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女難危行・拉致した皇女と六人の嫁  作者: 雛人形
第一章
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危険な道

四話目です。よろしくおねがいします!

  ハイデ宮殿から四方に城下町は拡がる、首都へ入る道は荒地方面、草原方面、そして海洋方面からの港の三箇所で主に草原からが一番の通行路になる。石造りの門に扉はない門番が二人出入りを監視しているのみに留まっている、大昔に他国との戦争の折りには各門へと続く橋に、多くの兵と砲台が在った様だが、現在は全て廃止となっている。

 

 草原方面へ抜ける門を、長距離移動の際に乗る地竜のニューを引き連れて、ローゼスはその門をくぐり抜けようとしている。さあ取り合えず乗るかと地竜の横に立ち、手綱を手にする。と、顔の右方向より二つの走ってくる姿が視界に入る。地竜に乗り掛けていたがなんだろう?とその行動を休止して、近寄って来る二人を迎えることにした。


 「ブラッディ! 、マリネ! 。二人とも地竜連れて如何したの?私ならニューが居るけど」


 声を掛けた二人はどちらも若くして騎士の称号を受けている女性。、

 どちらも男性顔負けの剣の腕である、二人は息を整えるとローゼスと話す。


 最初にブラッディが答える、彼女は副団長に肉迫する程の剣技持ち。

 

 「地竜は姫様にお渡しするんじゃありません、私達が乗るんです!」


 「へ?あ━、貴女達も何処かへ行くのね」

 

 マリネである、彼女は剣こそブラッディに及ばないが、魔法も使える魔剣士だ。

 

 「はい、皇后様のご依頼で姫様に同行します」 


 はねっかえりの皇女がこれ以上、ドツボにはまらぬ様にお目付け役であろう。


 「はぁーお母様、心配性だわ」


 確かに直接依頼したのは皇后である、しかし騎士二人が勝手に城下を離れるなど許される筈が無い、団長から皇王へと内密に許可を貰っているからこそやれる行為で、要するに皇王も娘が心配なので許可がすんなりと下りた訳だどちらも親馬鹿である。


 「皇后としての依頼だと断れない、よね、けどひとつ約束してくれる?」

 「はい、なんでしょう」


 「旅の間中、今この時から皇女、姫と呼ばない事!」


 その理由付けを二人に話す、公の場で全てを放棄すると宣言して現在はただの女であると、旅の途中でもし皇族だと知れると色々と面倒に成りかねない。もし万が一にも金銭や特権を要求される様な事態に陥った場合、何の行使も出来ない、故に皇女、姫発言は厳禁だと。最期に堅苦しいのは嫌だと、多分これが理由の殆どである事は二人にも分かっていたが、何を進言しても聞きそうに無いのも、これまた招致の事実で黙って従う事にした。


 「分かりました、では何とお呼びすれば?」

 「そうねぇ……、此れからはロゼでいいわ」


 「ではロゼ様、何処へと向かわれますか?」

 「…………………………」

 《何も考えて無かった……、言えない》


 指示を示さないロゼに向かってマリネが呆れ顔。


 「ロゼ様…………、何も考えてませんね?」

 「うっ、ぐうぅ…考えて…かも?」


 流石ロゼ様と変な関心を受ける。

 門前で三人はすったもんだの末に、途中も捜索しながら一路森林方面へ向かう事と成った。


 三人は騎乗して草原を駆け抜けて行く。

 三人が消えると門番二人がやっと気が抜ける時間がやってきた。

 極直近で騎士階級以上の女性が三人も何時までも立去らない。

 下級兵士の気が休まる訳がないのであった。





━━━ ズーイ周辺森林奥 ━━━

 

 鉱山の街へと向かっているロゼ達。

 ユキヒトの方は、巨漢一家の家を後にしてズーイへと足を進めている、道中は注意された通りに山中の一本道では三歩程度しか道から逸れていない。なんせ異世界である、動植物も見たことも無い物ばかりで近寄って観察したい衝動に幾度も駆り立てられたが、遠くから見物するだけにはやる衝動を抑え込んでいた。


 《見たいけど、死にたかねぇ》


 臆病という訳ではない、ただこんな場所で訳も分からない状態で死にたくなかった、此方から避けていても向こうから来る場合も当然在り得る事だ、ある程度の目算が見えない以上、必要最低限の行動を執りたいだけなのである。先の少女の事でもそう。結果として良い方向と成ったが一歩、運が無かったら死んでいた、思い出す度にぞっと背筋が凍る。


