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女難危行・拉致した皇女と六人の嫁  作者: 雛人形
第一章
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魔女の塔へ

よろしくおねがいします

 アリアネス達が乗った渡航船がネーブルに到着した。

 魔物は既に、全滅していたが、想像を上回る惨劇の痕が痛々しい。

 

 建物の八割は何等かの損害を受け、半数以上が半壊かそれ以上の状態。人的被害はそれを把握する側の人間も居ないか、被害を受けている、至る所に残る血痕や身体の一部が未だ散乱している処からも分かる。惨状を何度か体験しているアリアネスは、まだ耐える事が出来たが、ハルはまともに眼を開けて見渡すことが出来なかった。


 船着場から湖を囲う街へと移動する間、ユキヒト達の安否をずっと気に病んでいたハルは、その姿を確認すると、駆け寄り抱きついた。


 「良かったあー、無事ですね」

 「ああ、うん、なんとかね」

 「被害が物凄くて、被害者も……」


 会話の間ずっと至近距離から離れないハル、ゾーイの周辺にも魔物は居たが、あそこには守備隊が常駐、アリアネス達の様に、魔物を狩るのを生業にしている者も少なくない。魔物が大挙して襲ってくる前に、発見され討伐される。


 此処まで激しい戦闘が街中で起こる等、廻りで有り得なかった。暫らく抱き着いていたハルが、身体を離した、ロゼが街の責任者と話を終えて戻って来た。


 「被害が酷過ぎて、この街単独で復興は無理みたい」

 「首都に……、連絡しないといけませんね」

 

 皇女を外れている今、直接に報告を避けたい、皇后に魔法便を送ると言う。

 

 「魔法便て?」

 「それは、魔力で宛名と内容を記し、宛名の者以外には読めません」

 

 海路、陸路のどっちで送って、何日掛かるか聞くと。


 「即日、というか瞬間で届きます、相手に分る時間指定もできるんですよ」

 「へーそりゃいいな、俺の世界でも、魔法と違うのが在るよ」

 「今度、教えて下さいね!」


 そういい残してロゼの所へ歩くマリネ、場に似合わず、何故か楽しいそう。

 

 「お母様から返事が来たわ……」


 返事は、犠牲者には哀悼の意を表すると、その上でロゼ達の無事に安心した事。そして必要な物資と人材を直ぐに手配してネーブルへと派遣する。


 「これ以上私達に出来る事はないわ」

 「ユキヒトの目的地だな」


 アリアネスの言葉に、全員が緊張した。魔女に逢うという事は、ユキヒトが此の世界から離れる可能性が高い事を意味する。留まる事は、恐らくハルも感付いている為三人以外は知らない。


 「その前にやる事が」


 ロゼはユキヒトの前に立ち、両膝を着き頭を下げた。


 「姫様!」

 「皇女…様!」


 従者二人に、禁句とさせた呼称を二人が動じに破る。


 「貴方が何を選ぶも自由、……全てを謝罪します」

 「お前…………」


 皇女の立場の者が、両膝着いて頭を下げた……、此れが如何いう事か。

 従者二人の驚愕ぶりを見れば、自ずと知れるという物。

 これで許さぬとでも口にすれば……。


 《袋叩きに、されるなっ》


 「もう十分、立ってくれる?」

 「受入れてくれて、ありがとう」


 立ち上がったロゼは大きく背伸びして腕を伸ばし。


 「あースッキリ! 、魔女の婆さんに逢いに行きましょ!」


 憑き物が落ちたのか、三魔女に婆さん呼ばわり、全盛のロゼに戻った。

 

 ラケニスは湖の塔にいる、何の運命に縛られ出会いを果たしたのか?、六名は湖へと向かう。途中の被害状況が (いや)が上にも飛び込んでくる、それはハルでなくても、眼を伏せたくなる物だった。建物を抜け湖の畔に立つと、確かに塔がみえる。


 「あそこか、どうやって行く?、船?、魔法?」


 ユキヒトの質問に答えたのは、知らない声。


 「どっちを使っても入れませんよ、皆さんお待ちしてました」


 振り向くと女性がお辞儀をした。

 誰一人として、彼女が自分達の極、間近に接近して来た事に気付けない程の、気配の消し方に普通の女性では無い事が分る。突然その場所に出現したのかと、疑ったくらいに見事である。


 「ラケニス様の使い、サラトと申しますお見知りおきを」


 サラトと名乗った女性は、銀髪でありその髪は地上に達する程に長く、ロゼの金髪の輝きとは別の美しい輝きを周囲に放っている。エルフに近い容姿をしているが、耳も普通でエルフでとは何処か違う、白い肌に真っ白のローブ、ユキヒトには彼女が昔話の雪女に見え暫し見惚れていた。


 《すげー真っ白、雪女みたいで、き………っ痛っ》


 何かが、ユキヒトに噛み付いた?、……自分の身の回りを見渡すが。

 《あれ?何もいない?》


 それを見ていたサラトにクスクスと笑われ、赤面して頭を搔く。

 《っ熱っ》


 「では参りましょうか、長居すると異世界人殿の火傷が増えそうです」

 「え?」

 

