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女難危行・拉致した皇女と六人の嫁  作者: 雛人形
第二章
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国境へ

続きです、よろしくおねがいします。

 舗装されてない道。

 大自然はこんなにも、気分を良くしてくれる。

 

 

 草原から山間部の合い間へと風景は変わる、地竜を走らせながら周囲を観察していると、此の辺りには大型の動物や魔物は見当たらなかった。ただ昆虫がちらほら見える、こんな行程でなかったら止って近寄り捉まえたい処だ。


 「ユキヒト様……、何を見渡してるんですか?」

 マリネの呼び方が【様】付きに戻った。

 様、呼捨ての基準て何だろ?、ふと感じた。

 

 「あはは、昆虫がね……でかいから……」

 「昆虫が大きい?……、あれが普通ですけど……」

 「日本じゃ、こんなものだけど」

 手綱を持ちながら、親指と人差し指で小さいのを現してバランスを崩した。


 「危ない!」

 マリネが地竜を寄せ、腕を伸ばし支えてくれた御陰で転落を免れた。

 

 「もう……、気を付けて……」

 「ごめん……助かったぁ」

 再び手綱をしっかり持ち、前を向くと……。

 ロゼが睨んでる、マリネも紅い顔して後方へ下がった。


 「ったく……、あんの二人はぁ……、地竜に乗ってまで、いちゃいちゃと!」

 〝何で、こんなイライラするかなぁ……〟


 先頭は相変わらず不動の一番、アネス、ロゼ、俺、マリネ、サラト、そして最後尾をズグロが走っている。草原の昆虫地帯を走り抜けたら、短い林を抜けて沼地へと着いた。


 此処でアネスが地竜の足を止めた。

 「沼地を抜ける途中で夜が来るな……」

 「夜が来たら走り難くなる訳か」

 「いや、夜に成ると……、幽鬼が出る。この沼の夜は危険だ」

 幽鬼……、それは……幽霊の事か?。


 「うむ、まあ幽霊のことだな」

 「ひいぃぃ」

 意外な人物が悲鳴を上げる。

 

 「嘘っ……、ズグロが幽霊が苦手とは……」

 「わ、我にも苦手な物くらい……ありや、ます」

 舌かんでるし……。


 「ズグロに先頭任せようと思ったが……」

 「も、申し訳ない……、どうもアレだけは……」


 夜に成る前に幽鬼の襲撃に備え、隊列を組みなおした。先頭をロゼ、次に四人がアネスとズグロを挟んで、マリネとサラト、最後尾を俺が走り。幽鬼が襲ってきても、その接近前に魔法で応戦する隊列に変えた。


 アネスの予想通り、途中で夜に成った。光源がはっきりと月明かりのみになってくると、その下で黒い靄が蠢き姿を現してきた。まるで糸の切れた凧のような奇妙な動きをして、こっちへと向かってくる。一体、二体と、その数を徐々に増やし対処が忙しくなってくる、何対かは直近まで接近を阻めない事が出てきた。


 遂に、前方からもその姿を現し、完全に四方を囲まれた形で地竜を走らせるが、ロゼが何を想っての事か、急停止を掛けた。


 「あ━━もう、イライラする!」

 俺達が止まった事で、もう完全に周囲を幽鬼に囲まれてしまった。


 「ちょっとロゼ、何を?」

 「鬱陶しい! 、一発で消し去る!」

 「へ?」


  一旦は、止って様子を見ていた?幽鬼が一斉に俺達に襲い掛かってきた。

 魔法で応戦を始めるが、数が多すぎる、百対以上の数に膨れ上がっている。

 「もう駄目……多すぎて防げない」


 「ユキヒト! 、お願い!」

 「はいはい、そういうことか」

 ロゼが幽鬼を捕捉する、同時に紫の霧がロゼを水晶へと変える。

 今回は紫光のみ、一瞬強く輝いたと同時に消えた。

 「いけーロゼ!」

 

 ロゼが腕を振る。


 一瞬で百体以上の幽鬼は、炎の塊となり地面に墜落するまでには姿を消した。

 ロゼは、両手の指を絡ませて天空へ向け真直ぐ伸ばし、一気に開放する。

 「ああ━━━ぁ! 、すっきりっした!」


 「最終的に、百体以上居たか?……それを一瞬か、全く呆れてくるな」

 見た目以上に危険で、オークなんかより遥かに上位の魔物らしい。

 確かに、魔法を受けても後退するだけで、倒せてはいなかった。


 幽鬼を一掃した後は、魔物同士の蓮網でもあるのか?、姿は見えるが襲ってこなくなった。御陰で予定以上に早く、沼地を抜ける事が可能となった。夜中に疾走するのは此処で中断し、周囲が見渡しやすい場所にキャンプを張る事に決めた。


 各自が荷物から、携帯の食料を取り出し食べ始めた。

 こんな時にハルが居てくれたら……。

 単調な味を工夫して、美味しくしてくれるのだが、今は居ない。


 しかし、今夜は皆が無口を通している、。

 中心の炎を囲んで円周に位置し、質問魔のマリネも沈黙している。

 各自が想いを巡らせているんだろう、勝手に想像して納得していた。


 約一人だけ、周囲が気に成る奴が居た。

 〝龍王が幽霊が怖いって……どうするよ……〟


 くだらない事ばかり考えて、気が付いたら一番目の見張り役、アネス以外は眠っていた。明日も早くから国境を目指す、俺も寝る事にしよう。

 

 微かな虫の声を聞きながら、眠りについた……。



 ━━━。

 