 巨漢旦那の話では、途中で山の様な岩盤が地面から突き出ている箇所で、ズーイまで半分程度の位置だとこっそり教えてくれてたが……、岩盤が地面から突き出ている、あれか。


 《はあ、やっと半分特に何も起きなかったが、後、半分が怖いな》

 

 巨大な岩盤を右手に見ながら進む。


 《巨大な岩盤言うからどのくらいかと想ったが、ありゃあほんと山だな…》


 確かに元の世界でもこの手の物は在るがこっちの世界では生物も巨大なのが多い。最初に遭遇した山犬を筆頭に、昆虫類も全てが在り得ない大きさなのだ。


 《巨大蟻とかこないよな……大群とか勝てる気しないぞ》


 巨大昆虫を発見し心躍っていたのは間違いない、この場所に来るまで何も危険な事が起きなかった事で、多少の警戒心が削られたのも間違いない。道から見える其の奥が余りに広くその為、俺の中の警戒心より好奇心が勝ってしまった。


 ズーイ迄の街道を外れ森林の奥へと進んでしまう、街道沿いの木々より遥かに巨大な樹木の群生地に来た時に、生涯で見る事は無いであろう光景が飛び込んできた。


 目撃した瞬間に背筋が凍り身体が硬直した。

 巨大な熊の様な二体の生物が一人の人間を撲殺している、最初の一撃で即死、絶命していた。が、それでも打撃は終わらない何度もという表現で表せないほどに、とに角メッタ打ちしているのだ、血が飛び散ろうが肉片が飛び散ろうが骨が砕け散っても打撃を止めない。全てが原型を、元が何だったか分からなくなって、やっと打撃を止めた。


 ゲオエぇ━


 人生こんな音立て吐いたたこと無いくらい、吐いた。

 食べたもの全て、胃液も枯れたとばかりの勢いで……。


 《冗談じゃねえぞ……、何だよあの化け物……》


 今見ている生物こそ、少女が言っていた【オーク】である。


 同族以外、いや同族にでさえ敵対行動を取る事さえある。特に人タイプの種族には激しい敵意を剥き出しにする、固体によっては今の様な残忍極まりない 殺し方をする奴も。この森林地域で最も警戒の必要な生物で騎士達も油断出来ない相手、最悪の奴らを目の前にしてしまった。


 《なん…だよおぃ、ああ足がうごか…ない?》


 恐怖心━━━━━。人生で経験した事の無い、圧倒的な恐怖に身体の全てが。

 凍結して動かない。


 最悪の状況は更に増すことになる。

 吐いた音がオークに聞こえたのだ、こちら目掛けてオークが迫る。

 

 《待て、落ち着け!……あの時を……》


 近寄る片方のオークを見定めた。

 一体目が至近距離に、残り僅か……、声も無く弾け飛んだ。

 次だ……。

 二体目もすぐ傍まで来ている、間に合うか……、二体目も弾け飛んだ。


 はあ、助かったあ。

 後ろから気配がする。


 二体のオークは大上段に構え振り下ろす処であった。

 マジか、まだいたのか……。


 《あ━━━━━!》

   《終わったあ━━━━━》


 又も反射的に手を伸ばし防御する、その頭へと打撃が届く瞬間。

 

 ヒュ━━━━━ン!…ヒュ━━━━━ン!

 

 弾け飛ぶオーク、一体はその場にもう一体は少し後方へと、その両方の額には金属矢が突き抜けている、誰かが放った矢は見事に急所へと命中した。一体誰が?と飛んできた方へ視界を向ける、そこにはフード付の長い服装の人物が弓を構え立っている、その物は無言を破らずただ首を振って意思を伝えてくる《あっちへ行け》と。


 後ろでに地面に手を付き呆然としたが、意思は伝わった。

 こんな所には何時までも居られない、全力で惨劇の場から走り去る。

 

