事も無い!。


 そのアデル領は、両親縁(ゆかり)の地でも有る。だがその森には、ニクスの伝説は無いとロゼは言う。だが、何かあるから使い魔が戻れなかった……のではないのか?。


 「元の伝説や伝承が長い年月なかで、別の物に変わって行ったと言う事は、良く有る事じゃ、ロゼよ主もその伝承を知っておる筈じゃぞ」


 「え……、私も知っている?、私が知ってるのって……」

 ロゼは、ラケニスの言葉で何かを思い出そうと、首を傾げ記憶を辿っている。


 「子供の時に伯母から脅された話……、怖い魔女が森の奥に眠って……

 記憶を辿って言葉を続けていくが、その途中部分で皆も気が付いた。


 「破壊の女神が……、怖い魔女という伝説にすり替わった……のね」

 「わしの元には、原初の一文が残っていたが外では違った様だの……」

 

 今になって考えてみれば、ニクスの思念が呼び覚まされたのは、大公の屋敷が在る敷地の地下での事だ。奴らは前からあそこに居て、大公を騙し俺達を呼び寄せた。


 元々奴等は、直ぐ傍に潜んで此方の様子を窺っていた……。

 本来、もっと早い段階で仕掛けて来る算段をしていた筈だが、単独で動いてた黒衣の奴に出し抜かれ、ニクスを連れ去られた上、更にブラッディの件で俺達まで、この地を離れた。


 長い期間待ち侘びて計画した物が、横取りされて瞑れてしまった。ニクスの行方と、本物の器を捜すのに半年を要した……、って処か。

 

 「その森に纏わるニクス……、魔女の話ってどう言う物なんだ?」

 「うーん、子供の頃に聞いただけだし……確か、眠っている魔女が……

 「魔物の影無き森の奥、永遠の眠りに就きしニクスは、その血を受け継ぎし魂で再び目覚める……」

 

 ロゼが微かな記憶を辿っている最中に、ラケニスが原文を繋いだ。


 「此れが、ニクスに纏わる数ある伝承の一文じゃが、魔物の居ない森と言えば、アデル領の森しか思い浮かばぬ。使い魔を送ってあったが戻って来ぬ、他は戻って来たがの……」


 ロゼの知ってる魔女の話の場所に、ニクスの身体が在る。その場所に行き、思念体と血を継いでいるハルが揃うと、何か起こり破壊の女神が蘇ってしまう……。


 破壊の女神としてニクスが目覚めた場合、ハルはどうなってしまう?、伝承の一文には血を継ぎし魂で、と在った筈。ハルが命を喪ってしまえば、必然的に俺達の力も失われる結果と成り、それはニクスを止める者が居なくなる……。

 

 思念体が連中の手の中に有る以上、ハルだけは絶対に渡せない。

 連中が潜んでいる場所に、乗り込み思念体を奪還、若しくは開放する。

 その為に、ニクスの捕らわれている場所を一刻も早く、突き止めたい。 


 「使い魔が戻って居れば、居場所が分かったのだがのぉ……」

 ラケニスにも、ニクスの身体の在る場所までは分からない様だ。


 「伯母様の屋敷の古い書庫で、何か見付かるかもしれないわ」

 「領地の森の伝承だし……、期待は持てますね!」

 

 ラミカの意見の通り期待が出来そうである、皆の動きが確定した。ハルをニクスの身体の傍にと、近寄らせるのは多少の不安が有るが、俺達と離れる方のが危険が増すのは誰もが想う処だった。大公の屋敷で居場所について情報が入るのを期待して、再びアデル領へと向かう事にする。


 「あ……、先に戻っていて、私も直ぐ戻るから」

 ロゼは、又一人で塔に残りラケニスと話をしている。


 「何の話しをしてるんでしょ……?」

 「さぁ……、大した事じゃないって聞いてるけど……?」




 アデル領、森林内某所━━。


 地下へと続く階段が終ると、更に真直ぐに通路が延びている、大人が二人並んで丁度良い程度の通路である。それを進み続けている内に、僅かに蛇行しているのが分かるが、通路自体は一本道であった。何処までも続いている様にも感じるが、前方に灯りが見えてきた事で終点が分かる。


 通路の終点には巨大なホールが待っていた。それは見た瞬間に劇場を想わせる造りに成っていた。中央に向かって緩やかな勾配になっており、その中心には薄緑のクリスタル状の物が見えた。そこへ向かって階段が続いている。


 八名の黒衣の者達がそこに居た。

 

 薄緑のクリスタルの内部には、女性が入って居るのが分かる。

 

 彼女が……、ニクス本人であるが生命活動は無い。気の遠くなる年数を経ているにも関わらず、彼女の姿は若く美しいままに保たれている。何も起きなければ、此の状態で永遠に眠り続ける筈……。


 一人の男が口を開いて話を始めた。


 「森の中を妙な使い魔が、この場所へと接近してたが……」

 「始末したのか?」

 「無論だ、しかし……、使い魔から感じた魔力は……」

 「誰の放った物か見当は付いているのか?」


 使い魔を始末した黒衣は、暫し沈黙していたが。

 記憶の一部を引き出せた様だ。


 「ふっ、そうかあの魔力は……、ラケニスの物だ!」

 「第二の魔女……奴が何故この森を探る?」

 

