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女難危行・拉致した皇女と六人の嫁  作者: 雛人形
第一章
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よろしくおねがいします。

 サラトの話を聞くため、見送った後にロゼの部屋へと集合した。


 皇女の部屋、女性の部屋に入るのはどうもテレくさい。照れくさいっと言うか、女性に部屋へ招かれた事はないつまり入った経験が無い、一国の皇女ともなると尚更だ。さぞや(きら)びやかな部屋を想像していたのだが、何処の会議室ですか?っと言いたくなる程に飾り気が無い。


 「此処……、ロゼの部屋?」

 「そうだけど、何かおかしい?」

 「いや、別におかしか無いけど……もっとこう…」


 縫い包みがあったり、好きなタレントの写真とか、どでかい絵画とか凝った装飾の家具とか、そういった物がどんどんっと並んでるかと想っていた。タレントの写真は無くて当然だが、にしてもだ。


 「女の子の部屋に見えないと、言いたい訳ね」

 「いや、そのシンブルで良い部屋だねと……」

 「嘘ばっかり……」

 「嘘じゃないって! 、派手な女とか嫌いで……」


 嘘だったけど正直に女ぽくない! 、と本音を吐けるほど自信がない、如何しても女性に引け目を感じている。ロゼにしても、まさか大臣達に小言を言われて、癇癪(かんしゃく)起こして叩き壊した後だから、新しいのを置いていない、なんて恥ずかしくて言えなかったのだろうが、知ってる筈が無い。


  《癇癪起こして壊したなんて恥ずかしくて言えないわよ……》

 「派手で贅沢な物は、無駄でしょ?必要ないわ」


 って、言葉をそのまま聞き流す。


 「それより、サラトの話を聞きましょ!、サラトお願い」


 彼女の話を聞く為に皆集っている、ロゼの部屋が女の子らしくないとかは直接どうでも良かったが、想像以上に殺風景なもので気が削がれていた。その少しの時間にサラトとズグロは、近寄る気配を警戒するのを怠っていた。 


 「はい! 、黒衣の者の………


   『そんな 人形の話を聞くまでも無い……』


 「おのれ、抜かった!」

 「ああ なんてこと……」


 サラトもズグロも人ではない、近寄る闇の波動を少なからず感じる事が出来る。魔女ラケニスの塔の結界すら通り抜けてきた奴だ、常に警戒する必要が合った。昨晩の陽気な雰囲気もあり、二人の警戒心を僅かに緩ませていた。


 「ユキヒトを放しなさい!」

 

 黒衣の声を聞いた時点で、後ろから羽交い絞めにされ掴まっていた。ゾーイの森で一度両腕で吊り上げられた事が遭ったが、あの時は、単純に息が出来ない苦しみだけであったのに対して、今回は違う。腕を巻かれて身体を締め付けられている以上に、芯からおぞましさが身体の自由を妨げている。


 「人形の貴様が語らずとも、私がこの者に真実を伝えてやろう」


 「待ちなさい!」


 サラトとロゼが同時に制止するが、逸早(いちはやく闇の渦へと引き込まれた。

 完全に飲み込まれる直前に聞こえた声はマリネの声だった気がする。


 「やめて!連れて行かないで!ユキヒト様!」


 そんな風に聞こえたが、おぞましい感覚が身体中を包み、水中へと引き摺り込まれる様に、ハッきりと聞き取れなかった。


 「申し訳有りません! 、もっと警戒すべきでした」

 「私だって、全く警戒してなかった……、それよりまさか連れ去って殺すつもりじゃ?」

 「それは、無いと思います…彼の目的は恐らく…」

 「恐らくなに?、話してサラト」


 「彼の目的は、ユキヒト様を取り込む事……」

 「はぁ?、そんな事出来るわけが……嘘でしょ、出来るの?」

 「ユキヒト様次第ですが……、場合によっては……在り得ます」



 全ての方向に暗闇しか感じない、目は開いている。

 音も、何も聞こえない。

 ただ、耳鳴りの様な音は頭に響いている。


 此処は一体何なんだ?、俺は何処へ連れて来られた?。

 何処かへ落ちいく感じもしないが、足が着いている感覚もない。


 『貴様に真実を見せてやろう、過去の者が如何したかを』


 それはラケニスに聞いても、言葉濁して聞けなかった事だ。正直知りたいと想ってしまう、過去に異世界から召喚されて来た者が元の世界へ帰る方法を聞いた後、一体如何したのかを。彼女は語らなかった事をこの者は見せると言っている、見せるて何なんだ?。


 『さぁ己が眼で見て来るが良い!』


 辺りの暗闇が消え森の中に立っている、いや木に触れても突き通す、実在していない。過去の映像の中に送り込まれ、その風景を見せられている。


 若い男女が歩いて来る。男のほうは二十代後半くらいか?、女性はもっと若そうだ。傍目に見ても恋人にしか見えない、二人は寄り添い合いい湖の畔まで歩いて止った。男性が何かを語り掛けているが声は聞こえない、女は言葉を聞いても意味が分らないのか一瞬、笑顔のまま首を傾げるが苦悶の表情へ変わった。


 「は?何で急に顔が?何をした……」


 男が女の胸にナイフを突き刺し抜いていた。又、何かを言葉にしているが女は既に聞こえていない………、死んだ。男は、抜いたナイフから血を自分の手に擦り着けてナイフを投げ捨てる、足下に魔法陣が顕れ光の中にその男は消えて行った。


