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女難危行・拉致した皇女と六人の嫁  作者: 雛人形
第一章
21/90

静夜

ちょっと長め?よろしくおねがいします。

 「ユキヒト━━━、力かして!」


 激しく扉が開いたと思ったら、ロゼからの一括で眼が覚めた。

 寝てた訳では無いのだが、渦巻く思考に捕らわれて世界から隔絶していた。


 「なに?大声でいきなり」


 ロゼは凄い怖い顔で俺に近寄ってきた。こんな顔は見た事が無い、あっちの世界でも怒らせた事は幾度もある、けどこの形相は今まで見たどれとも違う、何故そんな顔でロゼは来た?。


 「ロゼ……顔が怖いんだけど」 


 正直な感想を何故か彼女に伝えた、それ程の顔付で怖かった。

 本当に……、何故?その顔で?。


 『お願いよ、話を聞いて、助けて……」』


 この言葉を聞いた途端、頭の中が、いや……。

 背中から脳天を衝撃の様な物が突き抜けた。


 ナンダイマノセリフハ?。

 「何処かで……、その言葉聞いた……よな」

 「そうね、私が……貴方の世界で初めて逢った日に言った言葉」


 「そうだな……、その言葉に、そしてこんな所に来たのか?」

 「うん、異世界人が如何しても捉まらなくて、止ってくれた貴方を……、無理やりこの世界に連れて来た。その切っ掛けの言葉よ」


 「そうか……、じゃ俺は家に……


  眼を覚まさんか! 、この馬鹿者━━━━!

  ビィ━━━━ン!


 大きな一括と同時に顔を矢が横切り壁に突き刺さった。


 「アリアネス!」

 「嫌な予感がするから、戻って来てみれば案の定だ。貴様、あの船上で私に言った言葉と顔は嘘かっ! 、あの時の顔は紛れも無く、信念持った言葉と顔だったぞ。何だ、いまのその顔は!」


 「そうですよユキヒトさん、あの時の想いを取り戻して下さい」

 「ハルまで……、戻ってきた?」

 「二人で相談して、最期迄ユキヒトさん達と居ようって決めたんです」


 なんて女性達だ……。


 「あはは、やっぱり俺を馬鹿者って呼ぶんだなぁ、アネスは」

 「当然だ、寝惚けた愚か者を、馬鹿者と言わずになんと呼ぶ」


 「ん━━━━、憑物が落ちるとはこういう事か」

 「なによそれ?」

 「あっちの世界で、スッキリした時に使う言葉さ」

 「へーそうなんだ……、あのね如何しても助けて欲しいの」

 「うん、分かってるよ、話を聞かせて」


 ロゼは俺に、俺が塞ぎ込んで離れていた時に起こった事を順に話してくれた。


 皇王が夢魔に運ばれた呪詛に侵されて命の危機にある、救うには呪詛の元を絶たないと駄目な事を、そしてその相手は尋常為らざる敵で、倒すには俺とロゼの共闘が必要だという。


 「手伝うよ、俺の力が要るなら」

 「ありがとう、本当に……やはり貴方で正解だった」


 「しかし、俺にそんな化物と対決する様な…………


    そんな弱気で如何する小僧……。

    わしは手が出せんが、心配するするでない! 。


 「これ……、ラケニスか?」

 「うそっ何処に?」


    戯け者共が、わしは塔から外へはでれん。

    お前達の頭に直接語りかけてる訳じゃ。


    小僧、主の力は必要な時が来たら開放される。

    ニズは強いが、本来の力が覚醒したら敵ではないわ!。

    

 「ああ、あんたが言うなら心配要らないな」


    ほぉ、何か変わったのぉ、小僧。

    ………全てを受容れよ小僧、何が起きようと、全て必要な事と知れ。


 「もう、迷う事は何も無い」


    うむ、良い返事じゃ。

    全て終えたら訪ねて来い、又、戯れに付き合わせようぞ。

  

