真相
帰還方法がわかる話です、よろしくおねがいします
洞窟の通路に入ってから、今の状態を考える余裕がでた。
今更感もあるけどこの六人、俺以外は女だという事実にだ……。賢者は確かに男だったが、魔女が男でした、何て事は無いしそのコピーのサラトも当然女だ。元の世界日本では、女に散々な目に遭わされてきた身としては、この状況は単純に考えると非常に恐ろしい現実なわけだが、事の発端となったロゼにしても悪意からではない。
痛い思いをしてきた時間が長い事で、完全に頭から喪失させるのは難しいが、思い切って視点変えて状況を分析して見直すと、これは物凄い展開なのではないか?。
妖艶なエルフのアネス、何時でも明るいハル、純粋な女騎士プラッディ、そして俺を此の世界に連れて来たロゼ、しかも彼女は一国の皇女であり一般人がおいそれと、連れ立って行動する等は本来適わぬ事で、それがこうして一緒に居る。肝心なのは俺がこの世界に留まると決めているのを、ロゼは知らないのに元の世界へ帰る援助に廻っている。
召喚したものを首都へ招致しないと、皇女としての全ては戻らないのでは?。
俺を帰したら如何する心算なのか…………。
そしてマリネ、彼女の事には冷静になれない、いやなんとも形容しがたい気持ちだ。本来は主に向けての献身的な行動を俺にも向けている、それが好意からなのか?この世界への献身なのか、窺い知れていない。
この洞窟の通路を俺を挟んで前後を一緒に歩いている女性達は、少なくても元の世界日本で此れまで遭遇してきた、どんな女とも違う態度と行動を俺に見せているという事だ。
そんな事を頭の中で思考していると、アネスが終点が近い事を告げている。氷一辺倒の洞窟も、ズグロちゃん捕まえて終了となりそうだ。
「うむ、近いみたいだ反応が大きくなった」
「あそこじゃ……、出口みたいなのが」
ハルが通路の先の横道に大きな開口部を見つけた。何時も真っ先に何か見つけるのはハルだ、これも才能の一つなのかと関心する。正面は行き止まりな以上そっち行くしかない。
先頭切って開口部に突入したのは、好奇心の塊ロゼだった。この女見てると、皇女とか姫様といった類のイメージが崩れ去ってしまう、勿体無い……。
「ねえ………、まさか……アレじゃないよね?はははは」
ロゼに続きアネスも入り、皆続いた。
「うそ……こいつ?」
「もしかして、アレに食べられちゃった?」
「喰われてお腹の中から反応してるのか?」
「なあ!、あれがズグロちゃん?、馬鹿な……」
「………………」
最後にマリネの言葉で魔女ラケニスのペットと確定する。
「白い身体に……、頭の上黒い……ズグロちゃんでは?」
飼い主がデタラメだとペットまでそうらしい。
ズグロちゃんの正体は、真っ白の身体に頭上が黒い【白龍】とは。
「頭のてっ辺が黒いから、頭黒……か」
「こいつ、ちゃん、て身体してないでしょ!」
ズグロちゃんは現在睡眠中だが、でかい!。なんだこの大きさは、ゾーイで見た赤龍が可愛く見えるくらい巨大な身体をしている。これをどうやって捕まえるのか?、こんなのあの部屋に入ってたのか?。
「このまま転移魔法掛けて運べません?」
「うーーん、意味不明に魔法が強化されてるけど……この大きさは……」
「ですね、それに家に帰ってと、言っても……むりですよね……」
転移魔法で何処に運ぶんだ?、家に帰ってと伝えて帰るなら、とっくに帰ってるってマリネ。と無言で突っ込みしてるが、これは本格的に困った、刺激して大暴れしだしたら、この洞窟自体が崩落してしまいそうだし。そしてラケニスのペットだぞ、大暴れしたとこに攻撃でもして、怪我させてラケニスの不興を買い、大暴れされるとそっちの方が遥かに、最悪の結果に成りそうなヤバイ気がする。
「ユキヒト、前みたいに、お前が手懐けろ、一応……人のペットだし」
「魔女ラケニスて……あの婆さん、人じゃないだろ」
「屁理屈、捏ねてる場合か馬鹿者!」
「手懐けたって何を?」
「ユキヒトは、賢者が呼び出した隻眼の赤龍と、あの黒衣の者が結界内で、襲わせた巨大大蛇をどちらも手懐けて見せた、私とハルが証人だ」
「隻眼の赤龍て……あの凶暴で討伐時にも、かなり犠牲出して抑えた奴?」
「ユキヒトさん! 、凄い……」
「転送も駄目、討伐は問題外、となれば手懐けるしかないだろ?」
「簡単に言ってくれるなぁ…………もぅ」
確かに……、仮に転送出来たとしても場所がない、討伐?可否は別にしてそっちのが色々とヤバイし、残るは……、手懐ける?、このデカ物をか?、俺が?。
婆さんのペットなんだし……、喰い付きゃしないだろ……。
ちょっと近付いて……、後ろは何してる?