 ガサ、ガサ……。


 耳元に近付いた音に、本能が危険を知らせ、咄嗟に目を覚ました! 。


 「ふん……、起きたか……」

 見ればアネスが足を上げていた。


 「アネス……みえ……うがあっ!」

 腹を踏みつけられた……。

 

 〝ば……か……言って……たら……〟

 アネスは何か言ったように見えたが……反転して地竜へと向かう。

 

 腹を押さえ横を見ると、マリネの冷たい視線が貫いた。

 「馬鹿…………」


 強烈な足蹴と冷たい視線により、一気に頭も覚めた。

 大体、あんなミニで脚を上げてる方が……。


 「朝から馬鹿な事やってないで……、朝食食べて出発するわよ」

 「あ、ああ分かってるって……」

 しかし、本当に俺に好意を持ってくれているのか?、っと疑いたくなる。ロゼなんか、何時も睨むばかりですぐ怒るし、アネスに至っては前よりも足蹴が強烈に成っている気がする。


 それでも……、やはり彼女達は守らないと。


 まだ若干、腹が痛むが我慢しながら、干し肉と粉スーブを口にした。

 全員が食べ終わり、火を確実に消しながらロゼが出発の合図を出した。


 「では、此処からは一気に国境へ向かうわ」


 合図と同時に登場し、六体の地竜は大地を蹴り、走り出す。


 沼地を抜けた後も、再び平原地帯が広がっていた。一気にとロゼは言ったが、地竜を半日も走り続けさせるのは避け、途中の池や湖付近で地竜を休ませた。


 その後も何度か地竜を休ませ、遂に国境へ辿り着いた。

 「着いたわね、アレが国境の駐屯地よ」


 川を挟んで、両岸に守備隊の駐屯地が見えた。

 先に魔法便で連絡を入れて有り、話は付いている筈だが。


 「敵対国だから油断はしないで……」


 石橋に俺達が姿を見せると対岸から、数名の兵が中央部に移動し止った。

 話は通っている様で、こちらも地竜を降り中央まで進む。


 「ローゼス皇女殿下と、お連れの方五名に相違有りませんか?」

 「ええ、間違いないわ」

 「では此方へ、我等がご案内致します」


 見方の衛兵が心配そうに見守る中、敵側の駐屯地へと足を入れた。

 もし、いきなり襲ってきたら……、間違い無く適は全滅する。あちらさんは、そうは思っていない雰囲気がアリアリと見えるが、やめて欲しい。 


 大量の焼死体何か見たくも無い。


 駐屯地出口付近で、騎士の一団が待っていた。

 「此処より鉱山都市ベルトガへ、皆様をご案内します」

 「分かったわ、宰相閣下はそこへ来られるのね?」

 「左様です、そこで夜までお待ちして頂きます」

 「了解したわ、案内をお願い」

 「では!」


 騎士が搭乗したのに合わせ、こっちも地竜へと搭乗する。

 「首都じゃないのか?」

 「私たちを首都へは、入れたく無いみたいね」


 連中は最初から戦争したい筈で、今の案内役の騎士団の他にも伏兵を忍ばせておいて、途中で待ち伏せ合流して俺達を襲撃してくる、可能性は高いが、ロゼは余裕の笑みを浮べている。


 警戒していたが、途中に待ち伏せも現れず無事に、鉱山都市ベルトガに到着した。

 宰相と会見する場所は、一番大きなこの街の総督の屋敷へと案内された。


 使用人の女性から夜まで時間もあり、湯浴みしてどうですか?と勧められた。


 「そうね、皆行きましょうか」

 「大丈夫か?、不意打ちしてこないか?」

 入浴中を襲われたら……、まあ、俺以外は大丈夫か。

 

 入浴中の女性を襲うほど、この世界の人間は恥知らずでは無いだろう。


 浴室の付近で、四人と二名の二手に分かれた。

 「待ちなさい…………」


 ザバ━━ン


 「あ━━、フロ気持ちいい━━」

 そして、非常に気に成る物体が居た。


 「ちょっと質問なんだけど……、何で、龍が風呂場に居る?」

 龍の姿へと戻り、まるでその場と一体化した様にズグロが居た。


 「この姿で無いと、行かせないと四人から……」

 「あぁ……そうですか……」

 確かに人の姿で入って来られたら、そりゃあ……。

 あっちは美女が四人、想像すると……、やばい。


 とにかく……、落ち着いて入れやしない。

 早々に退散をお願いして、独りフロを満喫した。


 控え室に先に戻っていたら、女性陣も部屋へと戻って来た。

 薄っすらと濡れた髪が、素晴らしく綺麗に感じて視線が固定された。


 「ちょっと……、私達が綺麗だからってそんな見ない!」

 ロゼに言われて、我に返る。


 「いや、本当に皆さんお綺麗で……」

 社交辞令を言ったつもりが、反応が……。


 「バカ」

 「馬鹿者」

 「馬鹿ですねぇもう」

 「馬鹿……」

 何か、本当にそう思えてくる、馬鹿の四連打……。

 しかも湯上りの火照りに、更に紅く頬を染めた、それを見ていると。

 ラケニスのこの世界の女は初心だと、言ったのも妙に納得できた。


 「お待たせ致しました、宰相閣下が到着しました。ご案内します」

 侍従長だろうか?、品の良い老紳士が迎えに来た。


 建物の最上階まで上がった先の一番奥の部屋へと案内された。

 

 コンコン


 「失礼します、ハインデリア皇女殿下と五名の方をお連れしました」

 宰相というくらいだしもっと老人かと思いきや、四十台半の男だった。


 「初めまして、宰相アウル・フォン・オーベルンです。

    以後お見知りおきを、ローゼス皇女殿下」


 交渉相手と顔を合わせた。




ありがとうございました。

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