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女難危行・拉致した皇女と六人の嫁  作者: 雛人形
第一章
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首都へ

よろしくおねがいします。

  

 元の世界へ帰る方法なんて……知らない方が希望があった。

 

 それは、此の世界で愛した女性が、それを受入れた後。

 その命を喪い、流した血に触れたとき再び魔法陣が使える。


 一見するとこれは、愛した女性が死んだ時に、血を手に入れ触れたら、と思えるけど、違うと想った。これはそんな事を意味していない、確かにそういう事も在り得るがそれは事故だ。


 ラケニスの顔はそんな事を意味していない。

 此れを語った魔女ラケニス顔は…………。


 帰りたいなら、やるが良い! 。


 【その命を喪い、流した血に触れたときに】とは。

 相愛となった女性を、己が手に掛け血を浴びよ! 、為さぬなら帰れぬ。


 ラケニスはそう言ったんだ……、愛した…愛してくれた女を殺せ?だと、そんな事誰がやるんだ?、やれる訳ないじゃないか………、過去に来た者はどうしたんだ?、これをやれたのか?。


 「質問だけど……」

 「何じゃ?言うてみい」

 

 他の異世界からきた連中は、この事実を前にどうやったんだ?


 「他の……

 「他者がこれを訊いて如何したか?、それを訊いて何とする?、それを、その数を参考にしようとでも言うのか?、勿論、知っておる。知りたいなら教えるが」


 この返答の仕方は、やはりそういう意味なんだ。


 「いや、自分で……」

 「うむ、それが正解じゃの、他者が如何したか等、関係無い」


 このひとは……五千年の間それをずっと見続けてきたのか、何人がどの選択肢を選んだのかを。笑いながらそれを見て楽しんでいた?。ち…がう、この女性(ひと)は楽しんでなんかいない、笑う事なんか出来はしなかった筈。


 此の人は最後に……、語り終わった時に一瞬、深く悲しい表情をした。

 ひよっとしたら此の人も?、五千年以上の昔に召喚を受けて、此の世界にやってきた一人ではないのか?、俺はラケニスの顔を、じっと見続けて想いを巡らせた。


 「小僧……、そんな顔で見るでない……己は如何するかのみ考えよ!」

 「そう…………するよ」


 ラケニスの傍を離れ、皆の近くへ戻った時、表情に余程悲壮感が満ちていたらしい。ハルとマリネが即座に駆け寄り声を掛けてきた。


 「ユキヒトさん……顔が真っ青ですっ! 大丈夫ですか?」

 「ユキヒト様! ユキヒト様ぁ?」


 予想以上に……、自分自身でも此処まで動揺が激しいとは思わなかった。二人が俺の身体を揺らしているのは実感してるし、眼にも映っているのだが、神経が切れた様に反応してくれない…。アネスとプラッディも心配で声を掛けに来てくれている、ロゼはラケニスに食ってかかったようだし。


 「ユキヒト、一体何を聞いたんだ?」

 「ユキヒト殿?…………」


 「ちょっと、ラケニス! 、貴女……一体何をこの人に、言ったの?」


 ロゼがラケニスに怒ってる……、違う……彼女のせいじゃ無いんだ。

 咽まで出てるのに声が出ない。


 「小僧が元の世界へ帰れる方法に決まっておろう」

 「だって……、こんなに動揺して普通じゃないわ!、帰還の方法て何なの?」

 

 「知りたいか小娘、如何しても知りたいなら教えてやるが…」

 「教えて! 、私には召喚した責任があるもの」


 「知れば小娘、お主が事を成す事になるが、その覚悟出来ような?」

 「いいわ、教え…………

 「駄目だ!訊くなロゼ!」


 そんな事やらせれるか! 、知れば殺すことに成る。彼女なら……いや達だ、厄災を払った後に必ず成そうとする! 、それはマリネが実証してみせた。死ぬことを覚悟じゃない死が確定する、そんな心境を彼女達にさせれるものか……。


 たった今決めた! 、此処で生きよう、ならば誰も殺さずに済む! 。


 「ほぅお、小僧、己が道決めた様じゃのぉ」

 「ああ、決めた! 、俺は此処で生きるよ!」

 

 「え!、本当にそれでい…………


     『言葉を違えたな!異界の者よ』 


 声が……、声が響きそして、漆黒の矢が俺の身体を、貫き通……した…。

 筈が、何かが俺の前面へと瞬間に移動し防いだ。


 白い鱗の羽?。


 「闇に従属せし者よ、我が今一人の主には触れさせはせぬ! 」


 誰だ……?、白い鱗の羽?


 『ぬ! 白き龍め……余計なまねを……!』

  『貴様も何れ滅してやろう』


 「ふん!性懲りも無く、まだ次元の隙間に隠れておったか」

 「はい、ラケニス様、しかし今度は完全に去ったようです」


 黒衣の者は、次元の隙間に潜んで俺を監視してたのか……、でもこれ誰?


