森林の街
よろしくおねがいします!よんでみてください
森林の街ゾーイ、元々はエルフの小さな村だった所へ人間の開拓者が訪れ、大きくしていった。
最初は人間が不必要に木々を伐採したり無駄に魔物達を刺激して襲撃を受けるのではないかと、反対の意見が多く共存はトラブルを招いた。しかしながら人の技術力はエルフ達には無い物で、日々の生活が安全でより快適に過ごせるように成りだした事で、表面上は平穏を装っている。
「凄い田舎の村を想像したけど、
デカイし、人通りも多いな」
最初はその通りの村だったが、段々と他種族も訪れ今では立派な街となり、人口も千を越える程になったのである。異世界に来て初めての街、今し方抜けて来た森同様にその全てがユキヒトの目を惹き付けている、その中にあって最大に目を見開き、見ていたのが当然エルフ族である。元の世界では架空の存在でありこうして目の前を歩く姿を目にする事等、決して無いのだ興味津々で行き交うエルフ達を目で追い倒していた。
《はぁーやっぱエリフって作り話と同じだ》
《男も女もきりっとして、綺麗な顔つきしてるわ》
暫しエルフの美貌に捕らわれながら街を散策していると、人間とそれ以外の種族の住人も以外と多く見える、その中でエルフ以上にびっくりしたのが亜人である。人と獣の混血?いやそんな事は無いだろうなと、なら元々そういう種族がこの世界には現存している事になる。
《異世界凄━━ぇ》
異世界のあまりの違いに興味を引かれ、疲れ果てていた事を、当初の女占い師への怒りすらをもをすっかりと、頭の隅っこへと忘れ去っている。思い出した所で今何が出来る訳でもなく、腹だたしくなるだけで何の利もないのだ、が、別の事を思い出すことになった。
グキュルルルウゥ
《ダメだ! 腹減りすぎた!》
何処か適当に座る場所を探し、貰った弁当を食べるかときょろきょろと見渡して居ると、街の一角に休憩出来そうな物を見つけた。
《はぁー、やっとゆっくり出来るー》
見つけた場所へと足を運び、石造の台座へドスンと座ると、奥さんから貰った弁当を早速取り出し食べ始める、作って貰ったホットドックの様なものを食べ散らしながら辺りを物色、後ろへ仰け反りながら見上げると女性が両手を広げた石造がある。
《ふーん、コレはこっちの女神か?》
珍しい物を見て散策し座り込んで休憩して空腹を満たした、次にくるのは。
《やべっ……ねむ……》
緊張から解き放たれ、疲れを取る為に座り込み空腹まで解消された。
睡魔が急激に襲ってくるのは致し方ないが、無用心過ぎた。
食事をしている時から、ずっと注視されていた事を気が付かなかったのはやむ得ないとしても、貰った巾着にはなけなしの金銭が入っている、それを腰にぶら下げたまま眠り込んだのは迂闊であった。ユキヒトの後ろからそっと近寄り、腰の巾着の紐を素早く外し、手で握り締め脱兎としていく小さな影。
《間抜けがあ、寝てて儲け儲けっ……》
思わず手に入った小遣いに意気揚々と走り去る子供だが、世の中甘くない。
「だああ━━くそっ、
放せこのぉ━」
襟首掴まれ緊急停止させられた。
「ふむ、放してやらんでもないが━
スッた物渡すならだ、嫌ならこのまま警吏に…」
「分かった分かったぁ━、
警吏はかんべん」
巾着を渡すと子供は悪態ついて逃げ去っていった。
…………おい、…………おきろ…………おい…
起きないか………ばか者!
