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女難危行・拉致した皇女と六人の嫁  作者: 雛人形
第一章
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責任取ります(二)

「うがああぁ」


 行き成り空中へと吊るし上げを喰らった。

 自分を突き上げているぶっとい腕、ごつい顔。巨漢に掴まれた腕を掴み返すが、引き剥がせるような力ではなかった。何とか剥がそうと力を込める、両足を振って蹴ろうにも首を、頭を、突き上げられ仰け反らされたこの体勢では…………。


 《く…ぐるじっ、し死ぬぞ……これぇ…》


 少女が巨漢の脚をドンドンドンと叩いているが、そんな行為がこの巨漢男に、微々たる痛みすら与えていないだろう。


 「ばっ……ばかやろ……は…やく……にげ…」


 少女がわん公を指さした。


  ドサ


 やや高度を下げてではあるが、腕を放され地面へ落下した。


 「ふぁあ、助かったかあ」


 

 この熊の様な男は少女の父親で、俺を娘を連れ去ろうとした山賊と間違えた。

 お詫びを兼ねて自分の家へと招待された。


 部屋の中は中世の欧州あたりの山小屋と似通っていた。

 日本の忘れ去られた田舎の家屋を髣髴(ほうふつ)させた、見た目は違うがそう感じた。


 「いや━━、ほんっと悪かった若いの!」


 背中をバンバン叩きながらの謝罪してくれたが、痛い半端なく痛かった。


  《フライパンかよおっさんの手は!》


 巨漢の奥さんが笑いながら料理を運んでテーブルへと置いて、高笑い。


 「わあははは、この人そそっかしいからねぇ」

 

 奥さんの方もこれまたバンバンバンと旦那を叩いてる。

 夫婦の戯れにも似た状況を少女はニコニコ見ながら、パンを口に脚を振る、

 仲の良い家族である。


 奥さんが運んできた料理はスープ、すすってみるとこれが美味い!、野菜の種類も名前も自分の居た世界の物とは別物だろうけど、味はほぼ同じでニンジンにジャガイモとブロッコリだが、入ってる灰色っぽい肉だけは気に成ったので聞いてみる。


 「あーこれは、さっきこの人が担いできた山犬の肉さね!」


 ブフォッとなるのを堪えた。笑う少女と巨漢男、巨漢に似合わぬ容姿の奥さん。何でもこの大きさの山犬は稀だそうで、普通はもっと小さく森奥に住んでいて、この辺に出没するのも稀だそう。これだけの大物だと毛皮や内臓、肉、キバに色々と使い道があり大助かりだと奥さんがスコブルご機嫌である。



あっちの世界でも極一部ではこの様な生活を今も過ごしている地域もある。日本では売買は有るかもしれないが、直接生き抜くために狩り備蓄してという生活は既に失われている。


 和やかな雰囲気の食事も終わり、旦那が俺に話し始めた。


 「そう言えば若いの、何処から来て何処へ向かってたんだ?」


 一番返事に困る質問来たっ。正直に言っても信用はしてくれない。

 それよりこの和やかさを疑心暗鬼の雰囲気にしたくなかった。


 「遠く…の街かな…」

  《く、くるしいかこれは…》


 「遠く……、ああ首都からきたかそれで、そんな変な服装なんだなっ」

   《お!》


 「そう、これ最近首都で売り出された、最新の服装なんです!」


 大嘘だが、疑っていない。


 「お兄ちゃん、かっこいい」

 「あ、ありがとう」


  「ズーイという街が、この森を抜けると在るときいたんですが…」


 行く先も宛も無いし、老人から聞いた街の名前を聞いてみる事にした。


 「確かにこのもりを抜けた先に、ズーイは在るが…何というか…」


 歯切れの悪い言い方をされた…何かあるんだろうか?。


 「まあ、巨大な山犬からも免れたんだ、お前さんなら何の問題も起きんだろ」

 「分かりました、ありがとうございます十分注意します」 

 

 立ち上がり、それではと小屋を後にしようとする。


 きゃ━━━━ぁ!


