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女難危行・拉致した皇女と六人の嫁  作者: 雛人形
第二章
26/90

戦争の危機

続編です、よろしくおねがいします。

   

  ユキヒト様! 起きて下さい━━━━!。


 俺は寝てるか、考え込んで入る時に叩き起こされる運命の様で……。

 アネスの様に蹴り倒されるのは、勘弁して欲しい。

 あれは、本当に心臓に宜しくない……。


 叩き起こした犯人は、たれぞと見れば、マリネ。

 「ユキヒト様、急いでロゼ様の部屋へ」


 用件だけを伝えると慌ただしく出て行った。

 あの感じだと又何やら起きてるが、三つ巴の愛想劇には成りそうな気配では、なかった事に不謹慎ながらほっとした。

 この上は早く姿を見せないと。


 「遅い!、ユキヒト」

 やっぱり……。


 「まあいいわ、あと一人来るまで待ちましょ」

 俺に遅いとか怒鳴りつけてた癖に……、まだ着てないのが居るじゃないか! 。

 言えない……、殺される事は無いけど、ピンポイントで焼かれるのは非常に痛くて癇に障る。やった本人は気分良いのかもしれんが、避けるに越した事は無い。 


 コンコン………… ガチャ


 「待たせた……済まない」

 「アネス! 、もう動いても……?」

 条件反射的に、お決まりの質問をぶつけたが初期の治療した時、既に動き回ってたアネスだ。彼女から見たら無粋な心配はいらん、馬鹿者! 、に違いない。


 「皆……、動けるメンツは揃ったから話を進めるわ」


 「戦争が始まるかもしれない……」


 戦争……。大編隊、大艦隊は今は無い、情報が全てを支配する。

 俺の世界でも、何処かの国同士は戦争をしているが、平和な日本では数十年前に敗戦してからは、無くなっている。一部の老人以外は戦争がどういうものか、実体験しているものは居ない。


 同じ規模は在り得ない、が、しかし戦争に巻き込まれる羽目になりそうだ。

 自国ではない、この異世界で……。


 「お父さ……皇王がまだ、執務出来ないタイミングで、難癖付けてきたわ」

 彼女はそう言って一枚の紙を机に投げ捨てた。



        御請求書


 拝啓 

 貴国におかれましては益々ご繁栄のこととお慶び申し上げます。

 さて、貴国が追い立てた魔物の群れ、我が国に甚大な被害を及ぼした事、

 御報告させて頂きます。

 つきましては、下記の通り賠償金ご請求いたします。

 お支払いの程よろしく願い申し上げます。


 敬 具


 賠償金 9,000兆ドルス


 尚、上記金額を速やかにお支払い頂けない場合

 武力行使も已む無き事、ご承了承お願いいたします。 


 

 「なに……この日本風な……請求書?、金額は分からんけど……」

 「難癖など付けて来るのは……、オスマニアか……」

 「ええ、その通りよ」

 アネスの言ったオスマニアとは、隣国の国家で此の国とは以前より、対立に近い状態であったらしい。事あるごとに、難癖を付けては戦争の機会を窺ってきていたらしい。此れまでは皇王の計らいで戦争には突入したことが無かったが、まだ執務できるに足る程に回復してはいない。


 「この期に乗じて、攻め込む心算ですか……卑怯な」

 「因みに、もし戦争に成ったら?」

 互角なら、交渉の余地は十分ある。


 「前面戦争に成ったら……、我が国に勝ち目は……無いわ」

 強い指導力と他国にも、人望厚い皇王が執務を執れない。強引に戦端を開く口実を作り、戦力差に物言わせて一気に攻め込み制圧。国民の命を盾に降伏を勧告、領土を奪い更に国土を拡げる算段か、手段は卑怯だと思うが短期で決着するには、理に適ってる。


 多分、戦争ってそういう事なのだろう。

 国連とか在れば仲裁とかも出来るんだろうけど、そんなの有る訳が無い。


 「こんな金額支払える訳ないわよ……、あの時の魔物の残党が……、仮にオスマニアに入って何かしたとしても、約百年分の国家予算なんて……犠牲者が居るなら償いは必要よ……けどこれは」


 「もし入ってたとしても、国境の警備が討伐している筈だ」

 「警備の居ない箇所からとか、幾らでも理由付けは出来ますね」

 サラトが言った通りだと思う。最初から戦争有りき、で接触してきている。理由なんて星の数ほど用意している事だろう。


 普通なら、皇王が即座に対応していた。重鎮達はそれに対しての意見を論じて来ただけで、決定は全てを主君に委ねる形だったようだ。専制体制の弱い所だ、特にそれが名君で有る程……。