バシッ━━━!。
「うわあああっ……痛っあ」
眠りこけている頭を引っ叩かれて、強引に覚醒させられた。
「ほれっ」
急激に起こされ前のめりに地面に倒れ、反転した腹の上に巾着が落ちてきた。
「これ…て……俺の?あ!」
飛び起き腰に手をやると巾着が無かった、眠った隙にスラれていた。
取り返してくれて更に、起こしてくれた者に礼をと顔を戻す。
「いや━、すいませんどうもありが………
倒れて見上げた時は逆光で姿が分からなかったが、
紛れも無くオークから殺されるのを救ってくれた者だ。
「あんたさっきも俺を助けてくれた……さっきは礼も言わずに
いや、本当ありがとう御座います!」
深いフードで顔はハッキリし確かめられないが、ユキヒトの事をじっと凝視してるのは分かった。
《やっべ!、服装が違いすぎるから》
《怪しんでいるかこれは?》
「ふーむ、やはり興味深いな、
お前一緒に付いてきてくれ」
「へ?」
「心配するな、別に警吏に引き渡したりしない、
ちょっと興味が沸いた、話がしたいだけ」
一瞬逃げるかと頭に浮かぶが、逃げれる筈はないなと思い直す。
下手に抵抗して更に面倒になるのも避けたいところだ、黙って従うことにした。
「はい! お待ちどうさまあ!」
ドン、ドン
「エールだ飲め、酒くらい飲めるでしょ」
言われるままに飲んでみる。
《!ちょっと味が違うが》
《ビールだこれ》
命を失いかけたが救われた。
疲れ果てやっと食事にも有り付けたがスラれた、それも無事に戻ってきた。
更に飲み物まで、口に出来た。
悪い事が続くが即解消される、これは良い事の予兆か?っと勝手に思っていた。
「私は、エルフ族の
アリアネスと言う」
名前を告げ、フードを払い除けると素顔が現れた。
「ぶっ!」
「ん?どうかしたのか?
顔に虫でも張り付いてたか?」
虫でもゴミでもシミでもない、フードから顕れたのは【女】。
又も女が絡んできた……、だが彼女は此処まで全て救いの手しか差し伸べていない、全【世界】の女性が全員アレだとは思いたくないユキヒトは、様子を見ることにする。
「いや、何でもないですハイ」
「そうか、なら単刀直入に聞くが」
何を言われるのか?、エールを口に彼女を見る。
「あの時あのオークの心臓を
どうやって叩き潰した?」
「はぁあ?俺があ?
オークの心臓を潰したあ?」
「そうだ、どうやった教えてくれ」
あのオークとはやはりあの惨劇の場を言っているのだろう。思い出すだけで吐き気が戻ってくるがグッと堪える、しかし身に覚えは全くない、正直に答えるしかなかった。
「いやだってあれは…あんたが、
二匹とも弓矢で此処を……」
自分の指で額に突き当て矢の代わりを示す。
「一体はその通りだが、二体目は違う
…矢が命中する前に死んでいた筈だ」
「そう言われても………なぁ、
あの時やった事といえば……こう」
そう答えて防御したときのかっこをしてみせる。
「魔法か……いや違うな、
魔法なら私達には分かる」
魔法を使用するとその領域の精霊からの力を借りる事になる、一部の者を除きエルフ族以外には分からない、彼女達の特異な能力のひとつである。
「あの場でお前はオークに触れていない、
のに心臓を破壊し巨体を吹き飛ばした…」
《この女エルフ……何が言いたいんだ?》
《俺が魔法や超能力とか使えるわきゃないだろ……》
「うーーん、何故だ?」
アリアネスと名乗った女エルフは自分のエールに一度口にしただけで、昼間のオークの事を考え続けている様だ、ユキヒトの方は喉が渇いていたせいで運ばれたエールをすっかり飲み干して、思案に暮れているエルフをただ眺めてるしか、手持ち無沙汰に成ってしまっていた。
「ん?なんだ無くなってたか…
おーい店主、エールもう一つと何か肉だ!」
「へーい!!」
店の奥から威勢のいい声がして、暫らくするとエールと空揚げ?がテーブルに乗った。店主は山犬を油で揚げた物だと説明して下がっていった。
《山犬……てあいつか》
「まあそれを食べてくれ、食べ終わったら、
もう一箇所付き合ってもらう」
「え…あ……うん」
もうどうでも成るように成れと、運ばれた食事にかぶりついた。食べながらチラリとアリアネスに目をやる、綺麗な顔立ちはユキヒトが見たことがあるアニメの通りである。あの設定を作った奴は、こっちの世界に来た事でも在るのかと思えてくるというものだ。金髪の長い髪は腰の辺りまであるんだろなと想像していると、ふっと金髪を見てあの女が頭に蘇ってきた。
ここ異世界へと拉致して姿を消しままに、とんずらこいてる自称女占い師。
《あんのバカ女……め…
次逢ったら引っ叩いてやるぞ!》
何処に居るのか分からず目処も立たない、実際に女を叩けるはずも無いが。
怒りだけはふつふつと、湧き出て両拳に力がこもる。
「どうしたお前、何を怒っている?」