 「そうだな、そうさせて貰うよ」


    待って居るぞ……、しっかりな小僧。


 「消えた……、な」


 「さて、全員集合だな、話は外で聞いていた。オークの守る神殿とは、やはりあそこしか無いだろうな」

 

 「ええ、ドア森林のオークの棲家、その最も奥の場所」

 「忘れられた神殿ですね」

 「ええ、間違い無くそこね」


忘れられた神殿とは、ロゼ達の話を聞く。ドア森林を開拓していた時代に先ず、村が作られそこに入植者達が集ってきて街を起こし、信仰の対象として、当時ではそれなりの物が建てられた様だ。


 「最初は、大きな森林都市を計画されていたわ」


 だが、規模が大きく成ると当然、狩場や行動範囲そのものも拡散していく、途中からオーク達の縄張りを侵し始め、小競り合いが始まったそうだ。


 「この時に……、人が大きな過ちを犯したのよ」

 「何をやらかしたんだ?

 「殲滅させたいが為に、隠密に長けた者を集め、オークの子供を皆殺しに」

 

 人は戦争の名の元、陰惨な事を平気で正当化する。 

 「人の愚かな行為って、どの世界でも変わらないのか……」


 後は聞くまでもなかった。想像は付く、怒りに狂ったオーク達が集り、大挙して街を襲い全滅させられた事くらいは容易に想像される。人はそれを、過ちを忘れたい思いから忘れられた街、そこの神殿を忘れられた神殿と名付けた?。


 最後までは語られなかったから、銘々の処は推論だが。

 そう感じられたし、真相を今更知ったところで、何が変わるものでもない。


 「今から出発して上手く事が運んだとしても、神殿に着くのは夜中よ、此れは危険過ぎるので避けたいの、最初はドア森林の中継基地へ向かうわ」


 「駐屯地から非難した場所ですか」

 「そうよマリネ、最初はそこへ、駐屯地の様子を見て後を決めましょ」


 事が決ったら後は現地へ、特に用意するものも無い。

 各人が、地竜へと乗り一路、ドア森林の中継基地へと急いだ。


 到着するまでの道すがら、考える時間がたっぷりあった。アネスとハルは、一度ゾーイへの帰途に就いていたのに、心配で再び戻って来た。プラッディも何も言わないが行動を共にしてくれている、サラトとズグロも同じだ。


 ロゼは……、彼女に対して遺恨なんてもう微塵も無い、今は彼女の力になろうと、心底感じている。そしてマリネ……、彼女の事はもうほぼ決ってる気がする。あっちに居るときは、優しくしたら返って来る、それを無意識に決め込んでいたように思う。


 擦れ違いに通りすぎた二組六人が、今こうして一緒に走っている。

 やたら不思議な光景に見えて仕方なかった。

 その中で、後方にいたマリネが、地竜を横に近付き並走してきた。

 

 「もうすぐ、ドア森林ですユキヒト様」

 

 初めて行く場所、ゾーイの森も俺が知ってる森とは随分と違っていたが。 

 「ゾーイより大きいのかな?」

 

 「はい、遥かに広くて深い森ですよ」

 

 深くて広いで浮かぶのは、富士の樹海だが、【美女と野獣】【白雪姫】の森の方が強く浮かんできた。こんなにロマンティストだったか?

 「綺麗な場所とかあるの?」

 

 「はい、でも魔物も出るからこわいですけどね、ふふふ」

 何故だろう?、マリネの笑い顔を見て、彼女なのかと感じた。


 「なぁ、マリネ……魔物出ても守るから、何時か二人だけで行かないか?」


 以前なら、顔から火が出るほど恥ずかしくて言わなかったのに。

 マリネは返事をする代わりに、地竜を更に寄せて接触寸前で止めた。


 寄せた時に、唇が動いたのが見えたが声には出てなかったと思う。

 聞こえなかったけど、何を言ったか分かった気がする。

 