 「ロゼは……如何する心算なんだ?」

 まあ、聞かなくても彼女の性格から考えたら答えは、聴くだけ野暮だが。


 「勿論、交渉しに行くわ!」

 当然そう言うだろうとは予想通り。


 「大人数で行く訳には行かない、だからあなた達にお願いしたいの、私と一緒にオスマニアの首都へ赴き、交渉の列に就いて欲しい」

 それも、聞くだけ無駄だと想うよロゼ皇女。


 「面白い! 一度、奴らと手合わせしたかった処だ」

 マテマテ、喧嘩を吹っ掛けて煽るな……やりそうで怖いぞアネス……。


 「私はロゼ様の従者です、当然お供させて貰います」

 「ユキヒト様が行くなら、私もご一緒させて頂きます」

 「主が行くと言うなら当然、同行させて頂く」

 「肝心のユキヒトは?、此処に残る?」

 俺を睨むロゼの眼は、静かな物言いに反して、拒否は許さないと言っている。

 彼女達だけで行かせる訳に行かない。

 〝大切にせい〟。ラケニスの声が頭に蘇ってくる。


 「ふぅ……、断ったら焼き殺されそうだし……行くよ」

 「うん、有難う!」

 顔はにこやかにしているが、断ったら本当にやりそうだ。


 「それでは、各自出発の用意して頂戴。済み次第発つわ」

 ロゼの言葉で、一同は退出していく。

 

 「私は、武器の修理と……、そのなんだ……服装を変えてくる」

 ニズとの戦闘で、ハルが選んだ黒一色の服はボロボロになって、今は衛兵の服を借りて着ていた。ハルが選べないから今回はアネスの趣味の服に成る筈だ。


 「用意といってもなぁ……、何したら良いのかな?」

 日本だと、仮に何か忘れても大概は何処かで補充が利く。

 一人、悩んでいたらマリネが腕を絡ませ提案をしてきた。


 「では、私と一緒に地竜を、選びに行くのは如何ですか?」

 旅行用の鞄とか、服装とか言わない所が、この異世界らしい話だ。


 「そうだなぁ、良い奴を選んでくれる?」

 「勿論です! 、任せて下さい」

 やたら機嫌が良い、遊びの旅行でもないのに……。


 二人で腕を組み歩いて行くと、ズグロも一緒に動き始め、俺達の後ろに続こうとした処。サラトに止められていた。

 「ズグロ…………」

 「いや、しかしだな……」

 片腕をサラトに掴まれて、半身で二人に振り向く。


 「心配しなくても大丈夫ですよ、ズグロちゃん」

 ちゃん付けで呼ばれて紅くなる。


 「ちゃんは、止めて頂きたい……、まあサラト殿がそう言うなら……」

 恨めしそうにな眼をして眺めるズグロ。


 「私達は、食料の用意でもしましょう」

 「心得た……」


 独り、自室に残っているロゼは、今回の件に考えを巡らせていた。

 〝何故、お父様が倒れた事を知っていたの?、知らないとしたらタイミングが良すぎる。知った上で絡んできたと、考える方が合点がいくけど……、知った理由が分からない。発表なんてする分けないし、宮殿内にスパイが居る?。そうだとして誰よ……〟


 「うがぁぁぁ! 、私の頭で考えたって分かる筈無いっ! 、止めっ」

 綺麗な金髪を両手で掻き(むし)る姿はとても見せられない。

 突然、はっとなりドアを振り向く。


 「はあ……、居る訳ないか……、ちょと私……何を気にしてるのよ?」

 誰も居ない私室で、独りで勝手に騒いで、顔を真っ赤に染めている。


 「もう……やだあ……。こんな事してらんない、爺さん共に一応言わなきゃ」

 そう言って、大臣達の待機している執務室へ向かうロゼ。



 「ユキヒト様……、この子は如何ですか?」

 マリネと二人で地竜選びをする為に、厩舎に足を運んでいたのだが、何故か中々と決らない。此れは鱗が剥げかかってる、此の子は脚が細すぎるとか、此の子は顔付が好くない。以前に、ペットを飼いたいから付き合ってと無理矢理連れ出され、散々引きずり回された挙句、大金使わされた記憶が蘇り、思わず聞いてしまった。