「あ!いやこれも何でもないです!」
「変な奴だなぁ━、まあいい早く食べろ」
「は━━いっと」
軽すぎる返事だが、指摘もされずアリアネスは食事をしている、ユキヒトも何処へ連れられようが殺される事にはならりゃしないだろと、残りの山犬の空揚げを食べエールを流し込む。
二人が食事を終えアリアネスが支払いを済ませ外へと出た時にはすっかり日が沈んでいた。
「よし、では次に行くぞ」
「はい、はい」
《あーもう何処でも連れてって………》
「返事は一度だ!」
「はい!!」
今度は指摘された。
《げっ、こういう処はかわんないのか━━》
遅れると今度は弓でも構えそうだと、後を追う。
彼女は何処へと連れて行こうというのか━━━━。
ロゼ達は、ドアの森駐屯地へと到着していた。
途中で幾度か魔物が追ってきたが地竜の足に追いつくはずも無く、難なく駐屯地へと入ることが出来た。マリネはすぐさま従兄弟の隊長を見付け、一晩の仮の宿を借りる旨相談し快諾を得ると、地竜を繋ぎ木造の宿舎へと入っていった。
「処でひ……、ロゼさま…」
「いい加減呼び方慣れてよもぅ」
「すいません……」
誤るマリネに変わりブラッディが先に口を開く。
周囲に聴こえないように小声で話す。
「例の殿方は、
…どんな方なんですか?」
「どんなって?」
「そのお━━━ぉ、
容姿というか……」
「どんな力を……その、
持ってらっしゃるのとか」
騎士といえ女である、興味津々二人が代わる代わるに質問してきた。
「えっと、普通の感じかなあ」
「普通……ですか、
ではどの様な能力をお持ちで?」
あっちの世界で超絶の力を発揮している処をスカウトしてきたわけで無い。
「それは━━━っ、
これからじっくりとね…」
「………………」
「ウホンッ!ロゼ様はその方を、
どの様にしてお選び成されたのでしょう?」
「うっ━━━━」
《言えない…トラップ仕掛けて》
《適当に選んだ……なんて》
理路尊前とした返答を返さないロゼに、二人とも顔を見合わせ聞いた自分達が間違いだったと、他の姫達とは次元の違った存在であった事を、改めて思い出して大きく肩で息を吐く。しかし幼少の頃から共に剣や魔法の鍛錬を過ごしてきたし、優しく思いやりがある事には違いなかった。あからさまに公表されてはないが、剣も魔法も騎士となった二人でもおよびが付かない事を知っている、ただあの破天荒ぶりだけは何とか成らない物かと心痛めている所である。
《しかし怒ってるだろなぁ━━》
《訳も語らず、行き成り飛ばして》
《その上途中で落っことして、━━━放置…とか》
そんな事をされてニコニコ笑って許すバカも居ないと思うが。
《あああもぅ、どうしよ━━》
《山犬とかオークとかその他の魔物に……》
《教われでもしてたら━━━》
まさにその通りに実現していたが、当の本人そんな事は当然知らない。
《わああああ━━、死んでたら!!》
《でも…正当な召喚能力の私が、ただの感で選んだとはいえ!》
《何か尋常ならざる能力を発揮して、ピンチを抜けてる筈よねっ!》
勝手な想像ですったもんだしてるロゼを冷やかに見守る二人━━━━。
アリアネスに連れられたユキヒトの方は、人通りも減った通りで点々と灯を灯している街灯の路を、更に街の奥のほうへと歩いていき、一軒の平屋の前で歩きを止めた。
「ここだ、入るぞ」
ノックも呼び鈴もせずドアを開き中へと入る。
部屋の中は昼間訪れた家屋とよく似ているが、違っていたのは大柄な男でも、大男に似合わない婦人でもなく、少女であろう筈のない、一人の老人であった。
「うむこりゃ又、変なのつれてきたのぉ」
《いきなり変言われた、くそ》
「この男は、素手で無く、魔法も使わずに
オークの心臓を一撃で粉砕した!」
アリアネスはそう言ってユキヒトを老人の前へと押しやった。
「賢者のあんたなら何か、知ってるんじゃないかアジモフ、
この男がどうやってそれを、心臓を破壊したか」
賢者アジモフ、ロゼ達も彼を目指している、じっとユキヒトを睨みつける。
チカチカとする裸電球に小虫が飛び回る、その音が聞こえてきそうな程、静かで緩やかに時が流れる。
異様な雰囲気にユキヒトが耐えられなくなり口を出しかける。
「あの……
「どうやった?かは知らんが……、
何者かなら分かるぞ多分じゃがの」
《本当かよーじいさん……》
「誰がやったか知らんが、
お前さん何処か他所の世界から
連れてこられた異世界人じゃろ」
「なんとっ!!、此れが……」
此れと言われて流石にムカッとした顔をしたユキヒト。
キリスト教徒が指すそれと同じがは分からないが、この世界で高い知識と経験を有しているのは間違いないであろう。初対面で自分の境遇を見抜かれ仰天するが、すぐさま言葉を投げる。
「じいさん俺の事知ってるなら
帰り方も知らないか?」
バシッ!
