皇帝からの依頼
続編ですよろしくー
【神聖】とは、この世界では憲法を遵守するに当る?それ以上。
要は、その言葉を使った以上、破ってはならない。
それを、あっさり破った総督に、ロゼの怒りが遂に、爆裂?。
戦争上等で屍累々、の惨劇を演出するかと思われたが、意外な人物の登場で回避された。自国の名誉を犯したと、逆に拘束され連行されていく総督とその取り巻き達。
「さて、ゴミ掃除が終った処でローゼス皇女殿下、貴女にお話が有ります。少しお時間宜しいか?」
この国の皇帝がわざわざ出向き、ムカつくゴミまで掃除してくれたのに、断れる道理が無い。ロゼにしては珍しく、皇女らしい丁寧な挨拶を返し快くその意に従った。
「仰せのままに、ご一緒いたします。皇帝陛下」
「うわ、マリネ観ろ、あのロゼが裾をチョイ挙げて、挨拶してる」
『そ……そりゃ……、相手は此の国の皇帝陛下ですから……いくらロゼ様でも』
決闘が終了して、相手の亡骸が運ばれて行く。憎しみがあって戦った訳じゃない、そうしなければ道が開けなかったから命掛けで戦った。最後の一閃の前に、【異界人か】と言われた事が思い出される、マリネが消え桜色の、この剣が表れた事でそう語った感じがした。
召喚とその謎を知っている者が、まだ他にも居る証拠だ。
右手のマリネの剣……、これが生きた人間が変身した物かと繁々眺めていたが、何か凄く後ろめたい想像をしてしまう。色々聞いてみたい事が有るけど、一つだけに聞いてみよう。
「なぁ、マリネ……」
『はい』
「どうやって、元の姿に戻るんだ?」
「! ………………」
「おーい」
「わかりません! 、ドウシマショ」
元に戻り方を知らない?、そりゃあ……、誰かに教えて貰った変身じゃない。分かる方のがおかしいけど、剣の姿のままというのも……、良いかも知れない!」
『いま……、剣のままで良いって想ったでしょ、ユキヒト様……』
「いやね……、持ち運びに便利かなって……はは」
『酷っ……〝でも……貴方とずっと一緒に居られる♪〟……』
「マリネ……今……、俺とずっと一緒にっとか、考えた?」
『え?、どうして……』
〝やべぇ、マリネの思考が読める?、こっちのは分かるのか?、もしそうだったらさっき一瞬だけ、マリネの裸を想像したのも、バレたのか?〟
『ユキヒト様……、今バレました……エッチ』
「マリネの思考が?……」
『貴方のも……』
「読める?」
『読めてしまった……』
マリネが剣にヘンゲして手の中に在ると、互いの意識の一部を共有する様。
この設定が、後に何かに役に立つのか……?。
『いやああああああああっ』
マリネが激しい羞恥の声を叫ぶと、刀身の桜色が色濃くなり桜の花弁が、舞う様に弾けて消えた。その直後に、俺の傍に人の姿に戻ったマリネが現れた。
「あ……戻ってるし」
「ほんとっ、良かった戻れました!」
ヘンゲの鍵はどうやら、マリネの感情の起伏に由るらしい。
互いに見詰て今、互いの思考が分かった処で、照れてしまった。
「はいはい! 、何時までもいちゃいちゃしない、いやらしい……」
何時の間にか、ロゼ達が闘技場へと降りて来ていた。
「嫌らしいは……ないだろ」
「ロゼ様、それはないです……」
俺とマリネの反論に、ロゼは眉間にしわ寄せ、眼を細め。
「はぁあ?、戦闘中ずっと貴方の剣を手にしてたのよ?」
「そうですけど……、それが?」
ロゼが何を言いたいか、予想がついた。やばい止めないと。
「馬鹿……、ロゼ止めろ、言うなあ!」
「つまり……その、貴方の裸体をずっと握り締めていたって事でしょ!」
「わたしの……裸体をずっと握り締めていた……?」
〝遅かった……〟
いやあああああああああああ!