「ユキヒトさん……大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だろ?……たぶん」
グロオ━━━
「わあ起きたぞ!」
《我が寝床に侵入したのはだれぞ……! 人か…》
「おいこいつ、しゃべっ………
白龍がしゃべったと女達に伝えようと、がばっと後ろを振り向いて見てみれば、あら不思議、入り口の後ろへと逃げ込んでいた。単純に身体能力や、戦い熟れしてるのは彼女達の筈なのに…………、隠れたまま?……、あれ?こいつの声聞こえてない……?
白き龍は寝姿から立ち上がると、俺の方へと巨大な顔を近づけてくる、その気に成ったら抵抗すら虚しくその口腔へと飲み込まれるんだろうけど━━━、不思議と……この龍も怖くない。こんなに度胸有るわけ無いんだが、赤い奴といい大蛇といい、何故怖くないんだ?
《我が声が聞こえるとは、我が主、以外に珍しいことよ》
「その、ラケニスからお前を連れて来いと頼まれたけど…」
五千歳の婆ばあのくせに、見た目はへたすりゃアネスより妖艶で、しかもこんなのペットにしてるって、常識なんて言葉持ってないんじゃないか?。
《我が主の名を呼捨て……そうか……異界の民だな》
「お前連れて行かないと、帰る方法が教えて貰えないんだよ」
《…………》
「頼むから、一緒に戻ってくれよ」
「おい……何か龍と会話してないか?」
「そう……見えますねぇ」
後ろでゴソゴソ何かしてるが、こっちはそれどろでない、怒らせ火炎でも吐かれたら、丸焦げにされて御仕舞だぞ…………あーそれで、隠れてるわけか! 。
《時が来た……ということか、よかろう主の下へ戻ろう》
「おお、ありがとう、助かったぁ」
説得して帰るなら苦労しないと思ったのに、随分と聞き分けの良い龍だこと。あっさりと一緒に戻ってくれるとは、しかしどうやって連れて帰るか?、背中に乗せて飛んでくれれば助かるんだが…、上手く行ったと先に話だけでもしてくるか。
「戻ってきたぞ」
「良く食べられませんでしたねぇ」
「うん、一緒にラケニスの家に帰ってくれると言ってた」
「ちょっと、彼方…あいつと会話したのぉ?」
「何故か、話せてしまった……」
「彼方も……、常識の範囲外だわ」
ロゼの常識の範囲外に、断固として反抗したい気持ちが強いが、龍と会話したなんて事を話したら、普通は一笑に付されるのが当たり前だし、此処は引いておこう、そんな事より問題があるしそれのが重大かも。
「でも、これどやって連れ帰ります?」
俺が言う前にマリネが問題を切り出してくれた。
「仮に転送できてもね、こんなの街横に現れたら……それでなくても、今は」
「背中に乗せてくれても、洞窟では…ねえ…」
まてよ、よく考えたらこの白龍この巨体でどうやってこの洞窟に来たんだ?。天井は分厚い岩だし洞窟内壁も同じ、俺達が通ってきた通路なんて通れる訳無いぞ、いったい何処から?、この空洞内部に入ってきたんだ?。
《人の子よ、何も問題ない……すぐに現れる》
白龍が俺に語りかけてきた、どうやら何か手があるのか?。
「こいつがね、問題ないと、言ってる」
「え」
突然目の前に、次元の扉が開かれサラトが現れた。
「無事に、終わったようですね、さあ此方へ」
終わった?、逃げたズグロちゃんを捜して連れて帰るんじゃ?、俺だけじゃなく全員が呆気にとられている、これは……又もやあの婆さんに戯れとやらをやられたのかぁ?。
扉を抜けてラケニスの部屋に戻ると、笑顔全開のラケニスが待ってた。
「無事にズクロを連れてきたのぉ」
あのデケー奴をどうやって部屋につれて入れるんだと、扉の方へ向いてみたら巨大だったあれが、人間の背丈と同じ程度まで縮んで、セラトの横に並んでいる、伸縮自在?。
そんなことより約束通り連れて来たんだから、約束を果たして貰わねば。
「約束は果たした筈よね、帰す方法教えて頂戴!」
俺より先に何故問い詰める?ロゼ!、この女絶対に自分の仕事忘れてる。だが、そんなに親身になられてしまうと、参ったなぁなんか罪悪感が凄い襲ってくる。
「約束は守るが、その前に知りたくないのか?色々とな」
へー他にも答えてくれるみたいだけど、また…………あるんじゃないか?