 黒衣の者達全員が、状況を把握出来ている訳では無い様だ。

 一人の黒衣が自分達の状況を、語り始めた。


 「ニクスの器たる血を継いだ女は、異世界人と一緒に居る、ハグレの一人を殺したのも奴の仕業だ。面倒な事に、異世界人達はラケニスと親交が有る。あの魔女の魔力を感じた使い魔が、此の地を探っていたと成ると、伝承を嗅ぎ付けたと見るべきだろうな。彼等が此処へやって来るのも時間の問題となったな」


 「厄介な事に成ったな……、異界人には下手に手が出せんぞ?」

 「万が一、ここへを探り当てやってきたら……我等の悲願が潰える事に!」

 「我等の悲願を、異世界人達には邪魔させぬ……」

 

 黒衣の者達は、話を聞き終えると散って行った。

 



 帝国領、イリスの屋敷━━。


 塔からロゼが戻って来た。

 ロゼとラケニスの二人だけの会話が、どうにも怪しい……。

 此れからの事を考えたら、二人が戯れを企んでいるとは考え難いが。


 アデル領へと向かうが、取立て用意する物も無い。

 転送の魔法と同じで、イリスの次元の扉もイメージが正確であれば、目的地を選べる。早速彼女に扉を開いて貰う。


 「では……開きますね」

 

 イリスが何時もの様に扉を開けば、その先はアデル領、元大公の屋敷前だ。

 ゆっくりと手が振られ扉が現れ、その先へと進む……。


 バチッ━━━!


 雷に打たれる感覚とはこう言う物か……。

 そう感じた瞬間に、意識が潰えた。



 「此処は……、どこよ?、ってか皆は?」


 記憶を失う前の事を、思い出せ━━━っ!。


 確か……イリスの屋敷の前で、そうだ彼女が扉を開けて……。

 私達は先に進んだ……、その後雷に打たれた様に痺れて意識が飛んだ……。


 「それより、皆何処よ━━━━!」


 頭がテンパっていたせいで、前方の林ばかり見渡していた。

 ハッとして、後方に視界を移動させる、四人が転がっているじゃないの!。


 急に立ち走ったせいで、私は転げそうに成る。

 大きく手足をふら付かせながら、四人の傍へと駆け寄った。


 「マリネっ! 、イリスっ! 、ズグロっ! 、ラミカっ!」

 一人ずつ揺すって大声で叫び上げると、皆が目を覚ましてくれた。


 「ロゼ様……私達どうなったんですか?」

 

 まだ事情が飲み込めていないマリネは、意識がハッキリしていない。

 他の三人も同様で、まともに会話出来るまで、私は待つしかなかった。


 「皇女殿下……、此れは一体何が?」

 元が龍のズグロでも、不意打ちであの衝撃は、きつかったみたい……。

 一番、事情が分かりそうなイリスの回復も、そろそろ良いかな?


 「ねぇ……イリス、此れは何が起きたか分かる?」

 「すいません……、私にも訳が分かりません……」


 この中で彼女に分からない事は、私等に分かる筈は無い……。

 今のこの状況下で、確実に判明している事実は……。


 「私達……は、二組か分からないけど、分断されちゃったみたい……」

 「あ━━っ! 、ユキヒト様達が居ない!」

 「マリネ……、今頃気が付いたの?」

 「す、すみません……」

 「ハルさんとアネスさんも……、居ませんね」


 私達は、身体に異常や怪我が無い事をお互い確認した後、さぐれる範囲を手分けして、三人を捜して廻った。けどその結果は、やはり周囲には彼らの姿は見当たらなかった……。


 捜索中に私達に分かった事は、今居る場所が何処かの孤島だと言う事だけ。

 島の周囲は、水平線を見渡せる程に海しか無い!。

 

 「何処かの無人島って事しか、分かりませんでしたね」

 「そうね……、これはお手上げね……」


 転移魔法なんて、こんな場所から飛べる筈無い……。

 

 「船を造って島から……

 「誰が造れるのよ?、造れたとしても……、方向が分からないわ」


 進む方向が分からないから、ズグロに乗って飛び立っても、船と同じ運命を辿る事になる。冗談抜きにして、私達には打つ手がないっ!。


 私達もだけど、ユキヒト達はどうなっているだろう?、三人一緒かな?。

 こっちが五人て事を考えたたら、一緒の可能性が高いと思うけど。

 

 「失敗も……、当然有りますがもう一度扉を開いてみます!」

 「凄く怖いけど……、それしか無さそうよね」

 

 私達は上手く行く事を祈り、扉を開く事にした。

 イリスが手を振り扉を開いた……。


 「入る直前に龍気を張ります、又、衝撃が来ても防げるかも」

 「ええ、頼むわズグロ……」

 「はぁ……、心臓が……、凄く怖いです!」

 「私も……」


 私達は成功する事を祈り……、目を瞑って一気に中へと足を踏み入れた!。



 「ん!、何じゃ?ぬしら何か忘れ物でもしたのか?」

 

 性悪婆さんの声が……天使の囁きに聞こえた気がした!。

 

 「やった━━━━!戻れたぁ!」

 「ふぅ……、上手く行きました」

 「あははは……、助かったぁ」


 私達は絶海の孤島から無事生還して、嬉しさを味わった。

 少し落ち着いてから、何が起きていたかラケニスに説明した。


 「ふむ……、理由がわからんのぉ、こんな現象はわしもしらん」

 「ユキヒト様達は……、無事でしょうか?」


 私達は辛うじて帰還する事に成功したが。

 彼らには扉を開く手段は無い、無事で居てくれると良いのだけれど。


 ユキヒトを想うと……、胸が締め付けられて来た……。


有難うございましたー

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