 「刺した! 、なんで?そんな……殺す様に見えなかったのに!」


  『次を見せよう』


 又、一瞬間暗闇が現れ、そして別の空間へと移動したかに風景が変わった。

 ログハウスの部屋の中で女性が料理を運んでくる。名前は分からないが、手の込んだ料理なのは見ただけで想像が付く。愛する者の為に一生懸命作った物なのは、相手の男性の表情からも伺える。ゾーイで訪れた少女の家の様に大きくは無いが、二人とも幸せそうに会話を楽しんでいる。会話がひと段落したのか?、女性が食後の飲み物を運んできたが今度は笑っていない……。

 

 「そんな……まさか……待て」


 二人は立ったまま、それを一気に飲み干して何かを呟き抱き合った。

 数秒後、二人は床へと倒れて二度と動かなかった。


 「仲良かったじゃないか! 、何で…自殺なんか……」



 『さあ、次だ』


 「おい!待て!、止めろ!」


 「又、闇に……。今度は何見せる気だよ、くそっ」 


 今度は何だ?、女性が走って逃げてる?。

 女性は、涙を流しながら腕と肩から血を流している、その後方から男が剣を片手に追い付き、女性を押し倒す。やはり声は聞こえない、女は必死に哀願しているが男は無表情で、剣を胸へ突き立て殺した。剣を引き抜き流れ落ちる赤い血を、掌で拭う、魔法陣が現れ男は……消えた。


 「もう……止めろ……やめてくれ見たくない!」


 ━━ 『遠慮はいらん、楽しい映像を堪能したまえ』 ━━


 その後も続けざまに映像を押し付けてきた。何をされたのか?身体の自由が利かない、眼を瞑る事が出来ない、悲劇、惨劇の場を押し付けられる。聞こえて来ない筈の声が耳ではなく直接頭に飛び込んで来る、俺には何を言ってるか分かっていた。


 助けて……、愛しているのに……、何故?……、愛している、私もよ……。


 何故殺した!……、許してくれ……、俺は帰りたい!……、私は帰るのよ!……。


 相愛の相手を殺し元の世界へ帰る、男と女。

 自殺して苦悩から逃げた者も。

 何の表情を変えず淡々と相手の命を絶ち、魔法陣に消えた者もいた……。


 「これ……此れが過去に来た者が選んだ事なのか……」

 ━━ 『そうだ!、これが過去の……貴様の未来だ!』 ━━

 「俺も……誰かを殺すというのか……」


 『さあ!、ラストだ殺さぬ未来も選べるぞ』


 そう黒衣の者の声の後、周囲の風景は変わった。


 宮殿?……、これは見覚えある……ロゼの宮殿じゃないか! 。

 

 これは、此処まで見せられた物と違う、男が警吏に槍で押さえ込まれた。

 男は何か叫が、警吏の数が増えていく。

 

 冠の女性が必死に老体にしがみ付いて懇願するが、聞こうともせず男を連れ出すように命じている様だ、やがて男は川縁まで連れて来られると、無残にも切り捨てられ川へ投げ込まれてしまう。流れて行く血塗れの身体は流木に止ると腕を絡ませ、ふらふらで立ち上がった。


 どれ程、耐えて辿り着いたのか……。

 暗がりとなった夜、宮殿の外へと姿を現し、塔から落下する物を見た。

 木々を伝わりようやく見つけた落下物。


 愛し合いされた女性、冠の女性が血を流し横たわっている、這いずり寄り抱きかかえるが彼女は動かない、悲しみに泣き叫ぶが声が聞こえない。その彼女の流した血は男へと届く、魔法陣が現れ二人を囲み姿が消え…………なかった。


 男は、有ろう事か女を抱いたまま魔法陣から飛び出ていた。

 無人となった魔法陣は、発動を止め大地から消えていく。


 男は身体から涙が枯れるまで涙を流す。

 愛した女性を両腕に抱えたままで……。


 男の涙が止った、口腔も堅く閉じられる、変わったのはその後。


 ただの映像の筈が、男が発しているおぞましい気で寒気が走る。

 男の姿は、変貌していき暗黒の闇に染まった姿へと変えた。


 【黒衣の者】


 「黒衣の…………、俺達の先達者がアレになった」


 

 『その通りご覧の通りだ、(かつ)て異世界より連れて来られ、この世界の為に尽力を尽くしそれを果たした者達の……、それがこの結果だよ、幸福な結果が在ったか?悲劇しか起こらない。今見せてきたどれかが貴様を待つ未来となる』


 《これしか……こんなのあんまりだ》


 『だが、今なら間に合う悲劇を起こす前に私と来い』


 「な!」


 『くれば悲劇は起こらぬ、そして元の世界へ帰してやる』


 相愛の者を手に掛け血に触れるしか、帰る方法は無いとラケニスは言った。

 黒衣の者にはその他に道が在る?誰も殺さない、死なずに済むのか?。


   そんな方法が在るなら俺は……。


 『さあ! 我と共に………、む、チッ邪魔しよったか!』


 光の筋がユキヒトを射した。

 薄れ行く姿はやがて完全に消えた。


 『まあ良い、これで奴は……はははは』


 ………… ユキヒト!、ユキヒト様ぁ、ユキヒト殿。


 名前を呼ばれて、俺は我に返った。

 そこは、元のロゼの私室だった。


 「大丈夫か! ユキヒト!」

 「無事で良かった」


 皆、無事なのを喜んでくれた、マリネは薄っすら涙まで。


 「一体何があったのユキヒト! 」


 ロゼが質問してきたが、俺は今見てきた事を語る事は出来ない。


 

 

ありがとうございました。

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