 「これってさ……、金額は高いの?」

 「はあ?何言ってるんですか、皇王を救った英雄様から、お金なんて取れる訳ないですよ?」

 「ははは……英雄なの?俺て……」

 英雄という言葉の響きにやたらとむず痒く感じていたら。


 「当然です…………それより、今……他の人の事を浮べてませんでしたか!」

 実に恐ろしきは女の感……忘れていた……。

 その気も無いのにやたらとそういう事だけは、突っ込みしてくる女達。況してや、マリネは……好意を抱いてくれている、もっと配慮すべきだったのを迂闊にも、失念していた。


 「うん、日本に居る時にやはり生き物選びを、こんな感じで付き合わされた」

 嘘八百を並べ立てても経験上、碌な眼にあったことが無い。


 「ユキヒト様の……、想い人……ですか?」

 世界が違っても、聞かれる事は変わらないのかと、変な処で関心する。


 「いや、全然……、代金払わされた……だけで」

 忘れ去りたい過去の自分を、思い出して心で涙する……。


 「日本の女性て……、私は、そんな事絶対しません!」

 されて堪るか!、此処だけは声には出さずに心で吼えてみた。


 マリネが身体を摺り寄せ、預けてきた……。

 「だから……、ユキヒト……」


 マリネが始めて名前を呼捨てにした。

 

 眼を瞑り顔を上げてくる、その姿が堪らなく愛しく感じた。

 厩舎の柱をマリネから押された形で、背にしている。


 マリネを包んでいる腕に力が入り、彼女は小さな声を吐いた。

 「あっ…………」


 微かに開かれた唇が更に、鼓動の波を加速させた。

 彼女の微かに開かれた唇に、そっと重ねた…………


 ちょっと! あんた達!、何時までいちゃついてんのよ━━━━!


 「きやああああああ」

 「うわああ」

 同時にとんでもない悲鳴を上げ離れる。

 地竜達まで、驚き……吼えた。


 「ったくもぅ……、地竜決ったら荷物載せて発つわよ、急ぎなさい」

 〝見せ付けられた、こっちの身になれっての、人の気も知らないで……〟


 不機嫌そうに立去るロゼを眼で追いながら。

 「はぁ……勘弁してほしい、心臓破裂するかと思った……」

 「私も……です、まだ、ドギドキしてる……」


 半分呆れ顔というか、若干怒りを感じている、俺に対しマリネはご機嫌だ。


 「でも……、ロゼ様より……多くなった」

 何が多くなった?、暫らくはその意味が俺には分からなかった。が、言われたとおりに、地竜を選び決定した際に、彼女が魅せた笑顔の中の唇が、やたら目に付いてやっと気が付いた。


 「はあ……女ってそういうの気にするのか?」

 「え?何をですか?」

 分かって聞いたのか、本当に気が付かなかったのか……それは分からない。


 「早くしないと、又ロゼ様に怒られます……」

 「ああ、そうだね、早く行こう」

 「はい」


 異世界に来てから、何度も命の危険に曝されながら、今は帰ろうと思えない。

 どういう因果でそうなったのか……、何故か七名も傍に女性が居る。

 しかも、全員が大きな意味で愛してくれているらしい。

 帰れるはずが無い……。


 

 全員が皇都の出口に集った。

 サラト達ふたりが、持ってきた食料と荷物を分担して地竜に載せた。


 積み込みしている時に、アネスを見てちょっと驚いた。

 当然、以前の服装だと思い込んでいたら、ハルの選んだ服装を一式揃えて来た。意表を付かれた服装に見惚れたいたら。

 

 「何か……この服が……問題あるの……か?」

 「いや……綺麗で……宜しいかと」

 正直な感想を述べてしまう。

 

 「ば、馬鹿者……なにを……」

 何時も上から目線のアネスだが、服装を誉めるとテレて逃げる。


 〝熱っ〟

 何か火が飛んできた?、振り向いたらマリネが脹れていた。

 そう言えば……、初めてラケニスの塔に入る前にも、同じ物を受けた……。


 〝あれも……マリネの仕業だったのか……〟

 今になって、やっとあの時の火傷の原因が判明した……。


 「用意できたわね、出発するわよ!」


 ロゼの一声で、地竜に搭乗する。

 国境まで、役二日の距離らしい、地竜が走り出す。



 この先も……、又、何事も起こらない筈が無かった。


 

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