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女難危行・拉致した皇女と六人の嫁  作者: 雛人形
第三章
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協議

よろしくおねがいします

 

 「この領内から、離れる事に反対の意見は有る?」

 「はい! 、反対! 、必要無いもの」

 

 真っ先に手を上げ、ロゼが反対意見を出してきた、もう自分は平気だと言いたいのだろうが、全員の意見を聞いてから判断をさせて貰う、彼女が無理しているのは黙っていても一目瞭然だ。


 「ロゼ……、私も今は離れた方が良いと想う」

 「ロゼ様は、無理しすぎです……、もう少し楽にして下さい」

 

 アネスとマリネが、最初に自らの意見を述べると、ロゼは反論をしてきた。

 「うん、二人とも有難う、嬉しいけど本当に大丈夫よ」

 「皇女殿下、この場所に居続ける目的を聞かせて頂きたいのだが」

 

 ロゼの反論にズグロが、その真意を尋ねた。残るべき確固たる物は、今と成っては無いのは分かっているが、ロゼを言い包め様という腹づもりか?。これにロゼは何と説明するのか……。


 「それは……、ほら破壊女神の何とかよ!」

 名前すら覚えていない癖に、説得力に欠けるというものだ。

 

 「女神ニクスですか……、復活した後は全く何の音沙汰も無いですが?」

 「ニクスの存在は無視出来ないが、何の手ががりも掴めていないぞ?」

 俺の本音は、今は危険すぎる物に近寄りたくは無い、対抗出来る力が失われている為、彼女達を守れる自信が皆無だ、力が在ったとしても危険な存在なのにだ。


 「それに……黒衣の奴だって居るし、無視できないでしょ」

 「無視なんてする心算ないよ、でも此処に居ないと奴の動向て分からない?」

 女神はひょっとしたら場所に固執してる可能性は高いけど、黒衣の奴は寧ろ、俺達を追って来ている感じもする。いや……、俺達が掌で踊らされてるだけかも知れないが。


 「そりゃあ……そうなんだけど」

 「それに……、一時的に離れるだけ、二度と戻らない訳じゃない」

 ニクスが復活したのは、黒衣の奴の計画の一部には違いない、だがその意図している処がはっきりしない。確証はないが、この場所に留まり続けていたらその計画を、早く進めて仕舞いかねない。ロゼの為でも有るがそっちの方が、現実になると怖い。

 「はぁ━━っ、分かったわよ……、皆がそう言うなら私も従うわ」


 何とかロゼが折れてくれて助かった。

 あまりに強引に説得して、皆の関係が悪くなるのを避けたかった。


 「でさ、離れるとして、何処に向かうの?」

 承諾したら直ぐに移動先を訪ねてきた。特にはっきり目的の場所は、正直言って無い、それも此れから協議して決める心算なのだが。


 「それを、此れから相談して決めよう」

 「首都に戻るは、だめですよ……ね」

 「うーん、ちょっと今は滞在する場所には避けたいな」

 

 ハルの意見には賛成はし兼ねる、首都に戻ればあまり意味は無くなる、皇后の悲しみを我慢している顔を見る事に成るし、ブラッディの両親も居る。ただあまり時間を空けると、もう娘の事はどうでも良いのか?と、思われかねない、それも避けたいところでは有る、移動する前に、一度挨拶した後に目的地へと向かうのがいいのだろう。

 

 「改めて捜すと難しい物だな……」

 「そうですね、はっきりと目的が有りませんものね」

 

 次の移動場所を決めるに際して、俺は自らの指定が無い、というか場所を知らない為に捜す事が出来ない。女性達に場所を選定してもらうしか手段が無い。この件皆に関しては、皆に申し訳ないが俺は当てにならない、全くの役立たずだ。


 全員が無言の状態に陥ってしまった……。

 

 「あのぉ……、少し、休憩しませんか?」

 「お! 、ハルに賛成だ、私も同意見だ」

 ハルのナイスな提案に反対者も出ず、休憩する事に成った。

 だが俺には、その間に行くべき場所が有る、それをイリスに頼む。


 「ごめん、イリスに頼みが、塔への扉を開けて欲しい」

 「はい、今から開けますね」


 イリスは一度開いて、要領を得たたのか、扉をすぐに開けてくれた。頭が疲れていたのか、今回はマリネはついて来ようとしなかった。


 一人で扉の先へと進み、ラケニスに会いに来た。


 「何じゃ、主ひとりか小僧……」

 寂しかった癖に文句言ってんじゃねぇ、と今回そんな気分では無い。


 「ごめん……、仲間が一人殺された」

 婆さんは、俺をじっと睨んでいる、戯けがぁっと言われるか……。

 

 「自分を責めておるが、主のせいでも無かろう……が」

 「見てたのか?」

 「主の頭の中を覗いて分かっただけじゃ、戯けめ」

 「けど……、単独行動をさせてしまった」

 俺は余程酷い顔をしていたのか?、婆さんが何時もと違う。


 「そんなもの、結果から考えたら、幾らでもミスが出てきて当たり前じゃ。わしでも未来の事件が、見える訳ではないからのぉ」

 何だ?、俺を元気付けようとしてるのか?、何時に無く対応が優しい。


 「じゃが、力の連携が絶たれたのは痛いの……、今、事が起きると手が出されん。ちいと嫌な言い方をするが、他の女子(おなご)は……、何だ居るではないか、ヴァンパイアか……、それに主を惚れさすしか無いの」