桜が舞い……再び手の中に桜色の剣が。
「あれ?、又……変わったの?」
「だから、止めろと……、感情が昂ぶったら……こうなるぽい」
マリネの剣をロゼの目の前に見せる。
『………………』
マリネは沈黙している。
「あらあら……、ちょっと宜しいですか……」
サラトが前に出てきて、マリネの刀身に指をちょんと触れた。
『きゃっ!』
桜が散り、人のマリネが戻る。
「何をしたかは……内緒です♪」
身体を縮め、もじもじしているマリネ……。
〝何と無く……何したかわかるぞ……これ〟
そう想っていたら、サラトが笑顔のまま、こちらを睨んでいる。口にするなと仰っているようだ、これ以上の詮索をしていたら、それでも怒られそうなので中断した!。
「まあいいわ、皇帝陛下が、私たちに何か用が在るみたい、行きましょ」
心痛な思いでこの闘技場へとやってきたが、それも全てが終了した。この国を司る、皇帝が姿を現すという、意外な展開になってきたのも厄災と、何かの絡みが有るのだろうか?。
皇帝が、俺達に何の用が在るのか、行って見ないと分からない。そして黒衣の者、奴は俺達を罠にはめて如何したかったのか?、宰相を殺害したのにも何か意味有っての事?。そもそも、奴の狙いが分からない、一体俺達に何をさせようとしている?。
何も掴めていない現状では、少しでも、手がかりと成るべき物が欲しい。
皇帝を囲う形で騎士達は歩いている、その後ろを追従して歩いた先は、例の一件が起きた場所。マリネには想う所が有るだろうが、我慢してもうしか無い。屋敷の中を移動して、開けられた扉は……、宰相殺害の現場である。
これには流石のロゼも、一言。
「陛下……、この場所は……他に代えて頂けません?」
「いやその件についても、有るのだ、罪を咎める心算はない」
そう答えると、宰相が殺害された場所の椅子へと座った。殺害現場は俺達が居なくなった後に、綺麗さっぱりと掃除されてはいた。それでも気持ちの良いものでは無い、その筈なのに平然と死体の在った場所へと、座れる度胸は流石に皇帝というべきか。
「ご心配でしょうから、明かすと。そこの女性は、宰相を殺害していない」
「え?、偽者だった?」
それには首を振って否定する。偽者じゃないなら?、何なのだ?。
さっぱり意味不明だ、皇帝は何を言いたいのだ?。
「まあ、ある意味偽者と言えるが、身体は本物で中身が偽者と言った処か、宰相は四日前に既に原因不明のまま死亡していた。極直近の者以外には、この事実は伏せていたのだが……。少し人の姿が消えていた時に、遺体は何処かへと無くなっていた。そこへ、この街の総督府から宰相が殺されたとの知らせだ、どうにも解せん、故に護衛を連れて乗り込んだ。そう言う事で、そこの従者は何も罪を犯してはいない」
此処まで聞いて、それまで罪の意識が在ったマリネは、自分が殺していない事実に感極まっていた。やばい、又変化するか?っと、慌てたのだが今回は桜は舞わなかった。
マリネの剣への変化は、何やら色々と条件が在るみたいだ。単純に感情の起伏のみでは、刀身へとは変化しない。元々が、感情が豊かな女性だけに、その条件は助かった気がした。
「よかった……、マリネ、貴女は無実の人殺しをしていなかった」
「はい……、やっと、心が晴れました」
「真実を伝えて頂き、感謝致します、陛下」
ロゼがまた、御丁寧な返礼をしている……、決して口に出来ない言葉。
〝似合ってねぇ!〟
軽く手を上げ、返礼に答える皇帝、更に言葉を続ける。
「この街で、貴女に逢えたのは……、運命かもしれんな」
「此度の一件は措いといて、貴女には逢いに行く心算だった」
「陛下、どう言う事でしょう?」
敵対国の皇女に逢いに来る、領土を侵さない事を条件に結婚でも要求?、大昔では良くあった事みたいだが、いや今でも在るのか、どちらにしろ、ロゼの顔付が変わったのが分かった。
「あ、勘違を致すな、婚儀ではない。別の用件だ」
「それは、どの様な?」
「今抱えている問題を見事、解決してくれたなら、私が皇帝として存命中に限られてしまうが、貴国に対して一切の手出ししない事を誓約しよう。受けて貰えるだろうか?」
「お話に成られる問題の内容に、寄りけりです。陛下」
今聞いた話から想像したら、俺達に依頼、普通の政治絡みでは無い気がする。
「では話を……
「その前に、一つ確めたい事が…
ロゼが刹那に水晶化し、それだけでなく紅蓮の姿を取った。
〝まさか……撃つ気か!〟
護衛の騎士達が瞬間に剣を抜き、構える。
併せ此方も応戦に、剣を弓を向ける。
「本物ですね……、御無礼を陳謝致します」
皇帝が笑顔のまま、さっと手を挙げると騎士達は収めた。
ロゼは本気で撃つ気を見せて、偽者か見分け様としたみたいだ。
普通、こんな真似するだけで重罪じゃないのか?。
怖いもの知らずのロゼらしいと言えば、その通りだが、それを傍から見ているこっちの身にもなって欲しいものだ。此れまでのマリネ達の気苦労が理解できる。
「ははは、噂通りに怖い皇女だ、話を続けて良いかな」
「どうぞ……、御聞きしますわ陛下」
「我が妹を救って欲しい!」
「はぁあ?」
オスマニア帝国皇帝が、妹を救って欲しいと。
又、面倒に巻き込まれそうな予感がする。
「実は妹は別宅に住まわせている、宮殿に居ると何かと在って……、その姿を見るのは忍びない、已む得ず別に居を変えて居るのだが、最近魔物に襲われて難儀していた」
前皇帝の腹違いの妹……、お家騒動かと想われたが違うようだ。
「毎夜、やって来る、その魔物がやたら強力で騎士も歯が立たず、日々やつれて行く妹を助けてやれず。歯痒い思いをしている処へ、ロゼ皇女達の話が迷い込んできた。忍びで貴国へ訪れようとしていた時に、今回の一件だ。貴国へ行く前にとやってきたら、なんと此処に居るではないか、運命としか言えぬ」
「その魔物を……、私達に倒せと?」
「妹を救ってやって欲しい、この通りだ!」
皇帝が俺達に頭を下げた、騎士達が慌てるがそれを手を上げ止めた。
「ロゼ……、断る心算じゃないよな?」
「当然でしょ」
「やって……貰えるか感謝する」
少し前に皇帝が約束した内容をもう一度確認した後、俺達は依頼を請けた。戦争を回避しにこの国へとやってきたが、何の因果なのか?、皇帝から直接その約束を、取り付ける事が出来そうになった。
皇帝の妹を魔物から救えば、の話しだが。
ありがとうございました!




