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女難危行・拉致した皇女と六人の嫁  作者: 雛人形
第一章
20/90

呪詛

よろしくおねがいします

「ただいま、お母様夢魔は退治したけど、お父様を苦しめている元凶は呪詛でした。でもサラトが見覚え有るしいから、此れから突き止めて是が非でも祓ってみせるわ」


 ロゼの報告を聞き皇后は一瞬安堵の顔を見せたが、呪詛が残っているのが分かると。再び悲しみの表情を浮かべる。報告したロゼ自身も、心苦しくて堪らないが立ち止まっていたら何も解決しない、一刻も早くサラトに呪詛を確定してもらわなくてはいけない。


 「サラトさん……、お願いね、何とか突き止めて頂戴」

 「はい皇后様」

 「ロゼも、頼みましたよ」

 「任せて! 、必ず治すから」


 「っとは、言ってはみたけど……はぁ……」


 寝室を二人で退出した後、自室へ戻ると、唯一の家具である椅子に腰掛けてため息を吐く。サラトが少し席を外しますと退出し、残ったマリネとプラッディが不安げなロゼを覗いて来る。


 「何の呪詛かは……」

 「私にはさっぱり、今はサラトが頼みの綱よ待つしかないわ」

 「そうなんですね……」


 「そういえば、ユキヒトは……、ズクロも居ないわね……」


 皇王の事で頭が一杯で、もう一つの厄介者を忘れてた。


 「ズグロはその、ユキヒト殿の様子を見にいかれましたよ」

 「あぁ、そうなのね、うん分かった」


 ズグロは魔女ラケニスの僕であるが、現在は彼女の元を離れユキヒトに従属している身であり、その主を気遣うのは当然の責務といえる。普段は寡黙(かもく)な存在だが、元は巨大な白龍で非常に頼りになる。


 「彼女も……大変よねえ、異世界人の主なんて」

 「でも……、五千歳の魔女にでも仕えれるのですから……」

 「それ、本人聞いてたら次元の穴開けて、殴り来るわよブラッディ」

 「あー有り得ますね、あの方なら」

 「うひっ!」


 何か、変な会話に繋がっていったが、少しの時間でも気が休まった。

 じたばたしても仕方が無い、サラトの記憶が頼りだ。


 コンコン


 「どうぞ、入って」

 

 扉を開けてサラトが戻って来た。


 「待ってたわ、何か掴めた?」

 「此処の書庫もかなり古い物を揃えていたもので、捜したのですが」

 「其れらしき物は無かった……のね」

 「はい……、見覚えが有るのは間違い無いのですが」

 「うん、ありがとう」


 手懸りに進展が無かった事は、平静に礼を言った表情とは、裏腹にロゼを追い詰めていく。サラト以外に紋章に心当たりが有る者は居ない、その唯一の期待が停滞してしまった。次の一手がロゼには思い浮かばない、焦っても得るものは何も無いのは理解していても、意に反して心は焦燥していく。


 「実は、確実に知ってる方が一人居るのですが…………」

 「それ! 、誰なの?教えて」

 「ラケニス様なのですが……、今は眠って御出でで……」

 「寝てるって、ラケニスを起こして、サラトお願い!」

 「私も何度も試したのですが、眠り……瞑想中はやはり無理でした」


 彼女が目覚める時間を聞いてはみたが、瞑想の時間は数秒から数ヶ月と、全く予測が付かないとサラトは答える。起きれば即、判明するものが、数ヶ月も幅があるのでは期待は出来ない。


 又も、希望が潰えた。


 「参ったわ……、何も繋がらない。如何すれば……」

 「期待だけさせて……、心苦しく申し訳ありません」

 

 サラトにしても、出来る限りの事はやっているのだが……。


 「あ! 、ごめんね貴女を責めたりしたりしてないから」

 

 コンコン。


 「はい、どうぞ入って頂戴」

 「ユキヒト様の様子を確認しておりました」


 ズグロが主の様子を確認して戻って来た。彼女は、ロゼが知らせを聞いた後、間も無くユキヒトの様子を見に行ってた訳で、何が起きているのかは承知していない。


 「彼は様子は如何だった?」

 「体調はともかく、何やら言葉に出来ぬ事を悩まれておられます」

 「そう……、ごめんねちょっと今は、彼を気遣う余裕が無いの」

 「構いません、御自分で解決すべき事ですから」


 責務はきっちり果たすが、人間みたいに諂わないのは見習うべきか。

 

 しかし、停滞している問題を何とか進めなければ成らない。ひょっとしたら此れも厄災の一部なのかもしれないが、異世界の者にこの世界の呪詛を聞くだけ野暮である。彼が何か重大な事を悩んでいるのは見て取れるし、この地へと招致した責任も感じている。


 しかしロゼには、父親の呪いを解く方法を見つける算段で頭がテンパっている、他に気を取られる余裕など、全く消え失せていた。サラトにしても、微かな記憶を頼りに、難解で不気味な紋章を捜してくれていたのだ、今はこっちで手一杯であった。


 「サラトも良くあんな変な紋章を覚えれるわね、微かな記憶なんでしょ」

 「いえ……、曖昧な記憶でしたので、模写(コピー)しています」

 「そう……、もう一度見せてくれる?」


 サラトが宙に両手を広げ、例の紋章を浮かび挙げる。

 

 「はぁ……、本当不気味な紋章よね、何かの骨に蛇?が巻いてる感じ」

 「おや?この紋章は……(えら)く太古の物ですが何処で?」


 ガタ━━━ン!