 婆さんは、俺の頭を覗いて見ていたのか、ラミカを……。


 「そんな代替品みたいな言い方は、やめてくれぇ」

 「だが、現状はそれしか、手が無かろうが、それともわしを惚れさすか?」

 「冗談でも……止めてくれ!、ってか塔から出れないだろ」


 見た目は措いといても、五千歳は守備範囲を大きく超えている。

 更に、塔から出れないのでは、意味が無い。


 「失礼な奴じゃの、此れでも女ぞ……、少しは気を使え、愚か者が!」

 「見た目はアレだけど、流石に五千歳は……ちょっと」

 「ん?、歳以外は……、問題無いのかや?、小僧」

 「いやだから……、何でそっちに話が……」

 何か変な方向へ話が逸れる、勘弁して欲しい……。


 「冗談は措くとして、そのハーフに惚れて貰うしか無かろうが」

 「そうかも知れないけど……」

 「意味無く主に、引かれて来たとは思えん、少し様子を見てみよ」

 「分かった……、どの道、暫らくは何もできないし」

 それだけ言うと俺は、彼女が開いた扉から出て行った。


 複雑な思いで屋敷へと戻ってきたら、ロゼが待っていた。

 何か、用事が有るのか?、無言で手を引かれ窓際に連れて来られた。


 この窓からは、大公を埋葬した墓が見える位置、やっぱりロゼは、伯母の事もまだ吹っ切れていないじゃないか、従者で友であったブッラッディまで亡くなって間の無い今は、この地を暫らく見無い方のが良い。俺は勝手に、彼女の黄昏理由を決め付けていたが、ロゼは違う事を想っていた。


 「ユキヒト……、昨晩の事……後悔してるんじゃない」

 「後悔してない」

 即答した後に、思い出して身体が熱くなってきた……。

 彼女の方こそ、後悔しているのでは無いのか?。

 

 「本当に……してない?」

 「していない」

 「そう……ならいいけど」

 「そっちこそ、大丈夫なのか?」

 何か勝手に言葉が出てしまう……。

 

 「大丈夫?って何がよ?」

 「だから……その」

 「馬鹿……、平気よ、そんなの心配しなくていいわよ」


 彼女が何時の間にか引っ付いていた。

 温もりが伝わってくると、それに引かれて記憶が呼び起こされる。

 自然に、顔をお互い寄せていた……。


 「ロゼ様━━━ぁ!、集まってください!」

 階段に居るマリネから、大声で呼ばれた。


 「い、いま行くから……先に下りてて!」

 「分かりました、ロゼ様とユキヒト様も早く来てくださいね」

 マリネは勢い良く階段を駆け下りて行った。


 「びっくりしたわ……、マリネに逆襲されちゃったわね」

 女ってこう言う事に、免疫あるのか?、こっちは冷や汗物だというのに。


 「私の故郷に行って見ませんか?、ちょっと遠いですけど」

 広間に顔を出すとラミカが、待ってた様に話を切り出してきた。ハーフである彼女の生まれは、あの村では無く、他に在ったのか。


 「ラミカの故郷って、昨日案内してくれた村とは違うのか」

 「ええ、母が居た村で幼い時に住んでいました、凄い田舎ですけど……」

 この世界から見て、凄い田舎というのがちょっと想像出来なかった。日本の街からしたら、何処を見ても田舎にしか見えないのだが、凄く興味が沸いてきた。


 「ラミカがハーフとバレたら……、拙くないのか?」

 アネスの指摘は的を得ている、田舎の方だと特に古臭い体質では無いのか?、せっかく故郷に帰っても、正体が露見して、辛い思いをするのなら……。


 「それは心配要りません、あそこも……そのぉ」

 ラミカが何やら酷く、言い難そうにしているが如何したのか?。

 その答えは、イリスが口にした。


 「その村も……ハーフヴァンパイアの村なんですね」

 「はい……、知ってらしたんですか?」

 「サラトさんの知識が……教えてくれました」

 イリスにはサラトの知識が共有されている、言ってみたら婆さんの知識でもある。知っていて当然かもしれない。


 「要らぬ心配をしなくて良いのなら、決定で良くないか?」

 「そうね……、決まりって事で!」

 ラミカの故郷に行く事が決定したら、後はここを離れる用意を済ませるだけだ。皆がそれぞれに散っていったが、彼女から呼び止められて振り向いた。


 「ユキヒト様……少し、お話良いですか?」

 「うん、何か話したい事あるの?」

 「私を……信用してくれた事が……、嬉しくてお礼をと」

 恥じらい気味に語るラミカは、初対面の時と、全く別人の姿を彼女は見せてくれた。真夜中に乱入して来た時の、殺気は何処へやらといった雰囲気だ。


 「ラミカって、随分、最初と雰囲気が変わったよね」

 「え?、最初って……?、あああ……御免なさい!」

 あの夜に、窓枠をぶち壊して乱入した時を思い出し、ラミカは顔を真っ赤に染め上げて頭を下げている。その姿と振る舞いは、全くの別人にしか見えない。どっちのラミカが本当なのか?興味が沸く、出来れば今の姿が本来の彼女で在って欲しい。


 「うん、今の姿の方が、断然可愛い、ずっとそれで居てよ」

 「はい……、貴方がそう……望むのなら」


 無意識に出た言葉だけど、塔で婆さんから言われた言葉も思い出した。

 

 【それを、何とかするしか手がなかろう】


 本能的に空席と成った場所を埋める為に、彼女を取り込もうとした?。

 日本を離れて、自分の性格が変わってきた事を自覚しだした。

 

 


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