「ばか者!この人は賢者だぞ、
じいさんとは何だ!」
《自分だって》
《あんた呼ばわりしてたじゃねえかぁ……》
等と反論したら今度は弓で叩かれそうなのでおもい留まった。
やり取りを見ていたアジモフは彼は異世界からきて、こっちの事等知らないのだからよいよいと、在り難くゆるしてくれた。それではと改めて召喚された経緯と現在の状況を伝え、元の世界に帰るには如何すれば良いのか聞いて見る。異世界へと連れてこられた者が、その後どの様に元の世界へと戻って行ったのか、戻れなかったのか?賢者の自分も知らないのだと言う。
そもそも招致された者がどの様な力があったのか?それすらも文献に載っていないのだとも、ただ召喚の儀、招致されたものについて賢者より詳しいものが居るとだけ教えてくれた。
「じゃーその人に聞けば帰り方が、
分かるかも知れないって事ですかあ?」
「帰す方法を知ってるかは、
分からんが、詳しい者なら知っとるがのぉ」
「教えて……
「教えてやっても良いが、一つわしの頼みを
お主が、聴いてくれたくれたら…かのぉ」
《でたよ!、お約束の》
《一つ頼みをってやつ……》
弱みを握り、こっちが断れないのを承知で物事を押し付けてくる、本当i腹立たしいが断っては元も子も無い、黙って条件を飲むしか無いのだが、能力見せろと言われてもそんな自覚が全く無いのだ。覚えの無い力をどうやって見せろというのか?、嘘を付くのは嫌だが手掛かりが消え失せるのも困る、無い知恵絞って必死で対処を考えている内に、こっちの思惑察したのか話を続けてきた。
「今夜は………止めておこう、明日ある所へ
お主を連れて行く、そこで見せてくれれば良い」
今日今直ぐだろうが、明日だろうが持ってない物を?っと顔に出すユキヒト。
「なに、心配せんでも明日そこへいけば、
お前さんは、否が応でも見せる事になんじゃ」
言ってる事はさっぱり理解しかねるが承知するしか言葉はない。
「分かりました、では明日」
「どうせ泊まる所も無いのじゃろ、
アリアネス案内してやるといい」
「一緒についてこい」
賢者アジモフに軽く礼だけをして、半ば引き摺られるような容でユキヒトは宿屋へと案内された。アリアネスは宿屋の主人と何かを話している、どうやら賢者の客だと告げているようである。賢者の客とはいえ特別高待遇の部屋へと案内されるわけでなく、至って普通の田舎の一室?に通された。
「明日迎えに来る、宿代も朝食代も
お前が払う必要はない、要らないから安心しろ」
では明日来ると言い残してドアを閉め出て行ってしまった。
《明日ねぇ………なにしろってんだ?》
《明日に成ったらスーパーマンてかぁ?》
《馬鹿らしい━━━━っ! 寝よっ》
布団を頭から被り潜り込むユキヒト、明日に成ったら何が起きる?
賢者の言った。見せる事になる、その言葉の意味を汲み取ることが出来ない。
寝よっと布団を被ったが、落ち着かない心境で直ぐに眠れない。
ありがとうございました。出来れば感想やその他もおねがいできればうれしいです