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女難危行・拉致した皇女と六人の嫁  作者: 雛人形
悲しき破壊の女神 一
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魔女の城へ

続きです、よろしくおねがいします!



さて……、どの様な裁定が下るのだろうか……。

 早朝、ハルが部屋を出て行った後の事だが、昨晩六名から目撃された件について、一人で自らに下るであろう判決を予想していた。


 階段を下りる足が重い、廊下を歩く足が鉛の様だ……。

 決して悪事を働いた心算は無い。

 ロゼと一晩共にした時はには、目撃されてるのを知らなかった。


 昨晩は、明らかに目撃されているのは確信出来ていた……。

 皆が居るであろう広間へ、後数歩の位置に来て足が止る。

 

 〝はぁ……戻ってアネスが蹴り飛ばしに来るのを……待つか?〟


 本気で逃げようと一瞬動き始めたが。

 それでは余りに情けない! 、大人しく判決を受け……


 「何時まで廊下でボケッとしておる、馬鹿者━━━!」

 「うあああっ!」

 「ささっと、朝食済ませて用意せんか!」


 廊下で躊躇している所を、アネスから怒鳴られた!。

 恐々と顔を覗かせると。


 「おはよう……偶には、早起き出来ないの?」

 「ユキヒト様、お早う御座います!」

 

 あれ……、一番睨まれそうな二人が普通……?。

 ハルも何事も無かったかの様に挨拶をしてきた。


 「ユキヒトさん、お早う!」

 「皆、早いね……、お、お早う……」


 朝食の後に被告席へと連れ出されるパターンか?、しかし食べ終わっても、その気配が無い。何も責められないのも、帰って怖い物があるのだが、連行される雰囲気が訪れてこない。


 どうにも不気味な雰囲気で気持ち悪いが、連行されずに済むらしい。

 

 ずっと先になっての事、此の朝に、針の筵に成らずに済んだ理由を知る。


 

 イリスの屋敷から一路凍土へ向け、地竜は駆け始めた。

 

 「最初は入り口の監視所へ向かうので、私が先頭て案内しますね」

 「そうだな……、此処はイリスに頼むとしよう」


 移動の際の先頭は、此れまでアネスがやってくれていたが、帝国領には詳しくない。そこで今回は、アネスが道案内で先導する事になった。


 以前に、ラミカ親子が居た城が有る森を、右手に臨んでいる。

 今回は凍土を目指している。山間の道を北上して行くが、森の傍を通る時やはり思い出が在るのだろう、ラミカは暫らく森を眺めていた……。


 遠くに万年雪を頂いた山脈、夜間部の砂利道を沿うように流れる大河。

 凍土へと急ぐ行程で無いなら、間違い無く止って見物している。


 男の俺が景色に虜になっている、当然女性達も雄大な景色に視線を移していた。本当に一時止って、皆で景色を背景に一枚撮りたい処だった。

 

 残念な事に、この世界に来た時に携帯等は失っていたせいで、記念撮影とはいかない。まあ、仮に持っていたとしても、何れは充電切れで見れなく成るが……。


 道は雄大な景色を後方へと追いやり、深い森林のへと入って行く。森林地帯を抜けると、切り立った崖の合間の道へと変わった。先頭を走るイリスの地竜が足を緩め、速度が落ち監視所が迫っている兆候が見えた。


 大きな洞窟の手前に、監視所が見えた。

 当初の通り、此処で地竜を置いて歩きと成るが、城に着くまでに一度一泊する。翌日に、半日程歩けば城へと辿り着く筈だ。寒さを凌げる場所はアネスに任せる、俺達は、此処で最低の物資を受け取り、凍土へと抜ける洞窟へと入り極寒の地を目指した。


 洞窟を抜け光差す出口を潜った。

 

 「凄い……、何て綺麗な……」

 「綺麗ですねえ……、こんな場所が在ったなんて……」


 ロゼとマリネが感嘆を上げている、俺達もそれを見た瞬間に虜にされた。


 遥か遠方に尖った山々が見え、その頂は薄っすらと岩盤の色を残すも白。蛇のようにうねり蛇行する川、両側には樹木が拡がり僅かな緑が見えるが、雪の枝葉を成し巨大な霜柱の様な光景を魅せている。


 白く広がる台地には、一変の邪魔する物が無く、白一色。

 此処に、人の生きた存在を示すものは皆無である。


 日暮れ時には、あの山頂を紅く染め美しさが映えるのが、眼に見える様だった。

 この光景を頭に焼き付けるしかないのが、実に勿体無い気がする……。



 「あの山の先に、第一の魔女の城が在ります」


 俺達が見惚れている目の前の山々を指してズグロが言った。

 凍結した川を渡り雪の林を通り抜け、大雪原へ出る。


 その先は、山を迂回して反対側へと進めば、城へと辿り着く。誰もが足を止め見入ってしまう、秀美なこの風景と相反し、数多くの危険な魔物が徘徊している場所だった。


 先ずは凍結した川を渡る必要が有るが、その透明な氷の川は凍結している事を疑う程。足を着け凍っているのを実感しないと、流れている様に錯覚すら起こした。


 樹氷の続く林を通っている時に、此処が魔物の地であった事を衝き付けられる。

 先頭を行く、ズグロが立ち止まった。


 「手強い相手です……気配を察知させずに……囲まれました」

 「なんだと!」


 ズグロの言葉で皆が身構え、アネスは周囲を見渡した。

 銀世界には何物も、音を立てる物は無い様に思えた……。


 目の前の雪が盛り上がり巨大な姿が、現れた。

 薄灰色の顔はネコ科の物だが、体躯は馬鹿でかい四メートルは有りそうだ。

 