 「嬉しい……」


 マリネは確かにそう言った筈だ。

 その後は、何も会話しなかったがマリネは傍から離れる事がなかった。

 一度、ロゼが此方を振り返って、目が合うと慌て戻した事から、多分……。


 「あーもぅびっくり、あの二人いつの間に?……。これは……うん、さっさと事を終らせて、二人を思いっきりと、蚊等かってやるわ!」


 ロゼが顔を前へと戻した後に、活き活きとした顔が浮かび悪寒が走った事から、彼女が何か企んだ気がしたのは、マリネも同じだったようだ。


 ドアの森林にやがて到着した。マリネから聞いたように、日本ではお目に係れない物で驚嘆する、道の直ぐ横ですら、樹齢数百年の大樹が並んでいる、奥の樹木だと……。


 時折、木々の隙間から動く巨大な樹木や、トラ?クマ?に見えるが大きさは比較に成らない。こんな場所に、よくもまあ都市を作ろうとしたもんだと、半分呆れた。


 止ってゆっくり見物したい処だが、遊びで来た訳では無い。

 今度は本当にヤバイ予感がする、誰も傷つかないのは無理なのか?。


 先頭を走るアネスの地竜が速度を落とした、間も無く到着するのだろう。

 《しかし、この女性(ひと)本当に仕切るなぁ》


 速度をおとして程なくしたら、平屋の小屋の並ぶ場所が視界に入った。

 中継基地へと到着した。


 厩舎に地竜を繋いだ後、マリネはロゼと会話して何処かへ向かっていった。


 「此処に、マリネの従兄弟が隊長として赴任しているのよー」

 ニヤニヤしながら話してくるロゼに、警戒しているとやっぱり言われた。


 「あなた達て、何時から?ああなの?」

 通用するとは思えなかったけど、すっ呆けてみる。


 「え?、ああなの?って何?」

 「はぁ?バレ無いとでも?、もう皆しってるわよ」

 「うぐっ……」


 皆がしってると?、恐るおそる振り向いてみると、確かに睨まれていた。

 中でも、ハルの笑顔が一番恐ろしく寒気が走ったのは……。


 「いい、私は良いから、絶対マリネ守って!、分かった?」

 「うん……分かってる」

 「なら宜しい、ちょっと私は隊長と話してくるから」


 ロゼの言葉通り俺もその心算だが、多分マリネはそれを許さないだろう、主君を優先する意思を、強く示してくるのは目に見えてる。


 ロゼがマリネと駐屯地の隊長を連れて戻って来た。


 「隊長も手伝いたいと言ってくれたわ」

 「私以下、元駐屯地の全員、そして此処の守備兵もです」


 前に、魔物から大挙して攻められて大勢の仲間を喪ったと聞いている。その復讐戦をしたいのだろう、事の是非は措いて、人数は多いほうが良いが目的はオークの討伐ではない。


 「私達の目的は神殿の奥に隠れてる邪龍ニズの討伐、オーク殲滅じゃないわ、大規模の戦闘は避けて陽動、撹乱に廻ってもらうわ、私達はその隙に奥へ到達する」


 無駄な殺戮は避けるか、冷静に判断してるし、仕切り好きなアネスも同意らしく、頷いている。なんだロゼも良い、指揮官じゃないか。


 「ごめんね隊長、本来なら駐屯地を取り返すべきだけど」

 駐屯地を取り返し拠点を確保した後に、オークの縄張りへと侵入するのが一番良いのだろうが、今回は残念ながら時間が少なすぎる。皇王は持ってあと一日程度の命だとズグロが指摘した。


 「駐屯地なんか後でも取り戻せます、それより陛下を優先が当然です」

 「ありがとう隊長、明日の為に今日はもうゆっくりしましょ」


 ロゼの言で皆は、好きな方へと散って行った。


 近くの小川に行くとおきな岩が在り、その上に座って夜空の鑑賞に浸っていた。


 ジャリ、ジャリ、

 誰かが、歩いて近寄ってきたのが砂利の音でわかり、顔を向けてみる。


 「ユキヒト様、ご一緒しても宜しいですか?」

 断る理由は微塵も無い、寧ろマリネなら普通に嬉しい気持ちしかない。


 「うん、横に座る?」

 「はい!」

 真横に座っているマリネを見ると、横顔が凄く綺麗に感じた。あの日あの夜に、ロゼが月下で魅せた姿とは又、別の美しさに観える。ロゼの魅せた物は、美そのものでマリネに感じている美しさは、上手く形容する言葉を捜せない。


