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女難危行・拉致した皇女と六人の嫁  作者: 雛人形
悲しき破壊の女神 一
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宝刀

続きですよろしくお願いします


 主を失った城は。

 ただの魔物の巣窟に他ならなくなった━━。


 無残な焼死体となった従者の横に、リリカの冷たくなった亡骸を横たえてやる事しか、俺達には出来なかった。一旦は、二人を埋葬をとも思案したが、二人が何時も一緒に居たであろう部屋で、永遠の眠りに就かせてやろうと、意見が収まった。


 彼女が、もし温和な性格だったなら……。

 俺達が、いや俺が怒りを覚えなければ……。

 第一の魔女は……、死なずに済んだのだろうか?。

 

 過ぎた事象を仮定の話で蒸し返したところで、何が変わる訳でもない。

 遠路、第一の魔女を訪ねこの地へ来たが、俺達は情報入手に失敗した。

 これが事実で在り、時を遡らなければ変えようが無い。


 「あ……、城が!」

 

 リリカの城を脱し、雪原を歩き出した時、マリネが城の異変に声を上げた。


 「魔女の城が、崩れていく……」

 「主が死んだ影響か……」


 その城がいつ建てられたのかは知らないが、かなりの年月を経ていた。

 魔女が死んだせいで、魔力も消え城に本来の時間が降り掛かったのか?、砂で出来た城が崩れ去るように、静かにその姿を変えて行った。


 「あの瓦礫の山が……、彼女の墓標代わりかしら……」

 「何か……、凄く悲しい気がします……」

 

 ハルが悲しい声で呟いたのは魔女リリカが、俺達とラケニスの様な関係に成れないまま、死んで行った事に対しての事だったと思う。 


 永久凍土に出来た、瓦礫が堆積した山。

 それが、一万年を生きた魔女の墓標と成った……。


 あの山も何時かは、この銀世界の景色の一部と成り溶け込んでいく。

 そこに眠る二人の事を知って居るのは、此処に居る八名だけしか居ない。




 「そうか……、あの女が死によったか……様ぁないのぉ……」

 「俺が彼女の覇気を失わせて……」


 第一の魔女の死を伝える為に、ラケニスに逢いに来た。

 様が無いと吐き捨てたが、彼女も感傷に浸っているのは誰もが気が付いていた。見た目の容姿は、ラケニスと違い少女その物だったが、年齢は倍だ。憎まれ口を叩き合いながら、数十年も友人関係を持つ者達だって居る、五千年の間に親交が在ったとしても、不思議じゃない……。


 「小僧が、その場で怒りを見せんでも、あ奴の性格はよう知っとる。城内で対面した時に、間違い無く主らとぶつかって、喧嘩紛いな事に成ったであろう事は、自明の理じゃ」


 ラケニス言葉も、仮定の話に過ぎない。

 だが、五千年の年の功なのか?、不思議と気が楽に成った。


 「でも……、此れでニクスを捜す手立てが、無くなってしまった」

 「振り出しに戻ってしまったわね……」


 俺達が気落ちしている中、ラケニスは話を切り出した。


 「戯けが、そう気落ちする出ない。僅かじゃが奴らは手掛かりを残したわ」

 「え?、手掛かり?」


 誰もが暗い気持ちで、言葉を失っている時に希望を繋ぐ言葉を聞いた。


 「実際、あの女が知ってたか分からなかったが、殺された事で確実と成った」

 「そう……、居場所を捜させない。あいつもそう言ってたわ」

 

 居場所は語らせない為に、彼女を殺すスキを窺っていた。

 確実にその居場所を、リリカは知っていた……。

 だが、それだけでは……、何の進展にも繋がらない……。


 一瞬期待したが、やはり……。


 「戯け! 、わしが知らんのは実際にニクスの起きた事じゃ、女神に纏わる伝承の類は幾らでも知っておるわ、そこへ使い魔を飛ばしこん跡を調べる」


 「そうか、奴等が何かやってるなら、何処かで引っ掛かる……」

 「最初から、そうしてたら……早く分かってないか?」

 

 ラケニスも、ニクスに纏わる伝承を知っていたのなら、最初から使い魔飛ばして調べても良かったのでは?、そう想って口に出して見たが……。


 「このぉ、戯けがぁっ! 、ニクスに纏わる伝承は百を優に超えて残っとる、簡単に調べが付くなら最初からやって居るわ! 」


 「うひっ! 、そんなに在るのか……」

 「なかには、嘘や創作も多いでしょうしねぇ……」

 「確かに、それを個別に調べ上げるとなると、我々ではなぁ」

 「私達では、それが真実かも調べようが無いです……」

 