「そりゃあ…ねぇ…、けど又何か要求してくるんでしょ」
「あははは、随分と疑われたのぉ、安心せぃ何も要求せん!」
「では、私の魔法が、突然強力になったのは何故かしら?」
なんか俺より存在が前へと出てる気がして成らないんだが…、なあ。
「うむ、勿論知っておる……が、その前に」
その前に………?、オイオイ、何も取らないんじゃ?
「許可無く、私の部屋に入るとはのぉ………、出て来い 痴れ者が!」
『さすがは、三魔女ラケニス様………、バレましたか』
「愚か者めが、もろバレじゃ!」
「黒衣の者!」
どうしてこいつが入れる?、魔法も物理も、それに塔に触れたら弾かれるのに…。って事は、次元の扉を開けた時に姿を消して入ってきたのか?。
「ま! そこの異世界人が約束を違えぬか見に来たまでのこと」
「今から教えるところじゃ……、それより許可無い滞在は許さぬ、去れ!」
「ちと、こちらが分が悪すぎです…か…では又」
消えた…出て行ったのか、ラケニスが何もしない。これは一緒に紛れ込んできたんじゃない、自分で次元を越えて外へ出たという事だ。
「一戦交えんで済んだわ、こっちも無傷では済まんからのぉ」
「五千歳のお婆……、貴女でも?」
おーいロゼそこミスると怖いぞ!、頼むぞ全く。
「此処へ無断で入れる唯一の奴らじゃ、サラトとズグロが揃っとるし、そして異界の民も居ては流石に分が悪くて引きよったわ」
つまりは居なかったらヤバカッタ?、五千歳の魔女と互角以上の力が在る…、船上で俺が出て行く宣言しなかったら……。彼女達を巻き込んで最悪の惨状になってたかも。
「さて、質問の答えじゃが、それは小僧に関係しとる」
「え…俺が」
「ロゼ皇女、御主にとって小僧は、増幅装置じゃ」
「彼が……増幅装置?って……」
「小僧が一定の範囲に居る限り、小僧を通して集約された無限の精霊が、小娘に供給されるという仕組みじゃ、しかも瞬時にのぉ。要するに、小娘がイメージ即、魔法発動という事じゃ」
「港で魔物を全滅出来たのは、彼が居たから……」
「ロゼ様…………」
はあ……?おれは魔法使うためのアンプ?みたいなわけか?。
「しかしじゃ、小僧は完全にその力を覚醒しとらん、覚醒しとったらさっきの黒い奴等が、複数来たところで返り討ちじゃ。」
「山犬の顔やオークの胸を潰したのは……」
「小僧の防御本能が、瞬間的に発動して波動を出したんじゃな」
「これで、疑問が晴れたやはりユキヒトの力だったな」
「龍や大蛇が大人しくなったのは?」
「逸れこそが、異世界から来た救主の証じゃ、お主に連れ添う。まあ極めて闇に従属しとる奴は別だかの」
アネスが行ったとおりだ。この世界に来てからの、身の回りで起きた全ての事象が判明した。そりゃあこんな力が異世界から来たものに付与されるなら、厄災とやらが何であっても対処のしようがある訳だ。
最後に知りたい肝心の帰り方は…。
「さて肝心の約束だ、帰還のホ方法だが……、他者には語れぬ小僧、来い」
秘密な訳か、言われたとおり行くしかないな。
「小僧、耳をかせ、…」
うはぁ、五千歳の婆さんのくせに、すげー良い香りが!
「…………………………っと、これが帰還出来る方法じゃ」
「!!」
そんな!帰る方法がそれ……なんて。
此の世界で愛した女性が、それを受け入れた後に……、
その命を喪い、流れた血に触れた時に再び魔法陣が発動する。
ありがとうございました