  《ばれてる……》


 一人マリネだけ呟く。


 「待って、魔法も船も使え無いって、どうやって行くの?」


 皆の、至極当然に持った疑問を、代表するかにロゼが質問を投げる。

 一旦は後ろ向きになったサラトは振り向き、疑問に答える。


 塔の周囲には二重に結界が張られていて、物理と魔法の両方の干渉を防いでいる、仮に塔に辿り着いても、魔女の許可を得ていない者は、塔に触れた途端に弾かれる、弾かれた結果は想像にお任せします、だそう。結界の外と内部の空間を繋ぐ、次元の扉を開き内部へと入ると説明された。


 「次元を繋ぐ?そんなのどうやって?」

 「貴女も使ったじゃありませんか、皇女殿下」


 召喚の儀の事を指している、詳しく聞きたいロゼだが目的はそれではない、ラケニスに逢った時に序でに聞けば良いと、聞くのを今は控えることにした。


 サラトは畔に立つとさっと腕を振っただけ、確かに何も唱えていない。

 腕をふった直後に突如、輝く亀裂が生まれた。


 「さあ、参りましょ」


 サラトはその亀裂へと吸い込まれていった、此れに近い経験をしているのは二人だけ、皆が体験したことが無い事が起きている。このままじっとしていても、埒が明かない、一斉に飛び込んだ。


「皆さんようこそ、こちらが、三魔女のラケニス様です」


 「え?嘘っ、双子?」

 「違うわ馬鹿者! 、サラトは私のコピーだ」


 ラケニスと紹介された魔女は、サラトのオリジナルだと双子を否定してきた。

 良く見ると、青い眼のサラトに、オリジナルは紅い眼だ。


 「長く生きてると、偶に戯れをやりたくなる」


 「違うのは……眼だけだけじゃなさそ…」

 

 ギロリと睨まれ、後ずさるユキヒト! 。

 しかし、此処は引けないと前へと踏み出し、本来の目的を聞く。


 「汐月雪人です、貴女が元のせか……

 「帰す方法なら知っとるぞ、小僧」


 あっさりと言われた、最期迄聞かずに、核心を知ってると答えた。


 「何故質問が分ったのか?じゃろ?」

 「ははは……そうです」


 なんとも全て先読みされる、そして妖艶な眼つきは取り込まれそうだ。知ってるのは、一人だけでなく此の場所に居る全員の事全てだと付け加えられた。ロゼは特に焦って見えた、余程後ろめたい事が多いのだろう。


 「元の世界へ帰るのは容易いぞ小僧」


 小僧を連発されて気分が悪いが、ここで反抗して気を悪くされるとマズイ。

 ぐっと堪えて、方法を聞くため耳を傾けた。


 「死ねば良い!」

 「なっ!!」


 これには全員が、驚く。確かに死ねば、魂が故郷へと帰る……かもしれないが! 、生きて生還しないとそんなのは意味無いではないか?。皆には正直に伝えていないが、留まる事を決めたのも魔女が帰る方法ほ知っている。生還できる希望があったればこそ決断できたのだ、いくは良いが帰りは怖いとはよく言ったものだ。ロゼはその責任を感じ、マリネとハルは身を震わせた、アリアネスとラッディは表情こそ変えていないが、その両手に力が入る。


 だが、死ぬしか帰る手立てが無いのだとしたら、ユキヒトは此処に残るしか無い。必然的に厄災に立ち向かう事に、刹那、安堵感が沸いた事は事実であった。マリネとハルそして本人だけは違う、特にユキヒトは希望から絶望へと叩き落された。


 再度、確認する為にユキヒトは口を開き…………。


 「大嘘じゃ!、許せっ! あははは」


 「おい!!」


 流石に全員が怒った、冗談にも程がある。

 

 「長く生きて居ると、戯れをしたくなる」

 「冗談が過ぎます!」

 

 意外な者が口火を切って、一斉にマリネを振り向けた。

 他の者が抗議する前にマリネが叫んだからだ、一番憤慨していたのは彼女。


 「皆の反応、楽しませて貰ったわ」

 「まったく達の悪い……」


 「其処の小娘二人は、特に面白かったのお、はははは」


 本人以外は意味が分らない! 、っといった顔をしている。

 たがこれで、話は振り出しに戻った。


 「では再度聞くわ!、 生きて帰る方法は?」


 膝を組み、肘掛に片腕着いてラケニスは答える。


 「生きて元の世界に帰る方法は━━━━! 、在る」

 「本当に!」


 「うむ、ちゃんと在る」


 生きて帰れる、その方法が存在する本人は当然ながら全員安堵した。

 ロゼは彼に居に反した召喚をした事を、ブラッディは主に更なる重みを背負わせないで済んだ事を、アリアネスは……、彼女がユキヒトに逢わねば今は無かった。そしてマリネとハル、二人は特別に最悪の事態を回避出来た事に安堵していた。


 「安心した処に悪いが……」

 「まさか……知らないとでも言うんじゃ……」


 方法が在るが、それを知らない或いは使え無い。

 それだと、又もや事情が変わってしまう。


 「ふっ、安心せい、ちゃんと知っておる」

 「知ってるなら……、悪いとは何が?」


 

 「只では教えられんのぉ! 、代償を払って貰う」


 やっとの帰還方法が分ると思ったら、代償を要求された。

 一難さって、又一難の発生である。



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