 椅子を弾き飛ばしロゼが立ち上がった。


 「ズグロ━━━ぉ、此れ知ってるの?」

 「はい、存じておりますが……」

 「教えて!! 、いますぐ教えてお願い」


 余りの突然のロゼの詰め寄り方に、流石のズグロも一度後ずさる。


 「これは、邪龍ニズの呪詛紋です。かなり古くからの物で強力な呪詛ですね」

 「やったあ! 、判明したわサラトぉ」

 「良かった、心苦しさが晴れました」


 唯一の手懸りはサラトの微かな記憶と、何時起きるのか分からない魔女の知識だけだったのが、突然として道が繋がった。余りの感激にズグロに飛びつき抱き締める。


 「ちょっと皇女殿下……、苦しい……御放しを」

 「あ━!、ごめんねあまりに嬉しくて遂……」


 完全に手詰まりだった物のが開けた事で、感激の余りの醜態である。


 「事態が飲み込めませぬ、ご説明頂けますか?」

 「ええ、勿論よ、聞いて」


 ユキヒトを見に行って事態を理解していないズグロに、皇王の症状が夢魔の影響だとサラトから聞き、一緒に精神世界へと入った事。その中で夢魔を見つけ討伐した迄は良かったのだけど、夢魔は呪詛を運ぶだけの役回りをしただけ、既に呪は根付いてしまっていた。


 「中で呪詛祓い等は、試したりは……されてはおりませぬか?」

 「ええ、一度確認しただけで、下手に手出しは禁物とサラトに」

 「なれば良かった。呪詛祓いした瞬間に、対象は絶命した筈です」

 「そんな怖い物だったのね……サラトで良かったわ」


 呪詛は判明した、それが強力に怖い呪詛である事も、次は対処法である。


 「で、ズグロ……、如何すれば呪詛を消してお父様を救えるか教えて」

 「呪詛を消す事は不可能なので、掛けた相手に解かせるか倒すしか」

 「成程ね、その……ニズとかいうのは何処にいるの?」


 「解せないのはそこです、当の昔に討伐され、生身を失って次元の狭間を漂っている。筈なのですが、何ゆえこの呪詛が現世に発現したのか……」


 「大昔なら、復活したとか?」

 「………まだ、二千年はその時は来ぬはず」

 「次元の狭間を、漂っていた……、まさか! サラト黒衣の奴って、次元の狭間を行き来できるの?」


 「そう……ですね、十分有り得ます。塔に入れるくらいですから……」

 「でもロゼ様、アレの目的はユキヒト様なのでは?、何故皇王様を?」

 

 マリネがロゼに言うとおり、此処まで黒衣の者は異世界人に固執していた。


 「そうね、何故?。ここにきてお父様を…………


   ご機嫌麗しゅう、皇王陛下の御加減は如何ですかな?

      御困りの様なので、ニズの居場所を教えて差し上げましょう!


 「黒衣!」

 「あんた! お父様によくも……」


  部屋の隅に黒衣の者が姿を現した。


  『邪龍ニズの居場所は、オーク達が守る神殿の祭壇の奥に居る』

 「ちょっと、待て!何であんたが……」

 

 それだけ語ると、一方的に姿を消していった。


 「くやしい、一発殴ってやりたかったのに!」

 

 仮に、一発殴ってロゼが気を晴らし爽快感を満喫していたら、此の場で大騒ぎの惨劇が巻き起こったかもしれない。言いたい事を言い捨てて、立去った御陰で果たせなかったが、本当に殴っていたかもしれない。

 

 「でも、わざわざ居場所を教えるなんて、何を企んでいるのか」

 「普通に罠でしょうけど、乗るしかありませんね」


 「相手を知るのが先ね……、ニズの情報を……」


 邪龍ニズ、竜王に一角に位置する者で、常に一定範囲へ闇の波動を放っている。範囲内へ踏み入いると魔力の低い者は、金縛り状態となる。その為、常に結界を張り続ける必要があり、強力な呪詛を使いこなすだけでなく、その爪、牙、尾のどれが掠めても呪詛に罹る、直撃すれば即死とならずとも、瀕死になる程であり、呪詛と物理の両ダメージで戦闘不能へと陥る。


 「接近戦はかなりの不利ね……、離れて魔法戦しか………

 「皇女殿下……それも適いませぬ」

 「え?魔法が利かないの?」

 「いえ、物理、魔法問わずに、闇の波動の範囲内でしか倒せません」

 「げぇ! 、そんなの有りなの?」

 「だからこそ、竜王なのです」


 最後のサラトの一言で、この理不尽な立場を強制的に納得させられた。

 

 「更に、波動は範囲内に居る間中、強化され続けるので、呪詛の祓い、波動の結界、受けたダメージの回復と物理結界、四人が専属で魔法を」


 「こっちが圧倒的に不利な訳ね、でもこっちにも龍王が…………」

 

 「龍王同士は戦わぬが太古からの掟であり、私は龍の姿を取れませぬ」


 「そんな相手に……、昔はどうやって勝てたのよ?」


 「それは……」

 

 「召喚された異世界人の力と、召喚者の共闘で邪龍ニズは倒されました」


 「異世界人と共闘…………、ユキヒトの力が要るのね」


 圧倒的な不利を覆すには、異世界人が必要不可欠であった。



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