 「この世界の事、お嫌いですか?」

 「どうして?そんな事を?」

 「貴方の居た世界には戦いとかは無いのでしょ?、この世界は……戦いに満ちている。平和な世界からこの様な殺戮の多い場所へと連れて来られて、それで……」


 彼女が言わんとしている事は、そうなのかも知れないけど、日本だって無い事はない。此処ほどに身近に死という文字が、隣り合わせで存在はしていないけど。


 「日本にだって戦いはあるよ、こっち程じゃないけど」

 「初めて聞きました、日本と言うのですね、貴方の国は」

 「あれ?言わなかった?……。あ、ハルに話しただけか」

 ハルに話しただけ、と聞いてマリネは拗ねてみせた。


 「まぁ、ハルさんには話したのに、私にはしてくれなかったんですね!」

 正直これには困った、こんな状況は経験が無い。


 「ごめん、ずっと一緒に居て沢山話すから……」

 「本当ですか?、それなら許して挙げます」

 この言葉の何が良かったのか?皆目見当が付かないが、機嫌が治ってほっとした。


 「これ言ったら怒るかも知れないけど……」

 「はい、怒ります」

 「いやいや、まだ何も言って無いよ?」

 「何を言うか……分かります。明日、来るなと言うのでしょ」

 生涯でこんなに女性の言葉で、驚いた事はない。


 「うん、明日は……

 「絶対に嫌です! 、私も行きます」

 「しかし、君が、マリネが……

 「私を守ってくれたら良いでしょ、守ってくれないんですか?」

 今夜は一体、どうなっているのか?、返事に詰まる事ばかりだ。


 「私は……、さっきずっと一緒にと言ったのは嘘なんですか?」

 「嘘なんて、言ったつもりは、ない……

 「じゃ、一緒に居させて下さい」

 完全に此の場をマリネに仕切られている。なんだか、随分と身体が熱い、頭がぼーっとなってくるのが分かる。だが、いや本当に熱いぞ?、マリネがピッタリと身体を寄せていた。


 「ちょっ、マリネ……そんなに引っ付いたら」

 「嫌ですか?これ……」

 「嫌な筈がない……」

 そう呟いて、マリネは今度は下から顔を寄せてきた……。

 激しく鼓動が脈打つ音がはっきりと聞こえる。

 ガサガサ、と、何?……。


    ちょっ、そんな近寄ったら……

    ロゼ様……押さないでくださあーい……

    だって、見えないじゃない!

    貴様ら、のぞきはだめだ……

    あら、アネスさんこそ

    貴方達は、恥を知らぬのか?


 おいおい、マジメなブラッディに、ズグロまで居やがる……。


 「貴様ら━━━ぁ!」


 「あ、いやこれは……、ハルがね」

 「ええ! 覗くぞって言ったのロゼ様では!」

 「私は見回りの途中で、その」

 「私はロゼ様の警護です!」

 「皆さんお邪魔しちゃだめでしょ」

 「うむ、異常は見当たらぬ」


 勝手な言い訳並べ立てて、蜘蛛の子散らすが如く逃げていった。


 「ふふ、もう困った方達ですね」

 こっちは顔から火を吹きそうなくらいの心境なのに、マリネは平然だ。


 「凄いなマリネ、あんな事されても動じてない」

 「そんな事……ありません……ほら」

 マリネはこっちの手を取り、自分の胸に当てた。

 

 「凄いドキドキ……してるでしょ」

 そう残して、下から顔を寄せてくる、今度は止まる事はなかった。

 今夜、初めて女性の唇に触れた。


 明日は、邪龍ニズと対峙する。

 そんな事は関係無いように想え、夢のような夜だった。



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