 小屋の外から奥さんの叫び声が響いてきた。

 

 おっさんが表へと飛び出す、俺も続いて出ると、わん公の仲間が待っていた。さっきの現場の近くで仲間が殺されるのを見ていたようで、復讐にきた?。しかし、数が……五体もいる、これはマズイ全員殺されて喰われるかもしれない。


 一匹が跳ねて俺に飛び掛ってきた。

 さっきの水面の様に、飛び掛るワンコの顔を捉え腕を前へ。


 ギャフ!


 顔が潰れ、吹き飛ぶわんこ!。


 お! 、いけるじゃないか。おっさんの方は?。

 一匹倒して気が大きくなり、他もと隣を振り返る。


 おっさんは……、むちゃくちゃ強かった。手に持った斧で最初の奴を叩き潰し、返しで次のを弾き飛ばす。残った二匹も奴等が動くより先に一匹、二匹と、糸もあっさり倒してしまった。


 「わははは、今年の冬はこれで安泰だわ!」

 「毛皮も売れるし、大儲けだわあははは」


 夫婦そろって、ご機嫌だ……。

 凄いな、一歩間違ったら死んでたのに笑ってる。


 「これも、お前さんが娘を助けてくれた御蔭だ。これを……もって行け」


 旦那が剣を、奥さんが弁当と少しの足しにと、お金の入った袋を渡してくれた。お弁当だけ頂きますと、遠慮したが、旦那の言葉は。


 「お前武器もっておらんだろ?、街道沿いは居ない筈だが、この先ズーイに着くまでは魔物がでる箇所があるんでな、万が一、もしもの時にはそれ使うといい」


 「一人娘の命を救ってくれたんだ、本当ならこれでも足りないくらいさね」


 なんてあったかくて情の深い夫婦だ、そして強い、断るのは却って失礼だ。、

 ありがたく受け取った。


 「気お付けて、いくんだよ」

 

 「どうもお世話なりました、さようなら━━━」


 妙な力と剣まで手に入ってしまった……、嫌な予感がする……。

 たが、(たくま)しい夫婦の御蔭で、何故か気分は良い。


 立去る俺を、夫婦と少女は手を振りながら見送ってくれた。

 その時少女が口にした言葉は俺には届かなかった。


 「お父さんおにちゃん大丈夫かな?

      オークやコブリンに教われない?」


 



━━━━ ハイン宮殿謁見の間 ━━━

 

 ローゼスの希望で明日迄と言い渡された事を当日に振り返られた。

 長い広いフロアには中央に赤のロード、それを挟んで、各大臣に上級貴族とその付き人、少数に限られた近衛兵、騎士団団長、魔法導師ハインデリアの主要な人物達である。

 

 その全ての眼を集めて中央を路を進む皇女ローゼス、

 階段上先に座している皇王と皇后の前に到着すると、肩膝付いて先ずは礼を。


 

 「皇女フォア・ローゼス・ハインデリア、

        覚悟の程決まっておるな?」


 「はい陛下決まっております」


 「聞こう、申してみよ」


 ふうぅ━━。


 「私、フォア・ローゼス・ハインデリアは

  召喚した者を招致中に自らの……………

   《くぅぅ、》

     《こんなカタックルしいセリフ》


 「ん・なんだ?どうかしたのか?」


 《やめっ!こんなのらしくない》


 はあーぁ…ふぅ

 「召喚した後に私が!、ボケやって招致者を落してしまったので、

     一人で国中廻ってさがしてきまーす!、

     見付かるまで帰ってこない覚悟してるけど、

    けどそれまで!」


 皇女の乱説に総員唖然とするなかローゼスは続ける。


 「ハインデリア第一皇女としての

   継承権、その地位、財産、特権の全てを!

    放棄しちゃいます!!」



 〝 皇女ローゼス責任取らせていただきます━━━━ !〟


 

 乱説振りまで違う筈だが、その内容は皇后の指示による。

 その事は付け足しておく。 







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