 絶命して倒れているオークの額から矢を引き抜きながら人物が呟く。


 「人間ががこんな所を、うろちょろするからこんな目に遭う……」


 二つ目を回収しようと離れた場所のオークへと体をむけ歩き、矢に指を掛けるがオークの体の胸の痕を見つけ、フードの人物は動きが一旦停止してオークの胸痕を見詰める。


 《このオーク……、胸が潰れてる?この痕だと、即死…?矢しか射ってない…まさか!あいつが?》

 遠ざかりもう小さく見えるユキヒトを遠めに眺めている。


 更に、倒れて屍骸となった他の二体へとはしりよる。

 どちらも胸が瞑れていた。


 「あの人間がこれを?、一瞬で胸を潰し心臓を破壊?、それをあの人間が?」


 ゆっくりと左右に首を振り否定する。


 《ふっ馬鹿な、ありえんな……だが》


 合点がいかず納得できないが、暫らく思案に暮れたあとに立去っていく。


 真直ぐと一気に元の街道まで走りきった俺は、木に片手を付き息を整える。


 「はあ、はあ、はあ、くそっ、又死に掛けた…、早く街へ…」


 ズーイへ向け道を足早に進み始め、命の恩人を想い返す。

 たった二本であの化け物を倒したマントの人物を。


 《凄えなぁ、あんな化けもんを、たった二本の矢でかよ》


 折角貰った剣を見た。

 これは使えなかったが、化物を倒せた。

 要は目標定めてイメージすると、何か力が発動するのか……。

 しかしだ、あんなの何度も相手にしてられないぞ。

 

 《はやく場を離れるべきだ、ズーイとかいう街へいった方がいいな》

 

 その後は道の両側に何が見えようとわき目も振らず、ただ一心にズーイを目指す。


 

 一方、ロゼ達三人一行は地竜を駆り草原をドア森林入り口へとたどり着いていた。

 その昔森林を開拓し村を造ったが、オークやその他の魔物に常時襲われ造兵続きとなり、街へと発展する事無くオーク達との戦闘の為、その前線駐屯地と化してしまっていた。

 ロゼ達はこの森を通過して街道へと進むか、大きく迂回して海岸方面へ進み森林先街道へ入るかの選択を決め兼ねている。

 分かれ道を前にマリネがロゼに話しかける。


 「姫……コホンッ、ロゼさまどっちへ」


 「う━━━ん……、」


 何も考えが無い、確かにロゼには無かった。そんな彼女に母である皇后フォーネリアはちゃんと助言を与えていた、異世界から招致された者はフォーチュンに住んでいる者とは異なった特殊な波動を放っている、その波動を辿れば、招致者と再会できる筈、その為にはゾーイに住む魔女ラケニスに逢えと。


 「あ!思い出した、ラケニス」

 

 「最も古い魔女とされる

     三魔女の一人ですか?」


 続けて、マリネは言う。


 「でもその三魔女の住んでる

     場所は知りませんよ?」


 「あたしも知らない、

    あははは、困ったどうしよ」


 スパット言い切り頭を搔いてるロゼに、マリネは助け舟を出してきた。


 「そんな事だと思いました、

   ちゃんと皇后様から追加の

   アドバイスを頂いてます!」

 

 「流石お母様、

    ちゃんと私の性格知ってるわあ」


 皇后が最初のアドバイスをロゼに与えたら、彼女は部屋を飛び出して行き即刻皇王へ直行、明日と言わず直ぐ責任の取り方を示しますと伝え、あの謁見場での乱説かましたのである。肝心の招致者をどうやって捜し当てる心算なのか?、慌て者の娘にさぞ心配の事と心中察するというものである。

 そんな娘の為に、二人の同行者をそして一通の書面を渡してあったのだ。


 「でっでぇ!お母様は魔女が

   何処に住んで居るって?」


 自分のおっちょこちょいを棚に措いて急かすロゼにマリネは胸元から先の皇后から預かっていた書状を見せるが、見せるだけでマリネは渡さなかった。


 「ひめ……ううん、ロゼ様にお渡ししたら、

   …移動中に落としかねないから私に持っておけと」


 「うぐぅ━━━、仕方ないわねえ、

     誰にその書状を誰に渡せと?」


 「ゾーイに住んでる賢者アジモフです。」


 此処からドア森林を抜け街道を走り、ゾーイ周辺の森林を抜ければ二日、海岸へ大きく迂回して街道へと抜けると3日掛かると、途中で夜になるため今日は多少危険だけどドア森林に向かい駐屯地で宿を取るのが懸命ではないかとマリネが進言している。海岸で野宿をして魔物に襲われて三人で応戦するより、同じ襲われても駐屯地のが派遣兵も多いし、そこの隊長はマリネの親戚らしい。

 三人はマリネの進言通り、ドア森林へと地竜を進めて走り出した。



 その頃ユキヒトはゾーイへ向かう道中で惨劇を目撃、その執行者であるオークに同じ様にされる筈の処を通り掛った弓矢の人物に窮地を救われ、 一心不乱にゾーイを目指し今やっとの思いで目的の場所の門を目にしていた。


 《くっそぉ━━、やっとたどり着いたぞ》


 街へと入る階段を上り、遊歩道を進み門を通る時に門番に睨まれる。

 たがそんなの物気に成らぬ程にユキヒトは疲れていたのだ。




ありがとうございました

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