 「雪虎……、こんな所で生息していたのか」

 「こいつらって、随分と昔に絶滅したはずよね?」

 「してなかった様だな……」


 絶滅したはずの魔物が此の地に居た。


 「こいつ一体でも、数十名の騎士が殺されてきたのよ……それが」


 最初の一体が姿を曝すと、次々に雪が飛び散り仲間が現れた。

 完全に包囲されている、五体が俺達を中心に円を描き周回を始めている。先ずは一体目がタイミングを計っているのか?、此方も円陣になった。


 一体目が雪を巻き上げ跳ねた!。

 ズグロの正面……、だが元が巨大な白竜である、眼光ひとつで地に伏せ、後ずさる。二体目、三体目と続き跳ね飛ぶが、その巨大な牙を剥き出し迫る口腔へ火球を叩き込み、火達磨と成り地へ落ち雪を溶かす。


 三体目の雪虎は、雪中から突き出た氷柱に阻まれ転倒した処を、矢で眼を射抜かれ悶えた処を焼かれ、やはり雪を溶かしながら絶命した。


 お馬鹿な魔物達なら、此の後も仲間の復讐に飛び込んで全滅する。

 格差を感じたのか?、ゆっくりと後ずさり撤退していった。


 「賢い魔物だわ……、格の違いを感じて逃げていった」

 ラミカは短剣を収めながらも、遠ざかる雪虎を見ていた。


 こんな所へそうそう人が来る物ではない、腹を空かせて待っていたのだろうけど、やって来たのが俺達だった事は、奴らに運が悪かった。


 樹氷の林を抜ける間に、もう一度別の集団が襲ってきたが、同じ様に撃退してやった。三度目の時は、こちらから蹴散らし道を開いた。此れまで遠征隊が此処へ来ても恐らくは、この雪虎達にやられていたのだろう。確かに普通の騎士達や、歩兵部隊では相手に成らなかった筈。


 此方は龍王達と戦った身だ。今更、通常の魔物如きは相手に成らない。

 そう思っていたが、意外な苦戦を強いられる相手が居た。


 魔族が居た……。


 「冗談でしょ……、誰がこんな場所に魔族を召喚したのよ……」

 「私……、魔族なんて初めて見ました!」


 此の世界に生きて来た彼女達でも、魔族にお目にかかることは無い。

 奴らは、魔法も使えるし武器も振るう、魔物とは格が違う……。


 俺の居た世界へと導く魔法陣とは別に、魔界からの召喚陣。

 古の魔法は存在を肯定されて入るが、おいそれと行える物では無いらしい。

 半端な者がそれを行えば、召喚された魔族からその場で命を取られる。

 

 「此の地の魔女が、番犬代わりに呼んだとしか思えんな……」

 

 その黒い身体のデーモン種とやらが、十体程が行手を阻んでいる。一体に気が付かれたら一斉に襲ってくるだろう。そうなると、誰かが遅れを取る恐れも有る。時間を掛ける事も避けねば成らない、イリスの魔法が途絶え寒波で身が凍え、やはり遅れを取る要因と成る。


 十対を短時間で一掃するには……。

 力の解放を持って魔族十対を殲滅する。


 確実に殲滅するには、誰かが囮となり、一箇所に固める必要が在る。

 当然、その役は俺が請け負う。


 「でも一時的に、全部の攻撃を集中して受ける事になるぞ」

 「疾風の魔法なんか、すぐ切れて持たないわよ?」

 「いくらユキヒト様でも……、大怪我したら、脱出が出来なくなりますよ!」


 一人に攻撃を集める為に、回復役は此の場を動けない。

 怪我を負っても、癒す魔法は来ない……、ラミカの翼で脱出する前に、致命傷を受ければそこで俺は、やられてしまう可能性は高い。


 だが、戸惑っている時間は勿体無い。

 「マリネ頼むよ……行って道を切り開く」

 「分かりました……ユキヒト様」 


 マリネの剣を手に魔族の中へと切り込んで行く、疾風の時間は僅かしかない。一番端の魔族を目指す、奴等の索敵範囲を端で霞め、見事に囮役は演じ切れた。


 俺を目掛けて黒き光の矢が飛んで来るが、大きく回避行動を取る事は出来ない、剣で捌いていく。十体から完全包囲をされた。これで魔族を一纏めには成功したが、全ての投槍を弾くのは不可能となる、ヤバイのは一斉に槍を投げられ事だが、その行動をデーモン種達は取り出した。


 『ユキヒト様! 、逃げてっ! 、避けれません!』


 悲痛な叫びを上げるマリネの声は、奴らが黒い槍を放つ切っ掛けとなった。

 黒い十本の黒き槍は、俺を目指し放たれた……。




有難うございました。

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