 全てを調べて居る内に、奴等の痕跡が残っているのを見つけ出す。

 その作業を俺達が手分けしてやるには、ハルを守る事も視野に入れる必要が有るため、非常に困難、いや不可能だった。


 「使い魔に調べさせる理由は、主らを分断させぬ為じゃ。主らが固まっている限り、奴らは手出し出来ん。じゃからわしが代わって、全てを調べてやろうとしとる訳じゃ」


 力説、ご尤もである、此処は彼女に頼るしか無い様だ。


 「大変だろうけど、頼むよラケニス……」

 「無論、承知しておる。但し……、此れだけは時間が必要じゃ、何か掴めるまで主らは、ハルを奴等に絶対に渡さぬように守る事に専念せいっ」


 確実に痕跡が分かる保障は無い。

 しかし、今は僅かな可能性を信じラケニスに託すしかない。


 俺達のやるべき事は、ラケニスに言われた通りだ。奴等がハルを攫えぬ様に、彼女の身を警護する事に有る。その為には、八名は常に行動を共にしなければ成らない。


 暗礁に乗り上げた事も、これで脱する見込みが出てきた。

 ラケニスからの知らせを待ちながら、ハルを警護する。

 俺達のやる事が決り、塔を退出しようとした。


 「ロゼ……主は、少し残って居れ、話が有る」

 「へっ?、私に?」


 何の話か知らないが、ロゼを残し俺達は、塔からイリスの屋敷へと戻って行った。

 離れるなと、言った事も在りそんなに長話でも無いのであろう。


 「そんな事……本当に可能なの?……」

 「うむ、安心せい五千歳は伊達に生きておらんわ」

 「ぶっ、自分で五千歳と言ってるし、……いいわ頼みます!」

  

 ロゼが暫らくしたら、戻って来た。

 何の話をしたのか聞いてみたが……、誰にも教えてくれず。


 「内緒よっ!」


 っと、一言だけ答えて笑っていた……。

 

 「女って……、何でこう秘密にしたがるのかな?」

 「あらぁ……、秘密が有るからいんじゃないですかぁ」

 

 っと、ハルからも言われてしまった……。


 ハルを警護すると言っても……、何を如何するのか?。

 話をまとめる為に、イリスの隣の空き部屋へ入ると。


 目を疑う奴が、待っていた。

 余程、俺達は面倒事に巻き込まれるらしい……。


 「げぇっ、エロおん……、じゃない夜叉姫様?」

 「彼の世から、そんな気軽に来れるのか?」


 部屋の中に、黄泉の王が一人夜叉姫が俺達を待っていた。

 正直、見た瞬間に何をやらされるのか……、不安しか感じなかった。


 「お前達に、特に……異界人のお前に頼みが有る、来て貰うぞ」


 そう語った後、うむも言わさず魔法陣を開き俺達は、それに飲み込まれた。

 多少マシだったのは、今回は誰も尻から落ちなかった事位か……。



 「頼みと言うのはな……


 夜叉姫の頼みとは、俺に渡した刀に関わる事でもあった。

 その宝刀を誰に託すかは、夜叉姫に任されてはいた。しかしその相手が人間、しかも異世界人に渡しては、その存在自体が危険な者に、更なる超絶な力を渡す事に成る。


 現世で最悪の状況となった場合、それは黄泉の世界までも危険に陥る事になる。真にその者が、宝刀を託すに値するか、見定めたい。


 「流石に六名の王から、証明せよと迫られては、わしも無下に出来ぬ」

 「で……、俺に如何しろと?」


 この時点で、既に……、面倒事を避ける事を諦めていた。

 何をやらされるのか分からないが、さっさと片付けてしまうに限る。


 「何をさせるのか、わしも知らん……、済まんな……」


 各王が集う場で、人間であり異界人でも有るこの俺に、宝刀を渡した事を報じた。一旦その場は、事無きを得て解散となったらしいのだが。再度、緊急の召集を掛けられ、宝刀を渡した相手を呼び出して、その者の真を確める必要が有る、っと決議された。


 「まぁ……、皆がその神殺しの刃を、恐れるのは分かるがな」

 「神殺しの刃……て、この刀ってそんな物騒な物だったのかよ……」

 「どうりで凄まじい筈よねぇ……、魔人を両断だもの……」


 この刀の前では、如何なる魔法も神力も、全て切り伏せられる。

 リリカの結界を斬り、彼女の魔法を切り伏せ消し去った事も、氷の魔人を紙の様に切り裂いたのも、これで納得が出来た。しかし、その後で夜叉姫から出た言葉で、皆は顔を強張らせる事に成った。

 

 「但し……、一太刀振るう度に、その者の命を喰らい続ける……」

 「ちょっ……、そんなヤバイ刀を何故渡したのよ?」

 「ユキヒト様! 、そんな刀返して下さい! 、私……もっと」


 刀の特性を聞くや、ロゼとマリネが即座に反応して返した。

 しかし……、本当に命を削られている?、俺には自覚が何も無かった。


 「その刀には……


 夜叉姫が言葉を続け様とした時に、屋敷の武官が走り寄ってきた。

 

 「夜叉姫様、王の方々がお目見えしました!」

 「分かった、下がってよいぞ」


 武官が、その場から退くと、長い廊下を此方へと向かって来る一団が見えた。


 「ふむ……、来た様だな」


 十人程の武官を引き連れた王が二人この場へと、登場した。

 この二人により俺達、いや俺が試される様だ……。



有難うございました

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