「此の()はズクロじゃ、これより小僧達に同行する」


 「ええ!あのでっかい奴がこの()?」

 「でもロゼ様、白髪に頭の……黒です、ズグロちゃんですね」


 確かにハルが指摘したとおり、髪の上部は黒髪だな、間違い無さそう。

 

 「ユキヒト様、我が二人目の主として同行させて頂きます」

 「ああ、うん、よろしく……」


 何の不服も無い、無いんだけど……、龍まで女性とは。

 

 「しかし凄いなユキヒト、龍まで同行させるとはな」

 「でも女性ばかり!」


 「厄災に対じしてくれるのに、マリネ……は、何か問題?」

 「いいえ!!、何もありません!」


 マリネの言葉の真意とは違うかもしれないけど。あっちでは色々あったし、女性から避けた生き方を望んでいた、異世界に着てからはその女性に囲まれ、ずっと助けられて事ばかりだ、マリネを見てからは、帰るのは彼女達に酬いてからと考えが変わったけど。


 こういう結果になると想わなかったな、此方に飛ばされてから死に掛けて、アネスに命を救われた。その後希望を知り、帰る方法を求めて海を渡って此処まできた。それが……魔女に逢ったら留まる事を、いやこの世界で生きる事を決める事になるなんて、帰る事しか頭に無かった最初とは、随分と離れた決断をしたものだと、我ながら驚いた。


 「ロゼ様、そろそろ……」

 「そうね!ユキヒトも残る事を決めてくれたし、感謝するわ」


 魔女ラケニスの塔、この場所で聞く事もやる事も終えて、去る時間が来た。

 

 三人で始めた事が、気が付けば七人と頭数が増え内六人が女性ときた、穿った眼で見て意見するなら、この女性(ひと)達も、俺を利用している事になる。でもそれは自己の保身でも、利益からでも無いことを理解しているから悪い気が今はしない、寧ろ清々しい。


 本音を語れば美人揃いで気分が良い。これが日本だったら、この錚々(そうそう)たる美女軍団を、連れて歩くだけで注目度N01なのは間違いない。今まで俺を利用し去っていった女達に、見せ付けてやりたい。しかしだ、それは男のエゴ以外の何物でも無い、彼女達は見世物ではない、今では大事な仲間達なのだ。


 「うむ、では元の場所へ……

 「お待ち下さい、私もこの方々に興味が沸きました、同行をお許し願います」


 はあぁ、なんだ……サラトまで?一緒に来るって?。


 「あはは、良い許す。好きなだけ見て来い、小僧! 人気者だの!」

 

 サラトはラケニスのコピーで能力もそれに準じてるんだろうし、ズグロは白龍の化身………、もし怒らせて二人で共謀して大暴れとかされたら、都市なんて簡単に壊滅するぞ。何か核爆弾でも渡された気分なんだが…。


 「では、元の場所へと帰そう!さらばじゃ」


 三魔女の一人ラケニスが、大きく腕を振り上げた。

 眩い光に包まれて俺達八人は、その場から消え元の湖畔へと戻って来た。


 戻ってきて暫らく俺は、彼女達が歓談している姿を眺めていた。厄災が何かまだ分らない、あの黒衣の者が少なからず関係している事だけは間違いないけど。全ての事に 片が付き終わりを迎えたら、それぞれが元の場所へと帰って行く姿が浮かんできた。


 其の時が来たら、俺はどうなるんだろ?。

 だが、今はそれを考える事をやめておこう。


 「ねぇユキヒト首都へ一緒に来て欲しい」


 何時の間にか、女子会は終わっていたらしい、ロゼから首都へと誘われた。そう言えば彼女は俺を移動中に落し、それを捜索に出て来たわけだが、宮殿内の御歴々を前にして、見付けるまでは全ての皇女の権利も権限も資産も放棄し、街へも戻らないと大見得きってたそうな。


 そういう経緯もあり俺が留まる事を決めた以上、ロゼには首都に向かうのが次の目的地に成るわけだ。俺には拒む理由はもう何も無い、他の女性達の意見で行動が決定する。意外だがアネスは首都を訪れた事がなくて、快諾した。


 「首都か、一度見てみたいと思ってた処だ」

 「私も、反論ないですよ」


 ハルも同意した。彼女の場合、街中の店を散策している姿が眼に浮かぶ、従者二人のブラッディとマリネはロゼのお供だし、当たり前に賛成している。最後に仲間となったサラトとズグロは、人間の街に興味津々だ、反対ゼロで全員が首都へ行く事が決定した。


 首都へと行く手段だが、この街で移動手段を手に入れるのは、片付けと復興で移動手段の提供など無理だと分る、乗ってきた渡航船は船主の希望で帰していた。歩いて首都へと向かうには、どれだけの日にちが掛かることやら、途中で襲われる可能性も多いが、このメンツに襲ってくる山賊や魔物の方が可哀相である、襲われても問題に成りそうに無いが、ロゼが歩きは嫌だともろくも却下。


 ロゼが何か考え込んだが、不気味に笑いを浮かべ自らの提案を出してきた。


 「ズクロに運んで貰いましょう!」


 「ちょっ正気ですかぁロゼ様ー、ズグロちゃんが首都なんかに顕れたら……」


 まあ大騒ぎで決まりだろ、巨大な龍が首都の上空に現れたら、それこそ厄災と思い兼ねない。本当、とんでもない皇女様だ、肝心のズクロは如何なんだ?。


 「構いませんよ、でも落ちないで下さいね!」


 なんか乗り気だし……。


 「先に皇王、皇后には魔法便で知らせるしー、街からもっと奥へ進んだ位置で、ズグロには龍に戻ってもらいましょ!」


 一度、こうと決めたら周りを巻き込み、突き進む。

 従者のマリネ達の気苦労が身に沁みて分る。


 ロゼが皇后フォーネリアへと一通の魔法便を送った。

 内容に驚愕するが、娘の事だ不思議は無いと笑みを浮かべ、皇王へ伝える。


 「なんとお!! 、巨大な龍に七名を連れて乗って戻るとな!」


 母親と違い、笑う余裕は無かった。


 

 それから一時間後。

 巨大な白龍が首都へ向かい森から飛び立った。

  


  

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